開演10分前、まだ観客席もざわめいているのに、いつのまにか舞台の上に2人の僧とフルートを持った女性が現れています。
そして短い曲を何曲か奏でているうちに、開演時間が迫ってきました。
実はこの女性の持つフルートが、あとで何度か登場する「魔法の笛」のようです。
こんどは、観客席の右横のほうから別の若い女性が、鈴を鳴らしながら最前列の前を横切り、舞台に上がり挨拶をすると、聞きなれた序曲が流れてきました。
音楽の流れに合わせ、次々に登場人物が出てきて「おとぎ話」のはじまりです。
「魔笛」はTVやビデオで何回か見たことがありましたが、どうも筋がよくわかりませんでした。
しかし、プログラムのポクロフスキーからのメッセージを読むと、なるほどねえと納得。
「このオペラには深遠を深めた哲学などはないのだ、キャラクターたちがぶつかり合う無秩序、支離滅裂さはほかならぬ私たちの人生そのもの・・・。」
なるほどなるほど、そう考えれば、いいのか。
そう考えれば、最初に大蛇が現れて、それが3人の侍女にいきなり退治されたり、襲ってきたモノスタトスが魔法の鈴で踊りだしたり、夜の女王が雷鳴とともにあっという間に地獄に落ちて大団円、といったことなど、なんでもありな訳ですね。
やはりハイライトは、夜の女王のアリアやザラストロの低く太いバスだったけれど、ちょっと太目のパパゲーナやおばさん風の3人の侍女、かわいい3人の童子など脇役もすばらしい歌声だったし、
パパゲーノやパミーナも観客席の前を右へ左へと歌いながら歩き回り、なんとも楽しいオペラでした。
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W.A.Mozart作曲 オペラ「魔笛」
モスクワ室内歌劇場
演出:ボリス・ポクロフスキー
2005/6/24 新潟県民会館
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