そこは窓もなく、狭くて少しすえた臭いのする殺風景な個室(密室)だった。
担当刑事は
いきなりボクに聞いた。
「携帯は持ってますか?」
最初は何のことか理解しかねた。
「持ってますけど」
(むしろ今時持っていない人の方が珍しい)
そう答えると、
「この中に入れて下さい」
と部屋のコーナーの折り畳み椅子の上にある小さなプラスチックのケースを指さした。
なるほど、
撮影や録音をさせないためだな、とやっと理解ができた。
このうす汚い部屋で何をされても、どんなことを言われても証拠が残らないように。
(最近はよくリークされているからね)
ボクはポケットにICレコーダーを忍ばせていた。
まだまだ甘いな、日本の警察は。
(ボクだったら、ポケットを全部裏返しにさせるが)
今の時代、いくらでも録音する手段はある。
ボクは日ごろからアメリカドラマのFBIやCIS,NYPD,NCIS,LAPDをよく見ているので、
尋問室(interrogation room)にはマジックミラーやカメラが設置されている光景をイメージしていたのだが。
どこか薄汚れた田舎の殺風景な一室に期待を削がれてしまった。
(もっとかっこよくスマートにやってほしかった)
野暮ったい服を着た担当刑事も
強面でメガネの奥から鋭い眼光は放っていたものの、
権威風を吹かせ、居丈高な様子にどこか無理があり、
何とか威厳を保とうとしているさまが見て取れてむしろ滑稽だった。
事の発端は
ボクの留守中にドアに挟まっていた
汚い字で、しかも赤ペンで書き殴られた一通のメモから始まった。
「沖縄から帰られたら連絡してください」と。
文面がどこか脅迫にも似た風情を漂わせていた。
沖縄に行っていることをよくご存じで。
(もちろんブログを見ればボクの動向は誰しも一目瞭然だが)
ただ、
余りの雑な書き殴り方にいたずらかと思い
110番して確かめた。
警察というところは、
密室で秘密裏にことが行われ、
組織全体が保身欲の塊なので110番で証拠を残す必要があると判断したからだ。
そうして昨日中央警察署を訪れた。
約束の時間に行くと、
担当刑事は廊下まで出てボクを待っていた。
そして、
一見猥雑な担当課を抜けて、
一番奥の個室へとボクを案内したのだ。
彼は、威圧するように鋭い目つきでボクを見据えた。
あたかも罪悪人(犯罪者)を見るように。
ボクは意図的に柔らかく包み込むように彼の目を見た。
同じような目つきで睨み付けるのではない。
対抗意識を持ってはいけない。
向うには立場上威厳を保たさせなければならない。
(赤っ恥をかかせてはいけない)
その優位性を保たせながら、
腹を据え、慈悲の眼差しでやんわりとかわせばいいだけのことだ。
(ここでも瞑想の極意が生かされる)
ただ、目線は外してはならない。
目をそらせたり、伏せたりしては
敗北や後ろめたさを露呈し、相手の思う壺となる。
彼は、ボクのブログのコピーを何枚となく持っていた。
「聴くところによると
あなたはなかなか有名な人らしいですな」
誰かしらチクったやつがいる。
ボクは
「は??」と、
桃井かおり風にとぼけた返事を返した。
悪名高いのだろう。
とうとう警察にまで知れ渡ってしまったか。
(今はマスコミにも出ず、
ひっそりと暮らしているつもりなのだが)
つい笑ってしまった。
桃井かおりが
「私を憎んでる女がこの世にいると思うと高笑い!」
という言葉を思い出したからだ。
ボクは彼女の倦怠感を伴う天然キャラでありながら
どこかふてぶてしく開き直った感じがあるにもかかわらず
なぜか憎めない所が大好きなのである。
それに、決して美人とはいいがたいが、
ゾクッとするような異様な色気を感じさせるところがまたたまらない。
「あなたはいろいろと事業等されているようだが、
経歴に傷がついたら困るでしょう」
刑事は相変わらずボクを睨み付けたままそう言った。
またまた
「は???」だ。
(お世辞までにも相手に気遣う気持ち?があるなんて)
いえいえ、もう十分傷はついております。
ここまで傷だらけになれば、
むしろ傷と言うより「箔」がつきます。
と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
(むしろ「傷だらけの人生」になぜか憧れを持っている)
相手をコケにして煽る行為はこの際控えたほうがいい。
ボクはまだ手錠をかけられたり(ベッド上は別として)
ブタ箱にぶち込まれたことがない。
それもまたいい経験かなと今は思える。
(そうなってみたい衝動に駆られる妙な憧れがある)
相手はボクのブログを事細かくチェックしていた。
ついにここまでで来たか。
官憲による検閲?
戦争前夜?
日本もいよいよ中国並みになってきたようだ。
言論の自由はもはや消えうせたのか。
犯罪までにはいかなくても、
何かやましいことがないと言えば、ウソになる。
誰しも叩けば多少なりとも埃は出る。
白か黒かと聞かれれば
どちらでもない
グレーゾーンで生きている。
限りなく黒に近いグレーではあるが。
(そのほうが人生は面白い)
とりあえず20分ほどで無罪放免。
(当たり前だけど)
指紋はとられたけどね。
仮に起訴されても
ボクには十分勝つ自信がある。
(てか、起訴される理由はどこにもない)
彼は、ご丁寧にまた廊下の先まで見送ってくれた。
彼と並んで歩きながらボクは聞いた。
「もしチクった相手が直接ボクに何か言ってきたらどうしたらいい?」
「無視してください」
と言ってすぐ
「私に連絡ください」と彼は言い換えた。
その時彼の目は優しいオジサンのように柔和になっていた。
学生の時から権力には立ち向かってきた。
機動隊ともやり合った。
ゲバ棒で殴り合い、
投石をし、
火炎瓶を投げつけたこともあった。
向うは放水と催涙弾で応戦してきたが。
キューバへの亡命未遂事件も起こし、
ビザが発給されなかったこともあった。
当局にマークされているのは
なにも今に限ったことではない。
もしもボクがとつぜん行方不明になったなら、
どこかで拘束され、監禁されているか、殺されたかと思ってください。
当局がこのブログを読んで
また呼び出しをくらうだろうから。
政治が真実を隠ぺいしているように、
治安当局も内部の不都合な真実は秘密裏にあることは明白である。
自然災害もさることながら、
何が起きるかわからない恐ろしい時代になったものだ。
【追記】
ボクはいっぱしの小説家を気取っている。
それで、
ボクのブログは基本的にいつもフィクションとしてとらえていただきたい。
つまり、内容のすべてが事実ではないということをご理解いただきたい。
脚色した字面をまともに受け取られ、過剰反応されると困るのである。
あくまでも誤解のないように。
担当刑事は
いきなりボクに聞いた。
「携帯は持ってますか?」
最初は何のことか理解しかねた。
「持ってますけど」
(むしろ今時持っていない人の方が珍しい)
そう答えると、
「この中に入れて下さい」
と部屋のコーナーの折り畳み椅子の上にある小さなプラスチックのケースを指さした。
なるほど、
撮影や録音をさせないためだな、とやっと理解ができた。
このうす汚い部屋で何をされても、どんなことを言われても証拠が残らないように。
(最近はよくリークされているからね)
ボクはポケットにICレコーダーを忍ばせていた。
まだまだ甘いな、日本の警察は。
(ボクだったら、ポケットを全部裏返しにさせるが)
今の時代、いくらでも録音する手段はある。
ボクは日ごろからアメリカドラマのFBIやCIS,NYPD,NCIS,LAPDをよく見ているので、
尋問室(interrogation room)にはマジックミラーやカメラが設置されている光景をイメージしていたのだが。
どこか薄汚れた田舎の殺風景な一室に期待を削がれてしまった。
(もっとかっこよくスマートにやってほしかった)
野暮ったい服を着た担当刑事も
強面でメガネの奥から鋭い眼光は放っていたものの、
権威風を吹かせ、居丈高な様子にどこか無理があり、
何とか威厳を保とうとしているさまが見て取れてむしろ滑稽だった。
事の発端は
ボクの留守中にドアに挟まっていた
汚い字で、しかも赤ペンで書き殴られた一通のメモから始まった。
「沖縄から帰られたら連絡してください」と。
文面がどこか脅迫にも似た風情を漂わせていた。
沖縄に行っていることをよくご存じで。
(もちろんブログを見ればボクの動向は誰しも一目瞭然だが)
ただ、
余りの雑な書き殴り方にいたずらかと思い
110番して確かめた。
警察というところは、
密室で秘密裏にことが行われ、
組織全体が保身欲の塊なので110番で証拠を残す必要があると判断したからだ。
そうして昨日中央警察署を訪れた。
約束の時間に行くと、
担当刑事は廊下まで出てボクを待っていた。
そして、
一見猥雑な担当課を抜けて、
一番奥の個室へとボクを案内したのだ。
彼は、威圧するように鋭い目つきでボクを見据えた。
あたかも罪悪人(犯罪者)を見るように。
ボクは意図的に柔らかく包み込むように彼の目を見た。
同じような目つきで睨み付けるのではない。
対抗意識を持ってはいけない。
向うには立場上威厳を保たさせなければならない。
(赤っ恥をかかせてはいけない)
その優位性を保たせながら、
腹を据え、慈悲の眼差しでやんわりとかわせばいいだけのことだ。
(ここでも瞑想の極意が生かされる)
ただ、目線は外してはならない。
目をそらせたり、伏せたりしては
敗北や後ろめたさを露呈し、相手の思う壺となる。
彼は、ボクのブログのコピーを何枚となく持っていた。
「聴くところによると
あなたはなかなか有名な人らしいですな」
誰かしらチクったやつがいる。
ボクは
「は??」と、
桃井かおり風にとぼけた返事を返した。
悪名高いのだろう。
とうとう警察にまで知れ渡ってしまったか。
(今はマスコミにも出ず、
ひっそりと暮らしているつもりなのだが)
つい笑ってしまった。
桃井かおりが
「私を憎んでる女がこの世にいると思うと高笑い!」
という言葉を思い出したからだ。
ボクは彼女の倦怠感を伴う天然キャラでありながら
どこかふてぶてしく開き直った感じがあるにもかかわらず
なぜか憎めない所が大好きなのである。
それに、決して美人とはいいがたいが、
ゾクッとするような異様な色気を感じさせるところがまたたまらない。
「あなたはいろいろと事業等されているようだが、
経歴に傷がついたら困るでしょう」
刑事は相変わらずボクを睨み付けたままそう言った。
またまた
「は???」だ。
(お世辞までにも相手に気遣う気持ち?があるなんて)
いえいえ、もう十分傷はついております。
ここまで傷だらけになれば、
むしろ傷と言うより「箔」がつきます。
と言いかけて、言葉を飲み込んだ。
(むしろ「傷だらけの人生」になぜか憧れを持っている)
相手をコケにして煽る行為はこの際控えたほうがいい。
ボクはまだ手錠をかけられたり(ベッド上は別として)
ブタ箱にぶち込まれたことがない。
それもまたいい経験かなと今は思える。
(そうなってみたい衝動に駆られる妙な憧れがある)
相手はボクのブログを事細かくチェックしていた。
ついにここまでで来たか。
官憲による検閲?
戦争前夜?
日本もいよいよ中国並みになってきたようだ。
言論の自由はもはや消えうせたのか。
犯罪までにはいかなくても、
何かやましいことがないと言えば、ウソになる。
誰しも叩けば多少なりとも埃は出る。
白か黒かと聞かれれば
どちらでもない
グレーゾーンで生きている。
限りなく黒に近いグレーではあるが。
(そのほうが人生は面白い)
とりあえず20分ほどで無罪放免。
(当たり前だけど)
指紋はとられたけどね。
仮に起訴されても
ボクには十分勝つ自信がある。
(てか、起訴される理由はどこにもない)
彼は、ご丁寧にまた廊下の先まで見送ってくれた。
彼と並んで歩きながらボクは聞いた。
「もしチクった相手が直接ボクに何か言ってきたらどうしたらいい?」
「無視してください」
と言ってすぐ
「私に連絡ください」と彼は言い換えた。
その時彼の目は優しいオジサンのように柔和になっていた。
学生の時から権力には立ち向かってきた。
機動隊ともやり合った。
ゲバ棒で殴り合い、
投石をし、
火炎瓶を投げつけたこともあった。
向うは放水と催涙弾で応戦してきたが。
キューバへの亡命未遂事件も起こし、
ビザが発給されなかったこともあった。
当局にマークされているのは
なにも今に限ったことではない。
もしもボクがとつぜん行方不明になったなら、
どこかで拘束され、監禁されているか、殺されたかと思ってください。
当局がこのブログを読んで
また呼び出しをくらうだろうから。
政治が真実を隠ぺいしているように、
治安当局も内部の不都合な真実は秘密裏にあることは明白である。
自然災害もさることながら、
何が起きるかわからない恐ろしい時代になったものだ。
【追記】
ボクはいっぱしの小説家を気取っている。
それで、
ボクのブログは基本的にいつもフィクションとしてとらえていただきたい。
つまり、内容のすべてが事実ではないということをご理解いただきたい。
脚色した字面をまともに受け取られ、過剰反応されると困るのである。
あくまでも誤解のないように。