中東の独裁国家での民衆の抵抗が注目され勇気を讃えられる一方で、
先進諸国でのデモや抗議活動はその行儀の悪さで嫌厭され、
ある種の嘲笑を受ける場合すらある。
日本の場合は更に深刻で、欧米より相対的に失業率が低いため
デモや抗議活動の「数の力」は極度に弱く、
貧困層が少数派として孤立する可能性が非常に高い。
もともと日本社会の多数派が社会的弱者にかなり冷淡であるのは
大阪大の大竹文雄教授が何度も指摘されている通りである。
驚くべきことに日本で「政府が弱者を救うべき」とする者の割合は
中国にすら劣っていて先進国中で最低水準である。
問題はそれだけではない。
下掲書によると、日本の所得税の負担割合は
年収1000万円以上の層の納税額が80%を占めていて、
年収300万円以下の層の比率は僅か3.3%に過ぎない。
(だから年収800万円以下は政府から貰う額の方が多いと言われている)
北欧のような強烈な逆進税をかけてくるなら話は別だが、
もともと貧困対策に予算をかけられる税制になっていないのだ。
一部の者の生活習慣や行動規範にも、
概して一般の有権者からの強い嫌悪感を招く点がある。
下掲書は所謂底校ルポであるが、
意欲の低さや暴力、衝動性、劣悪な家庭環境といった根深い問題が分かる。
問題改善には相当のコストと労力を覚悟しなければならない。
▽ 特に理由もなく中退する者や就職に役立つ実習すら億劫がる生徒
生活保護受給層の問題としては、受給の世代間継承や教育軽視、
深刻な家庭問題、担当職員の抱える強いストレスが指摘されている。
よく言われるように、自立を助ける仕組みも殆どない。
「怒れる若者たち」集会 世界と連動、約100人 都心で反貧困、反原発(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111019dde012040017000c.html
” ◇「我々は99%」の仲間だ まとまらず、あいまい…「勝手に声」が今どき
「東京を占拠せよ!」。何人かの友人から“過激”なメッセージが転送されてきた。
ニューヨークで続く反格差デモ「ウォール街を占拠せよ」の日本版。「アラブの春」
以来、民衆の怒りは野火のように世界に広がっているが、果たして日本では……。
「怒れる若者たち」の声を集会会場で聞いた。【浦松丈二】
「貧乏人はカネも権力もないけれど、仲間はいるぞ! 集まるぞ!」
六本木ヒルズなど高層ビルが建ち並ぶ東京都港区六本木。15日正午すぎ、ビルの
谷間の三河台公園にツイッターなどの呼びかけに応じた約100人が集まった。
20代から40代ぐらいが大半だ。
激しい雨が上がった公園の中央には野菜カレーの大鍋やコーヒーポット、スローガ
ンを書くための段ボールとペンがあった。従来のデモや集会にはない光景。手ぶら
で来た人たちも空腹を満たし、主張を訴えられるようにする工夫だという。
「古代ギリシャで市民が集まって買い物や議論をした広場(アゴラ)のイメージで
す。ニューヨークの活動拠点の公園は、ボランティアが毎日掃除し、花壇や古本市
までできています。メディアはデモの衝突や逮捕シーンを報道しますが、公園では
豊かで心地よい空間がつくられている」
アジアを中心に貧困問題に取り組み、この日の集会を呼びかけたNPO「アジア太
平洋資料センター」の内田聖子事務局長(40)はこう語る。東京都内では同日、
別の2カ所でデモが呼びかけられていたが、ここではできるだけ参加者に発言して
もらいたいと、集会にした。
集まった人たちが一番多く掲げたのは「WE ARE THE 99%(我々は99
%)」というウォール街発のスローガンだ。格差是正、特権批判などさまざまな意
味が読み取れる。どうやらこの「99%」がキーワードらしい。
「若者も怒ってるよ!! 怒!怒!怒!」「格差是正・反失業」「富はすべての人
のために」「原発輸出反対」「兵器より社会保障を」と手書きされた段ボールも掲
げられた。政党や労組が呼びかけるデモや集会にはみられない多彩さ。つまりは、
あいまいさやまとまりのなさが特徴だ。
■
集会が始まった。内田さんが「先進国の市民が『我々は99%』と言い始めた。ア
ジアやアフリカなどの途上国でも貧困は解決されてこなかった。途上国と先進国の
貧しい人たちがようやく同じ地平に立てた記念すべき日です。一人一人が声を上げ
ることから始めたい」と語りかけた。司会役の女性が続ける。「いつもなら動員さ
れてきた何々組合の誰々さんお願いします、となるんですが。きょうは言いたいこ
とあるぞ、という人から」
「生活保護受給者は二級市民なんかじゃない」という自作プラカードを持って参加
した東京都在住の加藤孝さん(49)は、「週刊誌の広告に『生活保護費3兆円の
衝撃』とあった。だから何なんだ。人の命を財源で語るな。1%の人々の富を上手
に再分配すれば問題は消える」と訴えた。
なぜ発言を? 加藤さんは「昨日のアルバイトで仕切り役から『普段は何してるの』
と聞かれてね。恥ずかしくて生活保護で暮らしていると言えなかった。仲間の生活
保護申請に同行して、励ましてきたのに。きょうは大勢の前で本当の気持ちを伝え
ることができてうれしかった」と打ち明けた。
〔中略〕
集会会場で仲間たちとドラムをたたいていた中央大学商学部の平野健・准教授(ア
メリカ経済論)に「99%」の意味を聞いてみた。
「99%と1%の間に線を引くことで階級的な区別を示しつつ、同時に99%の中
のいろんな階層や立場の人々すべてが仲間なんだというメッセージにもなっている。
多様性を受け入れることは運動の創造性を高めるだろう。彼らは具体的な要求を掲
げるタイミングをできるかぎり引き延ばし、幅広い層を巻き込もうとしているわけ
だ」〔以下略〕”
→ もし社会的連帯があるなら、全体の税負担を引き上げて
再分配を求めるのが当然である。
せいぜい200万人程度の日本国内の富裕層に課税しても
問題は解決しない。貧困層の数が多過ぎるのだ。
低い国民負担率を選べば手厚いサービスは出来ない。
それを理解できなければ今の日本のような最悪財政になる。
仕事で忙しい中間層の大多数にとってこのデモは
予算要求行動にしか見えない。
どうなる?!私の年金 パートやアルバイトに厚生年金適用(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111014/trd11101408200010-n1.htm
”パートやアルバイトの人が「厚生年金」に入れるよう、制度変更が検討されている。
現在は働く時間が一定時間に満たないと、厚生年金には入れない。このため事業主
の中には、短時間勤務のアルバイトを増やして保険料負担を回避する動きもみられ
る。厚生年金に入らない場合は国民年金への加入が義務。だが、アルバイトの単身
者では未納になるケースもあり、老後の年金につながらないことが懸念されている。
(佐藤好美)
東京都内に住むアルバイト、小川隆さん(24)=仮名=は、平日は日に約5時間
を民間学童で働く。1週間の労働時間は25時間程度と短いため、厚生年金には入
れない。国民年金に加入義務があるが、何年か前から保険料を納めていない「未納」
だ。
小川さんは「年収は150万円くらい。月の手取りだと12万~13万円です。1
人暮らしなので、最大の出費は家賃の5万円ですが、通勤を考えると、そうは下げ
られない。国民年金保険料の月1万5千円は、1カ月分の食費とさして変わらない。
払う余裕がありません」という。
収入が低いため、かつて2年ほど国民年金保険料の「全額免除」を受けたことがあ
る。保険料を納めなくても老後に年金の一部を受けられる仕組みで、手続きをすれ
ば「未納」にもならないし、万が一のときも障害年金などを受けられる。
しかし、収入が全額免除の基準をわずかに上回り、手続きが滞った。「4分の3免
除」や「半額免除」「4分の1免除」の仕組みもあるが、小川さんは「そういうの
があると知らなかった。ずるずると未納になっています」という。
子供が好きだから、将来は保育士の資格を取ろうと勉強中だ。わずかだが貯蓄もし
ている。年金制度には「僕らの世代は本当にもらえるのか」と、不信感がある。し
かし、アルバイトでも厚生年金に加入できるような制度変更は歓迎だという。「僕
らのような低所得の若者世代のことを考えて、ぜひ、制度を変えてほしい」と話し
ている。
〔中略〕
千葉県に住むアルバイト、加山直樹さん(22)=仮名=はレンタカーの事業所で
週35~40時間働く。年収は200万~250万円。いずれは絵を描いて収入を
得るつもりだから、今の仕事はそれまでのつなぎだ。
アルバイトでも働く時間が正社員の4分の3以上なら、事業主は働く人を厚生年金
に入れる義務がある。一般的な正社員の労働時間は週40時間だから、目安は週3
0時間。加山さんの働き方は厚生年金の対象だ。だが、厚生年金の保険料は事業主
と労働者の折半だから、アルバイトを厚生年金に入れたがらない事業所もある。加
山さんも給与から厚生年金保険料は引かれていない。
厚生年金に入っていない場合、国民年金に加入義務があるが、加山さんは納めてい
ない。「収入が不安定で、多いときも少ないときもある。20~30代は消費マイ
ンドが高い。消費か年金かとなると、どうしても将来のことが後回しになる」と話
す。だから、厚生年金の適用拡大にも賛同できない。「僕らの世代は雇用が不安定
で収入は上がらない。手取りが減って老後に年金を受け取るより、手元の金が増え
るようにしてほしい」
背景には年金への不信感があるが、一定以上の収入があれば、保険料負担は義務だ。
〔以下略〕”
このように、社会保険料控除すら理解していないばかりでなく、
政府が税制優遇している社会保障がいかに有利かも分かっていない。
必死で働いている母子家庭の親とは違う暢気な低所得者もおり、
有権者は決して彼らへの税投入を容認しないであろう。
駒村康平教授は、目先のことを重視し将来を考えない者は
年金保険料を払わない傾向があることを調査で明らかにされている。
歳入庁をさっさと作って税とともに徴収した方がいい。
先進諸国でのデモや抗議活動はその行儀の悪さで嫌厭され、
ある種の嘲笑を受ける場合すらある。
日本の場合は更に深刻で、欧米より相対的に失業率が低いため
デモや抗議活動の「数の力」は極度に弱く、
貧困層が少数派として孤立する可能性が非常に高い。
もともと日本社会の多数派が社会的弱者にかなり冷淡であるのは
大阪大の大竹文雄教授が何度も指摘されている通りである。
驚くべきことに日本で「政府が弱者を救うべき」とする者の割合は
中国にすら劣っていて先進国中で最低水準である。
『格差と希望―誰が損をしているか?』(大竹文雄,筑摩書房) |
問題はそれだけではない。
下掲書によると、日本の所得税の負担割合は
年収1000万円以上の層の納税額が80%を占めていて、
年収300万円以下の層の比率は僅か3.3%に過ぎない。
(だから年収800万円以下は政府から貰う額の方が多いと言われている)
北欧のような強烈な逆進税をかけてくるなら話は別だが、
もともと貧困対策に予算をかけられる税制になっていないのだ。
『国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン』(松田千恵子) | |
一部の者の生活習慣や行動規範にも、
概して一般の有権者からの強い嫌悪感を招く点がある。
下掲書は所謂底校ルポであるが、
意欲の低さや暴力、衝動性、劣悪な家庭環境といった根深い問題が分かる。
問題改善には相当のコストと労力を覚悟しなければならない。
▽ 特に理由もなく中退する者や就職に役立つ実習すら億劫がる生徒
『ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所』 | |
生活保護受給層の問題としては、受給の世代間継承や教育軽視、
深刻な家庭問題、担当職員の抱える強いストレスが指摘されている。
よく言われるように、自立を助ける仕組みも殆どない。
『大貧困社会』(駒村康平,角川SSコミュニケーションズ) | |
「怒れる若者たち」集会 世界と連動、約100人 都心で反貧困、反原発(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111019dde012040017000c.html
” ◇「我々は99%」の仲間だ まとまらず、あいまい…「勝手に声」が今どき
「東京を占拠せよ!」。何人かの友人から“過激”なメッセージが転送されてきた。
ニューヨークで続く反格差デモ「ウォール街を占拠せよ」の日本版。「アラブの春」
以来、民衆の怒りは野火のように世界に広がっているが、果たして日本では……。
「怒れる若者たち」の声を集会会場で聞いた。【浦松丈二】
「貧乏人はカネも権力もないけれど、仲間はいるぞ! 集まるぞ!」
六本木ヒルズなど高層ビルが建ち並ぶ東京都港区六本木。15日正午すぎ、ビルの
谷間の三河台公園にツイッターなどの呼びかけに応じた約100人が集まった。
20代から40代ぐらいが大半だ。
激しい雨が上がった公園の中央には野菜カレーの大鍋やコーヒーポット、スローガ
ンを書くための段ボールとペンがあった。従来のデモや集会にはない光景。手ぶら
で来た人たちも空腹を満たし、主張を訴えられるようにする工夫だという。
「古代ギリシャで市民が集まって買い物や議論をした広場(アゴラ)のイメージで
す。ニューヨークの活動拠点の公園は、ボランティアが毎日掃除し、花壇や古本市
までできています。メディアはデモの衝突や逮捕シーンを報道しますが、公園では
豊かで心地よい空間がつくられている」
アジアを中心に貧困問題に取り組み、この日の集会を呼びかけたNPO「アジア太
平洋資料センター」の内田聖子事務局長(40)はこう語る。東京都内では同日、
別の2カ所でデモが呼びかけられていたが、ここではできるだけ参加者に発言して
もらいたいと、集会にした。
集まった人たちが一番多く掲げたのは「WE ARE THE 99%(我々は99
%)」というウォール街発のスローガンだ。格差是正、特権批判などさまざまな意
味が読み取れる。どうやらこの「99%」がキーワードらしい。
「若者も怒ってるよ!! 怒!怒!怒!」「格差是正・反失業」「富はすべての人
のために」「原発輸出反対」「兵器より社会保障を」と手書きされた段ボールも掲
げられた。政党や労組が呼びかけるデモや集会にはみられない多彩さ。つまりは、
あいまいさやまとまりのなさが特徴だ。
■
集会が始まった。内田さんが「先進国の市民が『我々は99%』と言い始めた。ア
ジアやアフリカなどの途上国でも貧困は解決されてこなかった。途上国と先進国の
貧しい人たちがようやく同じ地平に立てた記念すべき日です。一人一人が声を上げ
ることから始めたい」と語りかけた。司会役の女性が続ける。「いつもなら動員さ
れてきた何々組合の誰々さんお願いします、となるんですが。きょうは言いたいこ
とあるぞ、という人から」
「生活保護受給者は二級市民なんかじゃない」という自作プラカードを持って参加
した東京都在住の加藤孝さん(49)は、「週刊誌の広告に『生活保護費3兆円の
衝撃』とあった。だから何なんだ。人の命を財源で語るな。1%の人々の富を上手
に再分配すれば問題は消える」と訴えた。
なぜ発言を? 加藤さんは「昨日のアルバイトで仕切り役から『普段は何してるの』
と聞かれてね。恥ずかしくて生活保護で暮らしていると言えなかった。仲間の生活
保護申請に同行して、励ましてきたのに。きょうは大勢の前で本当の気持ちを伝え
ることができてうれしかった」と打ち明けた。
〔中略〕
集会会場で仲間たちとドラムをたたいていた中央大学商学部の平野健・准教授(ア
メリカ経済論)に「99%」の意味を聞いてみた。
「99%と1%の間に線を引くことで階級的な区別を示しつつ、同時に99%の中
のいろんな階層や立場の人々すべてが仲間なんだというメッセージにもなっている。
多様性を受け入れることは運動の創造性を高めるだろう。彼らは具体的な要求を掲
げるタイミングをできるかぎり引き延ばし、幅広い層を巻き込もうとしているわけ
だ」〔以下略〕”
→ もし社会的連帯があるなら、全体の税負担を引き上げて
再分配を求めるのが当然である。
せいぜい200万人程度の日本国内の富裕層に課税しても
問題は解決しない。貧困層の数が多過ぎるのだ。
低い国民負担率を選べば手厚いサービスは出来ない。
それを理解できなければ今の日本のような最悪財政になる。
仕事で忙しい中間層の大多数にとってこのデモは
予算要求行動にしか見えない。
どうなる?!私の年金 パートやアルバイトに厚生年金適用(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111014/trd11101408200010-n1.htm
”パートやアルバイトの人が「厚生年金」に入れるよう、制度変更が検討されている。
現在は働く時間が一定時間に満たないと、厚生年金には入れない。このため事業主
の中には、短時間勤務のアルバイトを増やして保険料負担を回避する動きもみられ
る。厚生年金に入らない場合は国民年金への加入が義務。だが、アルバイトの単身
者では未納になるケースもあり、老後の年金につながらないことが懸念されている。
(佐藤好美)
東京都内に住むアルバイト、小川隆さん(24)=仮名=は、平日は日に約5時間
を民間学童で働く。1週間の労働時間は25時間程度と短いため、厚生年金には入
れない。国民年金に加入義務があるが、何年か前から保険料を納めていない「未納」
だ。
小川さんは「年収は150万円くらい。月の手取りだと12万~13万円です。1
人暮らしなので、最大の出費は家賃の5万円ですが、通勤を考えると、そうは下げ
られない。国民年金保険料の月1万5千円は、1カ月分の食費とさして変わらない。
払う余裕がありません」という。
収入が低いため、かつて2年ほど国民年金保険料の「全額免除」を受けたことがあ
る。保険料を納めなくても老後に年金の一部を受けられる仕組みで、手続きをすれ
ば「未納」にもならないし、万が一のときも障害年金などを受けられる。
しかし、収入が全額免除の基準をわずかに上回り、手続きが滞った。「4分の3免
除」や「半額免除」「4分の1免除」の仕組みもあるが、小川さんは「そういうの
があると知らなかった。ずるずると未納になっています」という。
子供が好きだから、将来は保育士の資格を取ろうと勉強中だ。わずかだが貯蓄もし
ている。年金制度には「僕らの世代は本当にもらえるのか」と、不信感がある。し
かし、アルバイトでも厚生年金に加入できるような制度変更は歓迎だという。「僕
らのような低所得の若者世代のことを考えて、ぜひ、制度を変えてほしい」と話し
ている。
〔中略〕
千葉県に住むアルバイト、加山直樹さん(22)=仮名=はレンタカーの事業所で
週35~40時間働く。年収は200万~250万円。いずれは絵を描いて収入を
得るつもりだから、今の仕事はそれまでのつなぎだ。
アルバイトでも働く時間が正社員の4分の3以上なら、事業主は働く人を厚生年金
に入れる義務がある。一般的な正社員の労働時間は週40時間だから、目安は週3
0時間。加山さんの働き方は厚生年金の対象だ。だが、厚生年金の保険料は事業主
と労働者の折半だから、アルバイトを厚生年金に入れたがらない事業所もある。加
山さんも給与から厚生年金保険料は引かれていない。
厚生年金に入っていない場合、国民年金に加入義務があるが、加山さんは納めてい
ない。「収入が不安定で、多いときも少ないときもある。20~30代は消費マイ
ンドが高い。消費か年金かとなると、どうしても将来のことが後回しになる」と話
す。だから、厚生年金の適用拡大にも賛同できない。「僕らの世代は雇用が不安定
で収入は上がらない。手取りが減って老後に年金を受け取るより、手元の金が増え
るようにしてほしい」
背景には年金への不信感があるが、一定以上の収入があれば、保険料負担は義務だ。
〔以下略〕”
このように、社会保険料控除すら理解していないばかりでなく、
政府が税制優遇している社会保障がいかに有利かも分かっていない。
必死で働いている母子家庭の親とは違う暢気な低所得者もおり、
有権者は決して彼らへの税投入を容認しないであろう。
駒村康平教授は、目先のことを重視し将来を考えない者は
年金保険料を払わない傾向があることを調査で明らかにされている。
歳入庁をさっさと作って税とともに徴収した方がいい。