英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

鎌倉殿の13人 第39話「穏やかな一日」

2022-10-19 00:07:01 | ドラマ・映画
「春霞 たつたの山の 桜花 おぼつかなきを 知る人のなさ」源実朝
春霞 たつたの山の 桜花 おぼつかなきを 知る人のなさ


春の霞のせいで、はっきりと姿を見せない桜のように、
病でやつれた己を見られたくはない
されど 恋しいあなたに会いたい 切なきは…恋心
 
(訳:源仲章)



 今話だけでなく、これまでも幾つかの伏線はあった。

 泰時の不在をさみし気に受け入れていた…
 歩き巫女から諭され、安心したような顔をしていた…
 千世を避けているような…

 そして、今話で、弓の腕比べ会で、勝利を決定づけた鶴丸=平盛綱と泰時が抱き合って喜ぶのを見て、実朝は機嫌を損ねていた……
(以前から気づいていた視聴者もいたとは思うが、ここで、ピンと来た人も多かったはず)

 鎌倉殿という重荷を背負わされた実朝。
 その苦しみを和らげようと、泰時に悩みや迷いを打ち明けたかったのかと思っていたが、そうか、恋心だったのか……

 
「どうして私からお逃げになるのですか?
 私の何が気に入らないのですか?」
……必死で心をぶつける千世に
「私は世継ぎを作ることはできないのだ。 あなたのせいではない……
 私は……どうしても そういう気持ちになれない」

「ずっと、お一人で悩んでいらっしゃったのですね
 話して下さり、嬉しゅうございました」

……実朝が自分の気持ちに応えてくれることはないと知りつつ、それでも、実朝の心に寄り添おうと、自らの身を実朝に添える知世
「私は……応えてやることはできない」
「それでも、構いませぬ」
……知世の思いに応えることはできないが、それでも、知世の優しさに応えようと、恐る恐る?知世の背に手を添える実朝……

 実朝も千世も優しく清い人なので、悲運としか思えない。


サブタイトルは「穏やかな一日」だったが、心情は大波の回であった……
泰時の権力欲による傲慢ぶりに、鎌倉の御家人の間には不満のエネルギーが水面下(地下)に溜まり、大激震が起こりそうだし…
さらに、実朝の心も、改めて泰時に渡した和歌のごとく、大波で砕け散ったし…



(上記のどちらを先に書こうかと迷ったが、時系列順の方が書き易いので……)
義時の傲慢さに感じる不安や不満を抑えて、時政の命を奪わなかったことに礼を言う政子に対し
「むしろ、(父・時政を)殺していれば、御家人たちは怖れ慄きひれ伏した」
 「二度と北条に歯向かうものを出さぬため」と決意を口に出した後なので、100%本心ではないだろうが、どす黒い…どす黒い言葉だ

義時 傲慢劇場 シーンその1――三浦義村
「鎌倉を変えるぞ!」(鎌倉を自分の都合のいいように変えるぞ!)と話を切り出し、
「守護は2年ごとに改める」と制度改革案を打ち出す。
しかし、守護である義村にとってはとんでもない話だ。やんわりと否定の意見を述べるが、
「真っ先に賛成してほしい。(義村が賛同すれば)他の御家人も何も言えない」
こう言われてしまっては、義村も異を唱えにくく、表向きは了解の意を示したが、義時が去った後は、扇子を叩きつけた

義時 傲慢劇場 シーンその2――和田義盛
 「上総介」(上総国の国司)に就く要望を“にべなく”退ける
 義盛は実朝に気に入られており、「上総介」を実朝に願った。実朝は政子に頼んだが、政子は公私混同してはいけないと諭した。(とは言え、実朝の願いを聞き入れ、政子が泰時に頼んだのか、それとも、和田が隠さず願いを吹聴するので、泰時の耳に入ったのかは不明)
 願いを却下する理由を説明するわけでもなく、説得するわけでもなく、にべなく義盛を退ける義時の態度に「変わっちまったようなあ、鎌倉も、北条も」と義盛

義時 傲慢劇場 シーンその3――源実朝
 和田の願いが聞き入れなかったのに、北条の郎党の盛綱=鶴丸を御家人にする(準ずる)ように動いたことに、「世の中の断りを乱す」と拒否したが、
「あんたも偉くなったよな。もう私は要らないみたいだから、伊豆へ帰るよ」(←意訳)と脅す(実際はもう少し穏やかな言い回しだが、慇懃無礼に凄みを加えた脅し)
そして、実朝が反対を取り下げた後
「鎌倉殿が一致度口に出したことを翻しては、政の大元が揺るぎます。
 ……私のやることに口を挟まぬよう鎌倉殿は見守ってくれればいいのです
と恫喝


 今話、さらに義時のどす黒さが増した。前話までで闇に落ちてしまった感があるが、今話では、真っ逆さまに落ちて…堕ちてしまった。
 でも、そのきっかけや、その心情描写がなかったように思えた。
 個人的には、かなり不満。



……と傲慢さを爆発連発させていた義時であるが、本来なら、それに異を唱えるべき泰時が……
実朝の和歌(恋文)の返歌(返事)に頭を悩ませていた……

 しかも、和歌に秘められた恋心に気づかない(そりゃ、和歌の本意に気づけないのでは、返歌もできないよなあ)
 源仲章に恋の歌と教えられて、ようやく、実朝の気持ちに気づく泰時であった……

 でも、以前の泰時なら、「鎌倉殿ったら、そそっかしいなあ。渡す歌を間違えるんだもの」とにっこり笑って指摘したのだろうけれど、妻の初に鍛えられている成果が出たのだろう。
 きのこを贈れば女性は喜ぶと思い込んでいる義時だったら、どうだっただろうか?

 実朝の気持ちに気づかぬふりをして歌(文)を返したが、泰時も心が痛い。改めて渡された和歌を見て実時の心を慮り、酒を煽っていた。

 実朝が、改めて渡した歌が、悲しい。
「大海の 磯もとどろに寄する浪 われて砕けて裂けて散るかも」

(これ、返歌、できないよね)

【その他の感想】
・「鶴丸の御家人問題」「弓合戦出の抱擁、実朝の恋心と嫉妬心からの反抗」「義時の傲慢さ」をうまく絡めていた
・実朝の世話役女性。和田好みの「声が大きい女性」の要望に実衣がしっかり応じていたのが笑えた
・実朝は、当然、世話役女性を断ったが、その女性の面子を考えて、世間話(悩み相談)をして時を過ごす…優しいなあ
 しかも、その時の苦情の“ひどい男”が、実は、泰時の異母弟の北条朝時(母は比奈)だった。(しっかり、義時の耳に入って、叱られた)
 朝時…頼朝と義時を合わせた名前だが、名前負けというか、“バカ息子”。今後、トラブルメーカーになるのだろうか?
・“裏表女”・のえ…意外に正直で「私なんか、欲が着物を着て歩いているようなものだけど」という自己評価を初に漏らす
 義時を見送った後、抱いていた我が子を「はい」と荷物を渡すように従者に渡す様も面白かった

・八田は相変わらずの便利屋ぶり。
・善哉……いきなり育つ→公暁


第1話「大いなる小競り合い」  第2話「佐殿の腹」
第3話「挙兵は慎重に」     第4話「矢のゆくえ」
第5話「兄との約束」      第6話「悪い知らせ」
第7話「敵か、あるいは」    第8話「いざ、鎌倉」
第9話「決戦前夜」       第10話「根拠なき自信」
第11話「許されざる嘘」     第12話「亀の前事件」
第13話「幼なじみの絆」     第14話「都の義仲」
第15話「足固めの儀式」     第16話「伝説の幕開け」
第17話「助命と宿命」      第18話「壇ノ浦で舞った男」
第19話「果たせぬ凱旋」     第20話「帰ってきた義経」
第21話「仏の眼差し」      第22話「義時の生きる道」
第23話「狩りと獲物」      第24話「変わらぬ人」
第25話「天が望んだ男」     第26話「悲しむ前に」
第27話「鎌倉殿と十三人」    第28話「名刀の主」
第29話「ままならぬ玉」     第30話「全成の確率」
第31話「諦めの悪い男」     第32話「災いの種」
第33話「修善寺」        第34話「理想の結婚」
第35話「苦い盃」        第36話「武士の鑑」
第37話「オンベレブンビンバ」  第38話「時を継ぐ者」
第39話「穏やかな一日」     第40話「罠と罠」
第41話「義盛、お前に罪はない」 第42話「夢のゆくえ」
第43話「資格と死角」      第44話「審判の日」


【ストーリー】番組サイトより
 いまだ源実朝(柿澤勇人)と千世(加藤小夏)との間に世継ぎの誕生がなく、気にかける政子(小池栄子)と実衣(宮澤エマ)。
 義時(小栗旬)は、御家人たちが謀反を起こさぬように政(まつりごと)の仕組みを改める。しかし、傲慢なやり方に三浦義村(山本耕史)、和田義盛(横田栄司)らが不満を募らせていた。
 一方、泰時(坂口健太郎)は慣れない和歌に悪戦苦闘し、源仲章(生田斗真)に相談を持ち掛ける。そんな中、成長した公暁(寛一郎)が……

(これまで、ほとんどコピーペーストするだけで、読んでいなかった“あらすじ”……
    ……読んでみると、あまり上手じゃない気がする……
 「そんな中、成長した公暁(寛一郎)が……」って、今話の最後のシーンで、今回とは、ほとんど関係ない)


脚本:三谷幸喜
コメント (2)
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