書名 「ロシアン・ダイヤリー-暗殺された女性記者の取材手帳」
著者 アンナ・ポリトコフスカヤ 訳 鍛原多恵子
出版社 NHK出版 出版年 2007年 定価 2520円(税込み)
これだけ読むのに時間がかかった本も珍しい。つまらなかったということではなく、読むのが辛くなってきて、ちょっと中休みしないととても耐えられないという感じなのだ。2006年10月に暗殺されたポリトコフスカヤが2003年暮れのプーチンの再選選挙から、2005年8月まで彼女が書いたルポ・評論をまとめたものである。プーチン再選から下院選挙まで、プーチンが徹底的に独裁政治が確立する過程を、アンナは淡々と怒りを押さえながらレポートし続ける。スターリンをしのぐ勢いで圧政の体制を確立するなかで全く無力なかつての民主勢力のふがいなさ、それ以上にそれを許している国民の無気力さがなんとも痛ましい。アンナの深い絶望感が伝わってくる。これがこの本を読むつらさにつながっている。安易な希望の道を指し示すのではなく、現状を自分の目で見つめ、深めていくしかないところに、自らが認めている悲観主義がある。でもあとがきでも書いているように、「楽観的な予測」に甘んずることは、自分たちの孫への死刑宣告となるのだ。
先日衛星放送で再放送されていた英国BBC制作のドキュメンタリー「誰がアンナを殺したのか」で、暗殺の指示をしたとほのめかされている現チェチェン共和国カディーロフ大統領へのインタビューに、まさに死を賭して挑む姿には圧倒された。プーチンの威を借りて、暴力でチェチェンで好き放題やっているだけの狂気の男に、単身インタビューに臨むこと自体まさに無謀なのだが、彼女はそれを、怖いといいながら、立ち向かうのである。プーチンがいかにアンナのことを無視しようとしても、こうした死を賭してまで真実を求めて書こうとする記者の存在は見逃すことはできず、それで彼女は命を落とすことになった。
読むのには辛い本であるが、先日ここで紹介した「リトビエンコ暗殺」と同じように、読まなくてはならない本である。ひとりのジャーナリストが、命をかけてまさに決死の取材の中で、書いたものなのだから。ぜひ多くの人に読んでもらいたい本である。
お薦め度 ★★★★★
著者 アンナ・ポリトコフスカヤ 訳 鍛原多恵子
出版社 NHK出版 出版年 2007年 定価 2520円(税込み)
これだけ読むのに時間がかかった本も珍しい。つまらなかったということではなく、読むのが辛くなってきて、ちょっと中休みしないととても耐えられないという感じなのだ。2006年10月に暗殺されたポリトコフスカヤが2003年暮れのプーチンの再選選挙から、2005年8月まで彼女が書いたルポ・評論をまとめたものである。プーチン再選から下院選挙まで、プーチンが徹底的に独裁政治が確立する過程を、アンナは淡々と怒りを押さえながらレポートし続ける。スターリンをしのぐ勢いで圧政の体制を確立するなかで全く無力なかつての民主勢力のふがいなさ、それ以上にそれを許している国民の無気力さがなんとも痛ましい。アンナの深い絶望感が伝わってくる。これがこの本を読むつらさにつながっている。安易な希望の道を指し示すのではなく、現状を自分の目で見つめ、深めていくしかないところに、自らが認めている悲観主義がある。でもあとがきでも書いているように、「楽観的な予測」に甘んずることは、自分たちの孫への死刑宣告となるのだ。
先日衛星放送で再放送されていた英国BBC制作のドキュメンタリー「誰がアンナを殺したのか」で、暗殺の指示をしたとほのめかされている現チェチェン共和国カディーロフ大統領へのインタビューに、まさに死を賭して挑む姿には圧倒された。プーチンの威を借りて、暴力でチェチェンで好き放題やっているだけの狂気の男に、単身インタビューに臨むこと自体まさに無謀なのだが、彼女はそれを、怖いといいながら、立ち向かうのである。プーチンがいかにアンナのことを無視しようとしても、こうした死を賭してまで真実を求めて書こうとする記者の存在は見逃すことはできず、それで彼女は命を落とすことになった。
読むのには辛い本であるが、先日ここで紹介した「リトビエンコ暗殺」と同じように、読まなくてはならない本である。ひとりのジャーナリストが、命をかけてまさに決死の取材の中で、書いたものなのだから。ぜひ多くの人に読んでもらいたい本である。
お薦め度 ★★★★★
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