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デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ロシアとは何ものか

2025-03-29 14:50:05 | 買った本・読んだ本
書名「ロシアとは何ものか」
著者 池田嘉郎     出版社 中央公論新社  出版年 2024

みすずの「読書アンケート」で多くの人がとりあげていて、気になり読む。
ロシアによるウクライナ侵攻が、明らかに他国を勝手に武力で侵犯した悪行であるにも関わらず、ロシアはそれを悪行とは認めず、正当性を主張する、それは単なる言い訳ではない、そう信じている、そこにある欺瞞性を暴くだけでは足りないもの、信じている裏付けとなっている歴史観のようなものがあるのではないか、そんな問いかけに答えているのが本書であるといっていいかもしれない。
著者はロシアとヨーロッパにおける根本的な違いを、ロシア史をひもときながら明らかにしている。ヨーロッパでの支配関係は、個々人から独立して、君主は法によって規制されるのに対して、ロシアは法ではなく物理的な力によって直接的な力関係によって規定される。これが現在まで貫かれているところに、今回のウクライナ侵攻を支える根拠があるということになる。
クルミヤ半島の歴史や革命のなかでのカデットの動向、特にナボコフの父や、ココシキナの手記、さらには満州侵出の日本との交差点など、さまざまな視点から切り込みも興味深いものがあった。
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人道の弁護士・布施辰治を語り継ぐ

2025-03-16 11:30:01 | 買った本・読んだ本
書名 「人道の弁護士布施辰治を語り継ぐ」
著者  森正・黒田大介    出版社 旬報社   出版年 2023

「石巻学」10号で布施辰治を特集しようと思ってから、いろいろ布施辰治に関する本を読んでいるのだが、本著は特集を組もうと思っている者にとっては、なによりもありがたい本となった。布施辰治研究者第一人者の森正と石巻で布施辰治研究会を最初に立ち上げた黒田大介のふたりが、布施を語り継いだ人々の業績をふりかえるなかで、さまざまな資料を次々に紹介してくれているのだが、これが実に緻密で、これらの本や資料を読み尽くした人だからこそ書ける、資料の本質を的を得て、短いコメントながら的確についているのに感心させられた。著者の森は、布施の評伝を書くために勤めていた大学を早期退職したというが、なぜそうしなければならなかったか、それは布施自身が書いたものがそもそも膨大なものであり、さらにその布施の業績を伝えてきた人たちが書いたものも膨大にあり、それらをとにかく読むだけでも大変な時間と労力を費やす必要があったからだろう。本書を読みながら、ノートやカードにとるなかで、布施研究の大きなガイダンスを手にすることができたと思う。そうしたガイダンスとしての価値だけでなく、本書はそれを語り伝えようとする森と黒田のほとばしるような情熱も沸き上がらせている。石巻学で布施辰治をとりあげることが、その情熱のタスキをしっかりと受け取るものにしなければならない、そう強く思っている。その意味でも読んでよかったし、素晴らしい一冊であった。
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馬術の歩んできた道

2025-03-05 18:07:32 | 買った本・読んだ本
書名 「馬術の歩んできた道」
著者  ウラディーミル・リッタワー(松井亮訳)   出版社 小西出版株式会社  
発行年 2023年

馬芝居や石川清馬、四戸三平のことを調べている時に、日本には馬術という曲馬とはまた違うものがあり、それについての本が限りなくあることに驚いた。馬術とはいったいなんなのか、これに巻き込まれる必要も時間もないのだが、やはり気になる。そんな時に出会ったのがこの本。障害馬術は、オリンピックの競技にもなっているが、この本はこの障害馬術にたどりつく馬術の歴史をたどるもので、当然サーカスとも重なってくるので、読むことになった。
西洋でもやはり馬術はかなり奥が深そうなことはわかったが、そのことはとりあえず無視して、サーカスとの絡みでみていくと、高等馬術は、アストレーが近代サーカスを確立していく前後から、サーカスの中で生きていたことになり、それはそれで高等馬術の発展に寄与していくことになる、馬術とサーカスは共存していたということは言えるのではないかと思う。ひとつの大きな発見は、アストレイが書いた本があったことと、ぞれがネットでも読めることだった。いよいよ心強流軍馬術を読むべき(古文書)時がきたのかもしれない。
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朝鮮民衆の社会史

2025-02-23 10:54:41 | 買った本・読んだ本
書名  朝鮮民衆の社会史-現代韓国の源流を探る
著者 趙 景達   出版社 岩波書店(岩波新書)   出版年 2024
これだけ読みごたえがある新書を読むのは久しぶりであった。なによりもなかなか歴史書では登場しない、奴婢(ぬひ)や芸能民、行商人、義賊、僧侶、妓生といって周縁の人々を視座の中心におくことによって、上からではなく下から構築された歴史が描かれているのに共感させられた。両班と賤民のあからさまな格差については韓国時代劇にもよく登場するが、本書ではこの賤民たちが、実に生き生きと描かれている。例えは日本でも下層の階級の民衆たちはいて、網野史学はこうした人たちを拾いあげてはきたが、ここまでは活写されてはいないのではなかったか。特に褓負商と呼ばれる行商人たちについては初めて知ったが、近世に至るまでかなり重要な役割を果たしていたことがよくわかった。女性への差別に関しては根深く、生活の中で、かなり劣悪な環境にあったこともよくわかった。さらにこうしたことを過去の事象ということでととめず、現代にも通底する情念的精神のありかも探っているところには感心させられた。例えば巫俗(ふぞく)(シャーマニズム)は現代まで民衆の中にまだ根付いていることは、前大統領パク・ウネと宗教家の娘の癒着が明らかにしている。韓国時代劇の面白さは、こうした民衆の姿も生き生きと描いているところにもあるなとも思った。
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読書アンケート2024

2025-02-22 14:45:37 | 買った本・読んだ本
書名 読書アンケート2024  識者が選んだ、この一年の本
編 みすず書房   出版社  みすず書房   出版年 2025

おなじみのみすず書房の読書アンケート、昨年から冊子として出版されている。毎年ここで気になる本を何冊も教えてもらっているので、得難い一冊になっている。去年だされた本だけでなく、去年読んだ本であれば、いつ出た本でもいいというのがひとつ味噌になっている。とはいえ、やはり去年出た本が中心、毎年何人もの識者がとりあげる本が何冊か出てくる。今年はハン・ガンの作品が並ぶかと思ったが、何人かにとどまった。その中で複数の人たちがとりあげたのが映画監督の濱口竜介の「他なる映画と」と、『連合の系譜」、どちらとも大著のようなので、たぶん読むことにはならないと思うが、ちょっと気になった。
読むかどうかはわからないが、書名をメモしたのは以下の本。
『西洋中世文化辞典』、『イルカと否定神学』、『虚史のリズム』,『スターリンの図書館』、『ゾンダーズ先生の小説教室』、『PCL映画の時代』,『痛みの東北論』、『ナチズム前夜』、『美術の物語ポケット版』、『ソヴィエトデモクラシー』、『歴史学はこう考える』、『ユーラシア東方の多極共存時代」『癲狂院日乗る』『中華を生んだ遊牧民』、『ロシアとはなにものか』
この中で、何冊の本を読むことになるのか・・・
ちなみに私もこの中で書かせてもらったが、選んだのはこの5冊でした。
『舟-北方領土で起きた日本人とロシア人の物語』、『ハルビン』、『外岡秀敏という新聞記者がいた』、『弁護士布施辰治』、『時の彼方へ 函館から』

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