最近の気になるニュース(人事労務編)

人事労務の情報を新聞報道等からチョイスしてお送りしています。さらに最近読んだ本やお気に入りの音楽を紹介しています。

残業1時間で死亡も労災 作業条件厳しく逆転勝訴

2006年09月29日 | Weblog
9月28日の共同通信ニュースによると、
 『船舶の荷物積み降ろし作業後に心臓病で死亡した港湾労働者の男性=当時(48)=の遺族が、大阪西労働基準監督署長に遺族補償給付などの不支給処分取り消しを求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁は28日、作業条件の厳しさなどから労災と認め、遺族の逆転勝訴とする判決を言い渡した。
横田勝年裁判長は判決理由で、不整脈など男性の持病について「心臓病発症寸前までは悪化していなかった」とした上で、死亡までの勤務状況を検討。
1週間の残業時間が約1時間で、直前の2日間が休日だったため「負担が重いと断定するのはためらう」としたが、死亡時が夏で直射日光を浴びて作業していたことから「前の週に比べ厳しい業務となった」と判断。業務により心臓病が発症したと認定し、不支給処分を取り消した。』
死亡前1週間の残業時間は1時間程度で、従来の基準では認められなかったケースです。労災を幅広く認めた判決で、今後もこういった判決が増えるのではないかと予想されます。
 労災が認められるということは事業主の責任ということです。事業主は、従来以上に作業環境や労働者の健康状態に注意を払う必要が出てきます。


法務省、外国人研修の廃止検討 「単純労働の抜け道」

2006年09月23日 | Weblog
9月22日の朝日新聞によると、
 『法務省の「今後の外国人の受け入れに関するプロジェクトチーム(PT)」は22日、「外国人研修・技能実習制度」を将来的に廃止する基本方針を発表した。単純労働者受け入れの抜け道となっているというのが理由だ。代わりの受け皿として、資格や日本語能力で限定した「特定技能労働者」の受け入れ制度を新設する。
 外国人研修・技能実習制度は当初の「研修」の目的を大きく離れ、人手不足の労働現場で、安い賃金で働く中国人研修生らが重要な労働力となっているのが現実だ。最近では研修手当や賃金未払い問題が後を絶たず、不正雇用の温床との指摘もある。
 PTは、同制度に代わり、単純労働とされる分野でも、資格などの技能評価制度を持ち、総合的な外国人受け入れ態勢が整っていると認められた分野に限って「特定技能労働者」として受け入れる制度を創設する案を示した。労働者に一定の日本語能力があることなども条件にする。
 日系人の受け入れの方法も変える。血縁関係だけを理由とした受け入れはやめ、すでに滞在している日系人でも、安定した仕事や日本語能力などが欠けている場合は在留資格を更新しない方針。』
外国人研修・技能実習制度とは、外国の労働者を国内に受け入れ、技術などを習得してもらう制度です。本来は途上国への技術移転という国際貢献が目的です。現在は最長3年の在留が認められており、05年には約8万3000人が研修で新規入国しています。外国人労働者を最低賃金で安く使いたい企業と日本でお金をかせぎ、本国へ送金したい外国人労働者の思惑が一致したことによって、この制度は一部を除き本来の技術移転の建前と大きく異なっています。こんな早くやめたほうがいいと思います。

国が控訴断念、労災認定へ 退職後自殺の元保育士

2006年09月20日 | Weblog
 9月20日の朝日新聞によると、
『過労のため兵庫県加古川市の保育所を退職した1カ月後の93年4月に自殺した元保育士岡村牧子さん(当時21)の父、昭さん(70)=神戸市=が労災認定を求めた行政訴訟で、「業務で精神障害に罹患(りかん)し、自殺に至った」と認めた今月4日の東京地裁判決に対し、国側は控訴期限の19日までに控訴せず、判決が確定した。加古川労働基準監督署は20日、労災認定手続きに入った。』
東京地裁の判決に以下のようなものでした(9月 4日朝日新聞より)。
『判決によると、岡村さんの長女牧子さん(当時21)は93年1月に加古川市内の無認可保育所に就職。通常の保育に加えて調理や延長保育で長時間労働が続き、労働時間は1日12時間程度に達し、休日出勤も多かった。3月末に入院し、「精神的ストレスが起こす心身症的疾患」と診断され退職。4月末、自宅で首つり自殺した。
 判決は、勤務状況について「通常の人なら誰でも精神障害を発症させる内容」と認め、入院から自殺までの間、不安感などうつに特徴的な症状が続いたことから、過労による精神障害が原因で自殺したと認定した。』
 これは、退職後の自殺で労災が認められた最初の判決だと思われます。勝訴は遺族の方の長期にわたる執念の結果でしょう。こういう長期に渡る裁判を見るたびに、「もっと早く判決が出ていれば遺族の苦しみも少しは和らぐのに」と、感じます。

厚生年金267万人未加入 事業所届出さず 総務省勧告

2006年09月16日 | Weblog
 9月15日の毎日新聞によると、
『厚生年金への加入が義務付けられている事業所の約3割が加入の届け出をしていないために、約267万人の従業員が同年金未加入と推計されることが15日、総務省の実施した行政評価調査によって分かった。加入漏れの従業員は、対象者約3516万人の7.6%と推計され、中小企業が多いと見られる。 厚生年金の加入義務があるのに届け出をしていない事業所は約63万~70万あると推計され、対象事業所全体の約3割に上った。将来、同年金を受け取れない従業員は、約267万人と推計されるという。
 社会保険庁は04年度、未加入の約10万3600事業所に加入するよう指導したが、そのうち届け出をしたのは、わずか2・5%。それでも、事業所へ立ち入り検査したのは、05年度でわずか11件にすぎなかった。このため、未加入事業所を把握する作業も、旧態依然の紙の登記簿を閲覧するなどの怠慢が原因と厳しく指摘。雇用保険と厚生年金のデータを照合できる電算システムを整備したり、すでに法務省が電子データ化している商業・法人登記情報を活用するなどの改善策を取るよう勧告した。』
この記事は、総務省が社会保険庁への対応の甘さを批判し勧告しています。社会保険庁は、そもそも未加入の事業所や従業員の数などを把握していません。未加入事業所を把握する作業も、旧態依然の紙の登記簿を閲覧するなどの怠慢が原因だと、総務省は指摘しています。「強制加入」といいながら厚生年金に加入していない事業所が多く、これを放置した社会保険庁はやはり怠慢といわざるを得ないでしょう。


フリーター、労働時間は正社員並み 残業代未払いも

2006年09月11日 | Weblog
9月 6日の朝日新聞によると
『フリーターも学生バイトも働く時間が正社員並みに長い人が多数を占める厳しい労働実態が、若者の労働NPO「POSSE」(今野晴貴代表)の調査でわかった。
 POSSEは、働く若者の実態を当事者の立場から発信しようと、中央大や一橋大、東京大などの学生や若年フリーターが結成。調査は6月と7月、15歳から34歳を対象に街頭で聞き取りをした。
 フリーターで1日7時間以上働いていたのは71%、週5日以上は73%と正社員並みの実態だった。1週間休みなしというフリーターと正社員が4%以上もいた。学生バイトは1日5時間以上が72%、週3日以上は70%と、長時間化が目立った。正社員の3割近くが1日平均11時間の労働時間だった。
 一方、残業代は、正社員男性の42%、女性の49%、フリーター男性の30%、女性の27%が不払いだった。社会人の7%が「払われているかどうかもわからない」と回答。給与明細の見方さえ知らない人も目立った。
 労働知識の不足も目立つ。労働基準法を正社員もフリーターも37%が知らなかった。社会保険もフリーターの65%、正社員の13%が未加入だった。ある正社員は、会社から「国民年金に入れ」と言われ、厚生年金に加入できなかった人もいた。』
 若年層の労働者は社会経験が浅く、そのため単純作業、簡易な業務をさせられていることが多く、正社員の場合でも、先輩社員の手伝いや補助業務が多い。これは明らかに上司の指揮命令なしにはできない業務である。上司の命令により残業をしているにもかかわらず、賃金が不払いということである。ある程度熟練で裁量が任されている中堅以上の社員なら話は別だが、こういった労働者の残業不払は問題である。労働者のモラル低下は必至です。労働者は、消耗品のように使用者の都合のいいようにこき使われているだけではないだろうか?
若者よ、今こそ起業しましょう。

厚生年金記録、ミス続々 訂正、年に25万件

2006年09月04日 | Weblog
9月3日の朝日新聞によると、
 『厚生年金の支給額算出のもとになる会社員の年金記録に多数の間違いがあり、年間の訂正件数は支給額に影響するものだけで25万~30万件にのぼることが、記録を管理する社会保険庁の調べでわかった。原因は会社側が提出したデータ自体の誤りか、社保庁側の入力ミス。大半は訂正されなければ年金額が減ったケースとみられ、気づかずに誤ったままの記録も多いとの指摘もある。社保庁は記録に不安を持つ人からの相談を積極的に受け付けている。
 会社員が将来受け取る厚生年金の額は、現役時代の給料と加入期間をもとに決まり、その記録は会社側が社保庁に届け出ている。
  社保庁は間違いの中身の分析まではしていないが、大手企業数社の人事担当者らによると、提出データの誤りや入力ミスで、加入期間に1カ月~数年間の空白ができるような例が多いという。月給の記録が1ケタ違ったという事例もあった。空白期間があればその分年金額が減る。
 社保庁によると、間違いは、会社が社員の保険料を納める時に社保庁側の算出額と食い違っているとわかったり、各地の社会保険事務所にいる社会保険調査官の調べで見つかったりすることが多い。自分の記録を確認した会社員が気づくケースもある。 』
 この問題は一概に社保庁だけが悪いわけではなりません。会社が、試用期間中の社員は社保に加入をさせなかったり、保険料負担を減らそうと基本給のみを報酬として届出したりするケースもあります。場合によっては、退職日を1日ずらして保険料を1ヶ月分安く済まそうとする会社もあります。いずれにしても自分の記録は自分で確認したほうがよさそうです。

「左遷でうつ病」労災認定 1人窓際、給料11万減

2006年09月01日 | Weblog
8月30日の朝日新聞によると
 『化粧品製造会社「コスメイトリックスラボラトリーズ」(東京)の元社員の男性(38)が「左遷人事が理由でうつ病になった」とした労災申請について、太田労働基準監督署(群馬県)が労災認定していたことが30日分かった。
申請を支援した神原元弁護士は「精神疾患の労災認定は過労が原因であることがほとんど。こうしたケースでの認定は非常に珍しく画期的だ」としている。
神原弁護士によると、男性は1996年に同社に入社し本社経理部で係長を務めていたが、2004年7月に突然、群馬工場(同県邑楽町)の総務部に転勤になった。男性側は「同僚だった社長の息子に嫌われたことによる左遷人事だろう」としている。
職場ではほかの社員の机とは離れた場所で、窓に向かった席に着かされた。給料も月約11万円減った。男性は転勤の2カ月後にうつ病になり、3週間入院。退院後の同年10月に本社に出向くと、解雇を告げられたという。』
 通常、労災が認められるのは、著しい長時間労働がある場合です。それ以外は定量化(客観的でない)できないため現実的に認定が難しいようです。従業員の席を移動し冷遇したうえ、給与を11万も下げたのは、露骨ないじめです。さらに休職もさせずにいきなり解雇とは、会社もあまりにも性急というか、配慮がなさすぎです。経営者失格!