mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

伊吹山

2015-05-12 09:56:36 | 日記

 勝原を出て、naviに従って伊吹山麓の旅館に向かう。どこをどう走っているのか、わからない。というか、気にしなくなった。オヤッと気づくと福井に出ている。敦賀という表示が出るとさすがに、何だか違う方向に来ているのではないかと思うのだが、今更地図帳で探すわけにもいかない。長浜市の標示が出てから安心していたのだが、眼にした伊吹さんには、驚いた。なんと北側がすっかり削られてひな壇のようになっている。ちちぶの武甲山と同じだと思った。石灰石の採掘をしてきた結果なのだが、どうして山を削るのは北側からするのだろうか。南側は植生も多く、抵抗が多いから? 北側なら、そういえば武甲山を削ってくれたおかげで、朝の陽当たりが良くなったと、北側の影森の住人が話していたっけ。

 

 2時間ちょっとで、伊吹山麓の宿に着いた。ここも私一人。民宿のような造りだが、「旅館」と銘打ってある。勝原の民宿ようなおおらかさはない。棟を並べる繁盛した街中の「旅館」。伊吹山への参拝客を相手の、昔の旅籠のような感じ。サービスはほぼ、ない。勝手に風呂に入り勝手に食べて、勝手に山へ行っておいでという感じ。構われないのは案外、心地よいが、山の情報などを聴く機会もない。街へ出る。「おみやげや」でビールでも飲みながら話を聞こうかと足を運ぶが、「おみやげや」は「もうしめようと思った。宿で飲んでおくれ。そちらの方が安いし」と素っ気ない。やれやれ。

 

 そして今朝6時、伊吹山へ向けて出発する。標高差は1150mほど、5時間40分の行程だ。曇り空。6時に三之宮神社登山口をもう一人、挨拶を交わして出発した30歳くらいの女性がいた。その形をみると、トレイル・ランナーではないか。たちまち姿見えなくなった。30分ほど樹林の中の九十九折れの道を歩く。ポンとスキー場のようなところへ出る。1合目と表示がある。舗装した林道も来ているし、山荘もある。笹原の間をかき分けてつくった登山道を、先行する10人くらいがいる。登っていると後から単独行者がやってきて、追い抜いていく。登り慣れた地元の登山者という感じだ。

 

 2合目との間で、山頂の神社が一之宮、下が三之宮、ここにあるのが二之宮と書いた標識があるが、二之宮が見えない。少し登って東を見やると、背の高い笹の向こうにたしかに神社らしきものがある。ずいぶんしっかりした作りのようだから、笹が伸びていないときにつくったか、雪のときにでも計画したのだろうか。

 

 その先の2合目で、先行していた団体さんに追いついた。どこからの山の会のようだ。ずいぶん力の差がある。早い人たちはどんどん先行する。遅い人たちが、良く休む。その中間のところを歩いている人がリーダーだろうか。後ろを気遣い、前に声をかけることもできず、しばしば立ち止まって後方を注視する。三合目で、先行する達者組に追いついた。

 

 三合目に来て思ったのだが、伊吹山というのは、重ねモチのような恰好をしている。三合目から五合目までの間が、緩やかな台地になっていて、標高850mほどの五合目から伊吹山はぐいと立ち上がっている。だから三合目まできてみて初めて伊吹山の全容が見える。森林限界がどうなっているのかわからないが、五合目から上は、樹林はない。草付きばかりの間を、ジグザグに山頂へ向かっている人の姿が見える。

 

 おっと、降りてくる人もいる。早い。登っているこちらがえっちらおっちらだからそう思うのかと思ったら、そうではない。トレイルランナーたちなのだ。確かに伊吹山はトレイルランニングのトレーニングには絶好のルートだ。まず登山道が広い。すれ違うにも、邪魔にならない。しかもただひたすら上り、ひたすら降る。明快この上ない。きいてみると、登り1時間半、下り1時間だそうだ。ご本人の言では、早い人は上り下り合計で2時間だそうだから、ふつうに歩く私たちの1/3といったところか。面白いだろうなあ。でも、何もみないで登って降りるのは、もったいないなあ、と思う。まあ、あれもこれもってわけにはいかないから、仕方がない。入れ込むことのできる時期に精一杯入れ込んで、あとの楽しみは年を取ってからにしておくのも悪くない。

 

 五合目から上は、ほんとうに一歩一歩。着実に自分のペースで登る。追い越していく人は、一組、2人だけ。若い。ここまで1時間半と話しているのを聞いて時計を見ると、私は2時間かかっている。なるほど、それだけの差が出るのだ。花がたくさん咲いている。スミレとはわかるが、何スミレなのかはわからない。先月秋ヶ瀬公園でアメリカスミレサイシンと聞いたのと同じような、色の濃い花のスミレもある。だが、まさか、だ。オドリコソウが見事だ。カキドオシもそれだと分かる。だがそれとは違う黄色いのや白いのや、いろいろとある。

 

 7合目を過ぎたあたりで、今朝6時に登山口であったトレールランナーと出逢う。「早いですね」と声をかけ、応答はあったが、たぶん彼女は私のことを覚えていない。もしすぐに折り返したとすると、私と1時間くらい違う。上の方へ行くと、結構岩が多い。岩登りというほどではないが、岩に足をかけるところが多くなった。8合目の標示のところにはベンチがしつらえられ、降るときには(登る)人がたくさん休んでいた。

 

 稜線に張り巡らしたロープが見え、山頂だと思った。「ドライブ駐車場へはいけません」という表示看板が何カ所かあり、ときどきまちがえてしまう人がいると思わせる。何軒もお店が並んでいて、どこにも「山頂」と書いてある。どこが山頂だかわからない。草付きで休んでいる人に聞くと、杉脇の日本武尊像だという。正面に回ってみると、「山頂」の看板がある。なるほど。1合目で一緒になった男性が写真を撮っている。挨拶をして私は、広い山頂の東の方へ向かう。

 雨がおちてくる。途中でも少しばかり雨はあったが、霧雨のようで、気に

しなかった。だが今度は本降りという感じ。すぐ近くの「おみやげや」に入って、コーヒーを頼む。オジサンが丁寧に淹れてくれる。チョコとクリームとお砂糖がついている。結局全部食べた。休みながら、雨具を出し、ズボンをつけ、上着をまとう。暑くない。むしろ防寒着を着たような感じだ。

 

 雨は10分ほどで止んだ。伊吹山は広い山頂もさることながら、ドライブ駐車場へ回り込む周回路全体がお花畑と聞いている。「おみやげや」の主人にその話をすると、「雪が解けたばかりだから、ニリンソウとか、数少ない。山頂周辺とあまり変わらない。7月にお出で、ものすごくいいから」と今日の様子を簡略に言ってしまう。たしかに山頂部を回っても、花の種類は少ない。

 

 下山にかかる。登ってくる人の数が多くなる。皆さん這う這うの体だが、こちらは下山中だから、軽快。3合目までが見えるところに出ると、ずいぶんたくさんの人たちが登ってきている。そうか、土曜日なのだ、今日は。でも見ていると、やっぱり男性が多い。ついで、年配の女性。次は若い女性たちとか、カップル。小学生らしいのが少ないのは、どうしてだろう。それにしても、遅い時間になっても登ってくる人だ。出発時刻が、9時ころなのではないかと思う人たちもいると思っていたら、ほとんど1合目になっても、まだ登ってくる人たちがいる。11時ころだ。ということは、この人たちは山頂で泊まるのだろうか。ま、そんな心配をすることはないか。みなそれぞれに、安全策は考えているであろう。

 

 三之宮神社に着いたのは11時半。なんと水が出ていて、大きな刷毛が置いてある。登山者向けのようだ。ストックと靴とスパッツの泥を落とし、神社の浄水で頭と顔を洗い、水を飲んで、車のところへ向かった。いい山であった。