2月11日、欧州連合(EU)欧州委員会は、特恵関税制度EBAのカンボジアの一時的資格停止に関する手続きに着手したと発表しました。これは、最終手段となる資格停止を直ちに発動するものではなく、まず、6か月間の監視・対話強化期間があり、その後3カ月間のEUでのレポート作成期間を経て、12カ月後までに結論を出すこととなっています。停止が決定された場合は、最終決定後6か月間の過渡期間を経て、18カ月後から特恵関税措置の対象外となります。
EUでは、昨年以来、カンボジアの民主主義、労働者の権利、土地問題等について、調査を実施し、カンボジア側とも対話を続けてきましたが、包括的な改善が必要だと主張しています。
これに対し、カンボジア側は昨年の選挙終了後、様々な改善を行ってきたのに対し、特恵関税制度の資格継続の条件が不明確であるとし、また、他にも条件を満たしていない後発開発国があるのにもかかわらず、カンボジアにだけ「厳格な実行」を求めるのは公平ではないとの見解を示し、反発を強めています。
在カンボジア米国大使館は、カンボジアに対し「経済制裁の発動を回避するため、真の民主主義を取り戻すべきだ」との声明を発表しました。
他方、カンボジア欧州商工会議所は、遺憾の意を表明し、「パートナーシップだけでなく、EUが過去20 年間にわたって支援してきたカンボジアの社会経済基盤の底上げも危うくする」と警告しました。
特恵関税制度の資格停止は、カンボジア経済にとって最大とも言ってよい下振れリスクであり、その顕在化は、カンボジアの主力産業である縫製業に大きな打撃を与えかねないものと見られます。また、特恵関税資格を喪失した場合、カンボジアの多くの脆弱な縫製労働者が貧困層に逆戻りする可能性も否定できません。更に、今回の手続着手のニュースだけでも、カンボジアへの海外直接投資を萎縮させる大きな要因となるものとも見られます。これまで順調な成長を続けてきたカンボジアにとって、正念場ともいえる事態に至ったものと考えられ、今後のEUとカンボジア政府との対話とその結果が注目されます。
EUの新聞発表
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-19-882_en.htm?fbclid=IwAR0JvEd3wCEHnDc9TtsshEFHYG3Zo4iDRrvQm1D78xowkoFXSuqJ7tV4OVw
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