デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

エノケン・ロッパの時代

2008-04-26 18:24:05 | 買った本・読んだ本
書名 「エノケン・ロッパの時代」
著者 矢野誠一  出版社 岩波書店(岩波新書) 出版年 2001年

澤田さんの「決定版私説コメディアン史」を読んでいたら、エノケンとロッパのことをもう少し知りたくなり、購入する。澤田さんが、戦後引き揚げてきて最初に見たのが「東京五人男」であったと印象的に回想していたが、本書の著者の矢野誠一も、国民学校五年生の時見たこの映画のことを鮮明に思い出す。戦後まもなく戦前の喜劇スターたちがすぐに舞台に戻り、喜劇を演じていたことにも驚かされたが、戦後初の正月映画として封切られたこの映画に、いかに笑い転げ、暖房のない映画館でどれだけ笑って汗をかいたということを読むときに、大衆がどれだけ笑いに飢えていたかを知る。だからこそすぐに喜劇の黄金時代が訪れたのだろう。本書では新書という限られた頁数のなかで、この時の二大スターであったエノケンとロッパの戦前の活躍、戦時中のふたりの対応のしかた、さらには戦後の黄金時代のあとの不遇まで、じっくりと書き込んでいる。
ふたりがしのぎを削りながら活躍した戦前の浅草、そして丸の内の劇場都市としての賑わいぶりも蘇ってくる。
演芸界に生きる人々の評伝を数多く書いている著者ならではの、なぞっただけでない、読みごたえのある評伝となった。それにしても文字でしかたどることができないが、戦前の浅草のオペラ、喜劇がいかに多彩であっただけでなく、どこかアヴァンギャルドな先駆性をもっていたことに驚かされる。
エノケン・ロッパのふたりとも戦後決して恵まれたとはいえない晩年をおくっているのがなんとも切ない。人々に笑いを通じて、生きる喜びを与えてきたのに、その報酬としてはちょっとむごいような気がする。でもそれがコメディアンの宿命なのかもしれない。
満足度 ★★★


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