カンボジア経済

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南部経済回廊 その3 鉄道北線

2018年05月24日 | 経済
 プノンペンとタイ国境を結ぶ鉄道北線は、プノンペン~プルサット~バッタンバン~シソポン~ポイペト等の49駅、384キロメートル結んでいます。軌間は、タイ・ベトナムと同じメーターゲージです。1970年代~80年代の内戦を経て、線路等の状況は劣悪なものとなっていましたが、2009年まで王立カンボジア鉄道(Royal Railway of Cambodia)により、細々と貨物・旅客列車の運行が行われてきました。
 この状況を抜本的に改善するため、アジア開発銀行(ADB)、オーストラリア国際開発庁、OPEC基金等の支援(総額1億4100万ドル:約149億円)を得て、線路や関連設備のリハビリ工事が行われました。しかし、アジア開発銀行等の支援が南線の整備だけで底をつき、北線については、その後は政府予算で細々と改修が進められてきました。
 工事完成後の運営は、30年のコンセッション契約で民間のトールロイヤルカンボジア社(オーストラリアのトール社55%、カンボジアのロイヤルグループ45%の合弁)に当初委託されましたが、現在はトール社が撤退し、ロイヤルグループのみで運営されています。この民営化により、王立カンボジア鉄道は2009年に廃止されました。
 今年4月4日、カンボジア鉄道北線のタイ国境接続部のポイペト~シソポン間約48キロメートルの改修が完工し、旅客列車の運行が開始され、4月29日には、シソポン~バッタンバン間65キロメートルも開通しました。公共事業運輸省のスンチャントル大臣によれば、更に5月29日にバッタンバン~プルサット間を開通させるとのことです。また、ポイペト~プノンペンの北線は今年中に全線開通させたいとしています。
 今回、ポイペト~シソポン間の列車に乗ってみました(写真上)。48キロを約1時間半かけて走っています。踏切等の安全設備が未整備で、開通1カ月で既に3件の自動車との衝突事故を起こしていますので、ゆっくり走るのもやむを得ないかと思います。途中の駅は未完成で、停車はありませんでした。今のところ、観光鉄道の色彩が強いようでした。
 7月の選挙を前にして、「開通」という実績をアピールする狙いもあるものと見られますが、安全で快適な鉄道として本格的に営業するまでには、まだ時間を要するものと見られます。


ポイペト国境付近は、せっかく線路が完成したのですが、屋台に占拠されていました。


線路は、ポイペトのカジノ街のど真ん中を抜けていきます。


列車内は、観光と思われる地元客で一杯でした。


5月29日開業予定のバッタンバン~プルサット区間では、マルチプルタイタンパー(レールのゆがみを矯正して、線路を真っすぐに修正していく機械を積んだ車両)が、工事を進めていました(4月25日撮影)。


プルサット~プノンペン間での鉄道橋梁補修工事。架け替え等の本格的な改修工事までは、難しいようです。



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