書名 「歴史の影絵」
著者 吉村昭 出版社 中央公論社 出版年 1981年
このところ読みたい本がない。これはちょっと問題なのではと思う。いつもだと読みたい本、読まなくちゃいけない本が積んであるのだが、それが最近ない。こういうときには、ずっと前に買っておいた本を読むことになるのだが、今回は吉村さんのこの本になった。間奏曲として読む本としてはうってつけ、たぶんこの本が導線となって何冊か本を読むことになるだろう。
これは吉村さんの取材ノートの一種といっていいだろう。吉村さんの取材ノートとしては「戦艦武蔵ノート」が有名だが、このエッセイ集もひとつの作品ができるまでの過程にあった、実に様々な出来事についてまとめている。一番驚いたのはオランダオイネの娘が晩年に語り残した赤裸々な回顧談であった。この回顧談は吉村さんが何度も足を運んだ長崎図書館の中にずっと秘蔵されていたものだったという。母娘とも強姦され、やむを得ずそのとき出来た子供を育てるという実に辛酸な体験をしているのだが、こんな思い出を「忘却の川に投じてしまいたい」という語る高子の想いにそって、これを果たして世に出していいものかそんな迷いがあったはずである。しかしこの強姦した男との出来事を、ただ単に嫁に行きと書かれた書物があることに、吉村さんは怒りを感じ、あえてこれを公表する。事実の重み、これは吉村さんが一番大事にしていたことである。時に事実は凄惨な姿を見せる。終戦直前に事故で沈んだ潜水艦が、9年後に引き揚げられるという事件で、死体がほぼそのままになって残っていたというエピソードには驚かされる。その描写の迫力から、この事実の重さが伝わってくるのだが、ただそれだけでなく、吉村さんは死んで亡くなる寸前に書かれた遺書を紹介することで、死の直前というまさに究極の瞬間に対峙した崇高な人間の姿も浮かびあがらせる。
また本が読みたくなってきた。
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著者 吉村昭 出版社 中央公論社 出版年 1981年
このところ読みたい本がない。これはちょっと問題なのではと思う。いつもだと読みたい本、読まなくちゃいけない本が積んであるのだが、それが最近ない。こういうときには、ずっと前に買っておいた本を読むことになるのだが、今回は吉村さんのこの本になった。間奏曲として読む本としてはうってつけ、たぶんこの本が導線となって何冊か本を読むことになるだろう。
これは吉村さんの取材ノートの一種といっていいだろう。吉村さんの取材ノートとしては「戦艦武蔵ノート」が有名だが、このエッセイ集もひとつの作品ができるまでの過程にあった、実に様々な出来事についてまとめている。一番驚いたのはオランダオイネの娘が晩年に語り残した赤裸々な回顧談であった。この回顧談は吉村さんが何度も足を運んだ長崎図書館の中にずっと秘蔵されていたものだったという。母娘とも強姦され、やむを得ずそのとき出来た子供を育てるという実に辛酸な体験をしているのだが、こんな思い出を「忘却の川に投じてしまいたい」という語る高子の想いにそって、これを果たして世に出していいものかそんな迷いがあったはずである。しかしこの強姦した男との出来事を、ただ単に嫁に行きと書かれた書物があることに、吉村さんは怒りを感じ、あえてこれを公表する。事実の重み、これは吉村さんが一番大事にしていたことである。時に事実は凄惨な姿を見せる。終戦直前に事故で沈んだ潜水艦が、9年後に引き揚げられるという事件で、死体がほぼそのままになって残っていたというエピソードには驚かされる。その描写の迫力から、この事実の重さが伝わってくるのだが、ただそれだけでなく、吉村さんは死んで亡くなる寸前に書かれた遺書を紹介することで、死の直前というまさに究極の瞬間に対峙した崇高な人間の姿も浮かびあがらせる。
また本が読みたくなってきた。
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