いつもの出張は自分で車を運転することが多いのだが、久しぶりに電車になった。
それも四日市~名古屋~東京~新潟と時間はたっぷりある。
なので、じっくり本でも読もうというわけであった。
本の帯につられたわけでもないが、「従来の根拠のない色相環、机上のシステム」に対して「従来の常識を覆す先端色彩の世界」という内容に少し惹かれ、多少は我が家のガーデニングにも参考になるだろう、という思いもあった。
なにしろ、我が家の庭は自分の興味のある花を手当たり次第に植えているだけで、なんともまとまりのないものになっているのだ。
雑誌なども参考にしたいのだが、いかんせん基礎的な色彩センスが欠如しているのであろう。
さて、第1章はこの本の根幹をなす、著者の新しい理論であって、最初に読むべきなのだろうが、少し難しいようなのですっとばしてしまう。
第2章に入ると、いろいろ具体的なテーマが著者の新しい理論を基に迷解に説明されている。
ここで「明解」と書かなかったのは変換ミスではない。
たとえば、86ページに「色の膨張収縮性」という性質が説明されている。
明るい色(の服装)は太って見える
暗い色(の服装)は締まって見える
ここでの説明の内容がスゴイ!
「この性質は、電磁波の波長によるところが大きいです。暖色系は波長が長く、同じ時間に届く距離(広がる面積)が寒色系よりも長く(広く)なるのです。
波長が長ければその分、光が早く目に届くため、近くにあるように見え、相対的に大きく膨らんで見えるのです。」
もう一度声を出して読んでみましょう。
「波長が長ければその分、光が早く目に届く」
「早く目に届くため、近くにあるように見える」
すっとばした第1章の本質を読んでみる。
これまたかなりひどい理論だ。
光が電磁波の一種はよいとして、まあ波だから、波長もよいとして、、、、
問題は波長と速度の関係だ。
たとえば、光と同じ波である「音」について考えてみればよくわかる。
ピアノで和音を弾いたら、「波長の長い低音は波長の短い高音よりも早く耳に届く」と同じようなことをこの著者は言っており、これも色の本質だというわけだ。
【速度=波長×周波数】
これが公式。
この式で見ると、波長が2倍になると速度が2倍になるように見える。
これが著者の理論なのだが、そんなことはないわけで、
波長が2倍になれば周波数が2分の1になるだけのことで、光の速さが2倍になるわけではないだろう。
光の速さは一定ではないの?
そのほかにも、明度は時間だとか、彩度がエネルギーとか、色とホルモンやら色のメッセージとかいくらでも突っ込みどころのある内容で、その気になればこの10倍くらいスラスラ書けそうなのだが、IHSの原稿も書かねばならないのでやめにする。
第5章に「色は調和させなくてもいい」という章があり、色彩センスとかの話が述べられている。
いろんな方の調和論を挙げて、「調和とは目立つものをなくすことをいい、また、それが目的となっているようです。」
とまとめている。
ここで、著者は調和をそれほど重要視していないし、私もそう思うわけなのだが、さて、ガーデニングで「調和」とはどういうものだろうかと、ふと考えるのである。
そこで思い当たるのは、赤や紫、白やピンクと色とりどりの雪割草が咲き乱れる情景であって、雪割草の栽培では著名な岩渕さんがよく講演会でおっしゃることである。
「互いに互いを引き立てあう、でしゃばらず、引っ込まず」
これがガーデニングにおける「調和」という言葉に一番ぴったりするような気がする。
久しぶりの有意義な時間は、つまらん本とともに消え去ってしまった(^^;
ちなみにこの本によれば、
「黄色はエンドルフィンの分泌を促し、笑いを生み出す色です。」
とあり、さらに続けて
「ただし、長時間、黄を見ていると、ある種の発作の引き金となることがあります。ですので、精神的に不安定なときは見るのを避けたほうが無難でしょう。」
と書いてあります。
というわけで、
黄色の花を長時間見ることは危険なので、注意するようにしましょう。