最近の気になるニュース(人事労務編)

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「当直医も通常業務」 大阪高裁も労働時間認定 産科医の当直賃金訴訟

2010年11月17日 | Weblog
11月16日(火)の産経新聞によると、
『病院の当直勤務を時間外労働と認めず、一律の宿直手当しか支給しないのは不当として、奈良県立奈良病院(奈良市)の男性産科医2人が、県に平成16~17年の時間外手当(割増賃金)の支払いなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(紙浦健二裁判長)は16日、県に計約1500万円の支払いを命じた1審奈良地裁判決を支持、「当直勤務の全体が労働時間に当たる」として双方の控訴を棄却した。
 原告側代理人によると、医師の当直全般を労働時間と認めた判決は高裁では初めて。多くの公立病院では、業務の一部にしか時間外手当が支給されておらず、1審に続いて労働環境の見直しを迫る司法判断となった。
 判決で紙浦裁判長は、奈良病院で行われた16~17年中の分娩(ぶんべん)のうち、6割以上が当直時間帯だったと指摘。周辺の産科医不足から同病院に患者が集中し、土・日曜の当直を続けて担当すると、56時間拘束される場合もあったと述べた。
 こうした過酷な労働実態を踏まえ、割増賃金を支払う必要がない「断続的労働」には当たらないと判示。待機中であっても病院の指揮命令下にある労働時間にあたり、「当直全体で、割増賃金を支払う義務がある」と結論づけた。
 一方、救急搬送に備えて自宅待機する「宅直勤務」を時間外労働と認めるよう求めた原告側の主張については「医師らの自主的取り組みで、労働時間には当たらない」と退けたが、「現状のままでいいのか、十分検討すべきだ」と付言し、県知事や議会に実態調査と体制の見直しを促した。
 判決によると、奈良病院の産婦人科では、夜間や休日の当直を1人で担当。産科医2人は16~17年に、それぞれ約210回の当直についた。手術を含めた分娩への対処に追われ、通常勤務より負担感が重かったが、1回2万円の宿直手当しか支給されなかった。』
 自宅待機は、現行法でいくと労働時間にはあたりませんが、当直の判断は難しいと思います。これは個別にみていく必要があるかと思います。



東京都立2病院 未払い賃金1.3億円、医師らに支払い(朝日新聞)

2010年11月13日 | Weblog
11月9日の朝日新聞によると、
『東京都立の墨東(墨田区)、旧清瀬小児(清瀬市)=都立小児総合医療センターに統廃合=の両病院が、2006~08年度に医師への賃金未払いがあるとして東京労働局から是正勧告を受け、延べ196人に計約1億3650万円を支払ったことがわかった。都立広尾病院(渋谷区)も同様の勧告を受けており、都は未払い額を確定後、支払う。
 都病院経営本部によると、未払い賃金は墨東病院は常勤医師延べ96人分の約7117万円、非常勤医師同40人分の約4397万円。旧清瀬小児病院は常勤同26人分の約1637万円、非常勤同34人分の約503万円。深夜勤務の割増賃金や、非常勤の超過勤務手当などが未払いだった。
 時間外労働などは本人が記入し、管理職に提出する勤務記録を元に支給される。未払いは、記入漏れや管理職による勤務時間管理の不徹底が原因という。同本部は「急患の手術などに追われ、記録がかになった例が多い」と説明。勤務記録の徹底を各病院に指導し、常勤医師も増員したという。(岡雄一郎)』
記事の見出しだけみると、是正金額は確かに大きいので重大な違反のようにみえます。ただし、是正期間と是正人数と医師の給与水準(1時間あたりの単価が高い)を考えますと、超過時間もれ、深夜時間もれ自体は多くはないように思われます。
賃金債権の時効は2年です。この場合、「2006年~2008年度の未払い」ということは3~4年前ということになります。これはなぜ????

<東横イン>深夜勤務は危険だらけ 女性フロントが団交要請(毎日新聞)

2010年11月10日 | Weblog
11月8日の毎日新聞によると、
『大手ビジネスホテルチェーン「東横イン」(東京都大田区)の愛知県内のホテルで働く20代前半の女性フロント従業員が、男性客に客室に呼びつけられ、わいせつな行為を受けていたことが分かった。女性は会社が防犯ベルの貸与などの対策を怠っているのは安全配慮義務違反に当たると主張。労働組合に加入し、再発防止に向け団体交渉を求めた。
 女性が加入した全国一般東京東部労組(須田光照書記長)によると、女性は9月14日午前4時ごろ、男性客から派遣型風俗店とのトラブルを巡って「謝りに来い」と客室に呼ばれた。性交渉を迫られ拒否したが、衣類のボタンを外され、下半身を触られたという。
 同社のフロント従業員はほとんどが女性で、深夜は一人勤務。女性の深夜業務については、厚生労働省指針で▽一人勤務を避けるよう努める▽防犯ベルの貸与などの対策を取る--などが定められているが、会社側に配慮はなく、緊急時の対応方法も指導されていなかったという。
 8日に会見した女性は「第二、第三の被害を防ぐため、声を上げることにした」と話し、会社側に謝罪・損害賠償や再発防止策に関する団体交渉を申し入れたことを明らかにした。女性は暴行容疑で愛知県警に被害届を出している。【市川明代】』
 賃金不払や解雇がきっかけで労働組合へ加入するケースはよく聞きます。安全配慮義務違反で労働組合加入というは唐突な感じがしますが、一方で、会社側の対応がよほど悪かったのではないか、という想像もできます。この記事はさらっと読むと、会社だけに焦点があたっていますが、問題はこの男性の行為です。これはれっきとした犯罪です。それも見逃せない事実です。