最近の気になるニュース(人事労務編)

人事労務の情報を新聞報道等からチョイスしてお送りしています。さらに最近読んだ本やお気に入りの音楽を紹介しています。

労働時間規制の緩和、「導入しないで」 過労死遺族ら

2006年10月28日 | Weblog
10月24日の朝日新聞によると、
 『過労で心身を壊し労災認定を受けた人や亡くなった人の遺族らが24日、厚生労働省を訪れ、来年の法改正に向けて同省が労働時間の規制緩和策として検討している「自律的な労働制度」を導入しないよう要請した。遺族らは「労働時間規制がなければ過労死・過労自殺に拍車がかかるのは明らか。犠牲をこれ以上出さないでほしい」と、規制の厳格化や企業への罰則強化を求めた。
 この制度は、一定の年収以上の労働者を対象に1日8時間などの労働時間の規制を外す仕組み。ゼネコンに勤務していた9年前に心疾患で倒れ1級身体障害者となった千葉市の秋山光夫さん(56)は、倒れる前の残業が月160時間を超え休みは年4日だけだったという。「成果主義で働く側は『自発的に働く』ことを強制されているのが実態だ」と訴えた。遺族らはこれに先立ち連合本部に高木剛会長を訪ね、制度導入阻止を訴えた。高木氏は「時間外労働を放置したまま適用除外の対象を増やせというのは全く筋が通らない」と応じた。』
 企業は、リストラで正社員を減らし、パート・アルバイトを雇用し経費削減を図ってきました。企業全体の仕事量は変わらず、結局正社員の仕事量が増えることになりました。
 仕事量が増えれば当然労働時間も増えます。時短で週40時間になって10年以上経ちますが、総労働時間は増えているのではないでしょうか。完全週休二日といいながら土曜日に出勤している人もかなりいるのではないでしょうか。時短の効果がどれだけあったか疑問です。
 「自律的な労働制度」導入自体賛成ですが、当然その成果に見合った報酬(最低1000万以上ぐらいか?)の支払いは担保されるべきです。
問題は、事業主が加重労働を放置している事です。このまま導入すると、うつ病や過労死が増えるのは必死です。

フルキャスト、派遣スタッフ容姿登録

2006年10月22日 | Weblog
10月20日の朝日新聞によると、
 『人材派遣大手のフルキャスト・グループ(東京)が、派遣で働くために登録するスタッフの体形など容姿に関する情報を無断で、個人データとして保存していたことが19日、労働組合「派遣業関連労働者ユニオン」(派遣ユニオン)の調べで明らかになった。
 個人情報には、住所や連絡先のほか「風貌(ふうぼう)」の欄があり、「太め」「容姿老」「容姿優」「不潔感」「茶髪」「スキンヘッド」や、容姿に関連して「虚弱体質」「言葉使い悪」などの印象を含めて20のチェック項目があった。
 派遣ユニオンは同日、フルキャスト本社(東京都渋谷区)を訪れ、個人情報の扱いや労働条件の改善を求める要求書を提出した。関根書記長は「働く人を商品扱いする内容で、差別や人権侵害につながる」と批判している。』
 企業側が能力にかかわらず、「若くて綺麗な人をよこせ」とか、「茶髪はだめ」とか品定めをしてきているから、情報として保存しているのではないかと思います。
 ただ、心情的に「言葉づかいが悪い」あたりは認めてもいいような気がします。そんな人を使ったら派遣元の信頼にかかわりますからね。

上司に「ばかやろう」で解雇は無効 名古屋地裁

2006年10月20日 | Weblog
10月19日の朝日新聞によると、
 『静岡県浜松市の人材派遣会社「ラポール・サービス」を解雇された日系ブラジル人のダ・ローシャ・アントニオ・マルコスさん(35)=愛知県豊橋市=が、地位確認などを求めた仮処分申請に対し、名古屋地裁は19日、同社に解雇の無効と賃金の支払いを命じる決定をした。上村考由裁判官は「上司に『ばかやろう』と言ったことで解雇するのは酷だ」と述べた。
 決定によると、マルコスさんは6月、休暇の申請方法をめぐり、同社役員に「ばかやろう」と発言。2日後に「職場の秩序を乱した」などとして解雇を通知された。
 マルコスさんの発言について上村裁判官は、「部下として言ってはならないことは明らかで、懲戒の対象にはなり得るが、同社は別の部門に配置するなどの努力もしておらず、解雇権の乱用だ」と結論づけた。』
 この記事にはその前後の関係が書いていないので、なんともいえませんが、確かにこの一言だけで解雇するのは無理があります。ただ、過去にこの労働者と会社のトラブルは色々あったことは想像できます。でも「ばかやろう」は、直接言ったらさすがにまずいですよね。悲しいかな、部下は、上司がどんなに無能でもグッと堪えなければいけないのですね。

偽装請負 受け入れ側の責任も問え

2006年10月16日 | Weblog
10月15日の朝日新聞の社説を引用します。
 『 偽装請負がなぜ悪いのか。 派遣労働者は受け入れ先の企業が仕事を指示する。1年を超えると、受け入れ企業は直接雇用を申し入れなければならない。職場での安全管理の義務も負う。
 一方、本来の請負は請負会社が受注した製品を完成させ、メーカーに引き渡す契約だ。安全管理や社会保険への加入は請負会社の責任となる。
 ところが、請負会社が仕事を丸ごと請け負う能力がない場合、請負の名目で人だけを派遣する。これが偽装請負だ。
 派遣を請負と装えば、受け入れ側は使用者責任を免れ、低コストで利益を上げることができる。請負会社も人を送り込むことで利益を得る。どちらも得をする。損をするのは、安全管理や待遇がおろそかにされる労働者たちだ。
 納得できないのは、大阪労働局が処分の発表に際して受け入れ側の企業名を伏せたことだ。処分の対象ではないからだという。
 だが、もとはと言えば、受け入れ企業の依頼で労働者を集めたはずだ。低賃金で働かせ、使用者責任も免れたうえ、利益だけを得る。そうした企業が名前も公表されず、責任も問われないのはどう考えてもおかしい。
 偽装請負をなくすためには、請負会社だけでなく、受け入れ側の企業の責任を厳しく問わなければならない。 偽装請負のようなことを許せば、働いても働いても賃金が増えず、正社員になれない人たちが増えるばかりだ。 このような仕組みの温存が、格差を固定化することを忘れてはならない。 』
 まさに言い得て妙な社説です。派遣会社は、受入側の意向に沿う形で偽装請負を行わざるを得ない。受け入れ側は、いざとなったら知らない振りをする。結局、労働者は身分が不安定で何の保障もなく使い捨てられていく。企業は、「使い捨てられる労働者の受け皿になっている」といって正当化するが、そういう労働者を増やしたのはやはり企業のせいではないだろうか。企業にとって、労働者は道具でしかないのだろうか。


日野自動車、1100人偽装出向 労働局指導で派遣に

2006年10月10日 | Weblog
10月6日の朝日新聞によると
 『トラック製造大手の日野自動車が、実態は労働者派遣なのに出向契約を装う「偽装出向」で、人材会社から約1100人の労働者を自社工場に受け入れ、働かせていたことがわかった。東京労働局は職業安定法(労働者供給事業の禁止)に違反するとして指導。これを受けて日野は9月1日、すべての出向労働者を派遣に切り替えた。社会問題化している偽装請負と同様に、使用者責任をあいまいにしたまま、人員調整をしやすくする違法な手法がメーカーに広がっている実態が浮かび上がった。』
 出向というのは、通常、企業グループ内の人事交流や研修などを理由とする場合に行います。人材会社が営利事業として行うことは、労働者の人身売買につながりかねないため、禁止されています。日野自動車は、派遣を回避するため出向という手法をとったようです。派遣の場合、1年以上経過すると直接雇用を申し込む義務がメーカー側に発生するためです。

偽装請負で事業停止命令へ 大手コラボレートに厚労省

2006年10月01日 | Weblog
9月30日の朝日新聞によると
『実態は労働者派遣なのに、請負契約を装う違法な「偽装請負」を繰り返していたなどとして、厚生労働省は来週中にも、製造請負大手の「コラボレート」(大阪市北区)に対し、労働者派遣法に基づき、事業停止命令を出す方針を固めた。偽装請負に絡んで事業停止命令を出すのは初めて。コラボレートは、国内最大級の人材会社「クリスタル」(京都市下京区)グループの中核会社。コラボレートの事業停止期間は2週間程度とみられる。対象は、労働者派遣法に基づき届け出ている同社の全84事業所に及ぶ見通し。停止期間中、同社はメーカーなどに新しく労働者を派遣できなくなる。ただ、すでに派遣されている従業員は引き続き働くことができる。同社の従業員は今年8月現在3万4290人。グループ全体だと年商は国内だけで5000億円、従業員は11万人を超える。』
 コラボレート社は、各地の労働局から職業安定法違反や労働者派遣法違反があったとして行政指導を受けていたようです。さらに事前に労働局から報告を求められた際、事実と異なる内容の書類を提出していたようです。こうした違反の積み重ねが事業停止処分に結びついたようです。
労働局への指導を甘く見ると、このような事態になる例です。
製造業への派遣は1年と上限が決められており、1年経てば派遣先が直接雇用するしかありません。それを回避する方法として偽装請負を行っていました。大手製造業は違法を知りながら黙認していた可能性大です。力関係にモノをいわせ派遣元に偽装請負をやらせながら、いざとなったら「知らんぷり」ということでしょうか。