デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

暗殺国家ロシア

2007-07-21 00:37:58 | 買った本・読んだ本
書名 「暗殺国家ロシア-リトヴィネンコ毒殺とプーチンの野望」
著者 寺谷ひろみ 出版社 学研新書 出版年 2007 定価 750円(本体)

プーチンは、人気がある。今来ているカザフのローマはことあるごとにプーチンを絶賛する。ソチにオリンピックが招聘できたのもプーチンのおかげであると。
ただこのところ石油で急激に経済発展しているロシアの強硬路線に対して、不安を持ち始めている国も増えているはずである。今日の新聞でロシアの英国大使館員が強制的に退去を命じられていたということが報道されていたが、このすべてのきっかけとなったのは昨年11月に世界を震動させたリトヴィネンコ暗殺事件である。この新書は、このリトヴィネンコ事件まで至るマフィアと、政治家群像を描きながら、ベルゾフスキイとプーチンの対決を紹介する。とてもタイムリーな企画だと思う。ただ正直いって悲しくなってくるのはなぜなのだろう。それは政争しか描いていないからだと思う。ロシアの現況を伝えるにはこうした視点、切り口はあっていいと思う。ただどうしても虚しく思えるのは、結局世の中、マフィアと政権と、富豪とユダヤ人とで動いているという著者の視点なのだろう。急いで書いているし、ノンフィクションとしても不満がたくさん残る本である。週刊現代やポストの暴露記事を12回分まとめて読まされているそんな感じがした。めりはりがないし、正直後半は読み流していた。
誰がリトヴィネンコを暗殺したのかどうでもよくなってきた。それは「シロビッキ」というこの書のキーワードが象徴しているような気がする。力も持つという意味派生してできた言葉。権力に従属した人たちが世の中を動かしているという著者の史観がたぶん気に入らないのだと思う。ベラルーシのノンフィクション作家アレクシェービッチが追っているのは、シロビッキの反対にいる人「小さき人」の生き方ではないか。私が勝手に命名するのなら「スラビッキ」(弱い人々)のことを追うこと、それを大事にしたい。
ただ評価すべきは、この書の中でリトヴィネンコ暗殺の犯人を限定するところまで書いていること、そして来年任期を終えるプーチンの今後についてのはっきりと書いていることである。おそらくプーチンは、イワノフ、メドベージェフのどちらに大統領職を渡し、その失敗を見据えて、新たに大統領選挙に立候補するのではないだろうか。なんか安倍にやらして、自分の出番を密かに狙っているように見える小泉みたい。でもこんなことはどうでもいい。私は「スラビッキ」をこれからも追いかけていきたい。


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