Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

全国高校サッカー選手権大会 隔世の思い

2010-01-24 | 五輪 U-20, U-17

録画していた決勝戦のビデオをようやく再生する事が出来た。この選手権が終わると3学期が始まってしまう…. 高校の時のそういう思いがよみがえる。

今年の選手権の決勝戦は青森山田高校と山梨学院大学付属高校。共に勝てば初優勝だ。関大一高との激戦を制して決勝戦に進出した青森山田は2年生ながら“超高校生”のボランチ柴崎君を始めGK櫛引君、CB中山君, 右サイドバック中島君、柴崎君とボランチを組む椎名君 FW 野間君の6人が昨年もレギュラー。柴崎君だけでなくGK 櫛引君の1年生からレギュラーだったのか、これじゃぁPK 戦でも苦戦するわけだわ.....
一方の山梨学院大付属は初出場。初出場で初優勝となれば1986年度の東海第一以来となるが青森山田相手に苦戦は免れまい、厳しい戦いとなった準決勝を勝ち抜き、昨年からの経験者が多いので青森山田の有利と私は予想していた。しかし山梨学院を引き入るのは67歳名匠横森監督。 韮崎高校等の監督を歴任した大ベテラン。晴れの舞台に選手の力を引き出す術は充分に持ち合わせた監督だ。
山梨学院、青森山田の校歌に続いていよいよ山梨学院のキックオフで決勝戦が始まった…

全国高校サッカーと云うと、関西人の私はいつも不公平を感じていた。
昭和51年度大会から首都圏開催となったこの大会、それ自体はいいのだけど、試合は首都圏各県で分散して行われるのだが常に東京都の代表校が入ったブロックは駒沢や西が丘で試合が行われ、埼玉県代表が入ったブロックは大宮競技場や駒場で行われ、神奈川県の代表校が入ったブロックが三ッ沢競技場で行われる等圧倒的に関東の高校に有利な会場の割り振り。千葉県の代表校が三ッ沢や駒場で試合を、東京の代表校が入ったブロックが大宮や西が丘で試合をしてもいいのではないか?と思って来たがそれは未だに変わっていない。 ある時専門誌がその件に就いて大会当局に問い合わせをした記事を読んだがその際の回答は“試合で使われる競技場は県営だから地元の県の為に使うのが原則…と云う回答にならない回答だったらしい。そのせいか、首都圏開催となってから6年連続で優勝校は関東の代表校( 1976 浦和南、77,79帝京、78,80 古河一、81 武南)だった。
それをストップしたのが1982年度あの“三羽ガラス”を擁した清水東高校だった。その時の決勝戦の相手が山梨県代表の韮崎高校で横山監督が指揮していた。
この時の大会を私は憶えている。大阪代表は摂津高校で、近所に住んでいた2学年下の同じ中学に通っていたサッカー部員が2人出場していた。摂津高校は残念ながらPK戦で神奈川県の旭高校に敗れたが関西の代表校では京滋(京都府と滋賀県)地区代表の守山高校が準決勝に進出。そこで当たった韮崎高校との一戦はまさに激戦。試合は1-1 ですすみ終了直前に韮崎高校はPKを得るがこの絶体絶命のピンチに守山のGKはこのPKを見事にストップし勝負は PK 戦にもつれ込んだ。残念ながら守山高校はPK戦で涙をのんだが、個人的には話題の多かった大会と覚えている。守山高校には後に大商大、日本鋼管、浦和レッズそして京都サンガで活躍し代表入りも果たした望月聡がいた。 私が大学時代、当時の守山高校のレギュラーの1人が入学して来て、結構色々話をしてくれた。
この大会で決勝進出を果たした韮崎高校はそれが4年間で3度目 ( 1979, 1981, 1982 ) の準優勝となった。

試合は私が劣勢を予想した山梨学院が開始から押す展開。横森監督は最初から飛ばして主導権を握れと指示したらしい。1分21秒には左SB伊東君がドリブルで突破しCKのチャンスを得るとショートコーナーで繋いで主将の碓井君がミドルを放つ。4分29秒にもボランチ宮本君がミドルを放つなど積極性を見せる。
青森山田も7分59秒野間君が左サイドを抉り中に入れるが走り込んだ柴崎君にわずかに合わない。9分40秒には相手のクリアーをそのまま成田君がミドルを放つがこれはバーの上。そろそろエンジンがかかり出すかと思うも 10分13秒には山梨学院、伊東君の素晴らしいスルーに走り込んだ佐野君がフリーで撃つがGK櫛引君がナイスブロック。そして11分、青森山田、遠藤君のドリブルを奪ったMF鈴木君がそのままふわりと相手ペナルティーエリア内にボールを入れるとそこに伊東君が走り込む。伊東君が横濱君がマークに入る前に後ろに戻すと碓井君がワントラップし椎名君と横濱君がマークに入る前に放ったショットがゴール右上隅に決まり先制点を挙げた。

    

開始から山梨学院、は中盤とDFラインの縦の動きが早くこの得点シーンも相手のカウンター攻撃に移るところを奪ったところから。そして再三見せいていた左からのサイド攻撃であった。両チームともこれまで今大会は常に先制ゴールを奪い試合の主導権を握って来た。青森山田は初めてリードを許す展開。しかも準決勝の関大一戦から3連続失点となった。
しかしこれで試合は面白くなると思った。だが相手ゴール前に迫るのは山梨学院ばかり20分には鈴木君から素晴らしいスルーが佐野君に通るがここはシュートまで持ち込めない。その直後青森山田はゴール正面で野間君にボールが渡るがあっという間に3人のDFに囲まれ後ろに下げられる。 山梨学院は一歩が早い上に少々距離があってもどんどんシュートを撃ってくる。 そして DF陣が前に出て来たところを2トップの伊東君、佐野君が裏を突いてくる。青森山田は相手左サイドの押し上げが良いので相対する遠藤君がなかなか前に出られない。関大一戦ではあれだけ出てこれたのに。椎名君は足の調子がいまいちなのか、この日は少しおとなし気味。
25分には左サイドの三田君からのクロスに野間君がDF関君と競りながら撃つがポストの左に外れて行く。 28分には中島君のドリブルから柴崎君が撃つがこれは相手DFに当たりGK松田君の正面に。さすがU-17 コンビだ。 
30分、山梨学院にアクシデントが。右サイドバックの井上君が怪我でベンチに下がらざるを得なく。 替って入ったのは3年生の渡辺君だった。 この時間を過ぎたあたりからようやく青森山田の攻撃が目立つようになる。MFの三田君と渡邉君が左右ワイドに開き更に両サイドバックのフォローが早くなった。 43分には中田君と競り合いながら走り込んだ野間君が突破しようとするところをGK松田君がエリアから大きく飛びだしスライディングを入れたプレーがファールそしてイエローカードが出され、いい位置で青森山田がFKを得る。 これを椎名君がゴール前に入れるが走り込んだ野間君と赤坂君にわずかに届かない。山梨学院がリードのまま前半が終わった。青森山田の同点ゴールは生まれるのだろうか….

  

後半に入って立ち上がりの48分、相手ボールを奪って繋ぎ三田君が粘って柴崎君に送りミドルを引き出すがボールはバーを越えて行った。後半は開始から青森山田が攻勢に出るかと思うが53分山梨学院、藤巻君のシュートがクロスバーを直撃する。 54分は佐野君のドリブル突破を中山君がたまらずファールで止めてFKを献上する。このFKを碓井君が直接狙うがGK櫛引君の正面に。56分、今度は青森山田がFKのチャンスを掴むが柴崎君のFKは壁に当たりそこから一気にカウンターを許す。最後は右サイドから平塚君がクロスを入れるが中島君が目いっぱいに伸ばした足に当たり中には入らなかった。 ゴール前には2トップの伊東、佐野の両君が迫っていた。

スタンドからは両校のサッカー部員を中心とした応援団からの大きな声援が飛ぶ。青森山田のこの日のスタメンは5人が2年生だが、スタンドには多くの3年生部員もいたと思う。それは山梨学院も同じだろう。高校野球やサッカー等の中継を見ていつも思うのだが学校に100人近くも部員がいる事は決していい事ではないと思う。最近はクラブチームに行く選手が急増するが、中高一貫の選手育成が出来る事ys指導者の事もさることながら部員数が適正であるということももう一つの理由かもしれない。 そして高校サッカーを取り巻く環境も激変していると聞く。 一昔前は高校選抜、大学生がユース代表、今のU-20 代表の中心だった。そこに日本リーグの20歳以下の選手が何人か混ざる程度だったが、当時の“会社事情”からなかなか社業を離れられない選手も多かった。 Jリーグがスタートし、Jリーグの下部組織が充実しそこから殆どの代表メンバーが選ばれる様になった。
ある時協会と少し関係のある人に“こう言った選手は学校生活をどうやって両立させているんでしょうか?”と訊いたが、返って来た答えは

 “行ってないんじゃないですか?” 

だった。訊けば通信課程を履修し高校卒業の“資格”を得る選手が多いそうだ。 そして“高校サッカー部員”でありながらその学校の通信課程を履修して単位をとらせる学校もあるらしい。 
矢板中央高校の様に高校総体が終わって受験に専念するために引退するのか、選手権の為に部活を続けるのか... という悩みや議論の方がずっと健全だと思う。
最近は体育課やスポーツ課を持つ私立そして公立高校が増えたが子を持つ親としてはちょっと心配になる話だった。 

青森山田はなかなかシュートチャンスが掴めない 68分 山梨学院は相手ゴール前でDF2人を引き連れヒールで戻したとところを碓井君がそのままミドルで狙うがGK櫛引君が防ぐ。 70分、リードしている山梨学院は佐野君を下げて U-18 代表の187cm2年生の加部君を投入する。 加部君はこれで全て途中出場を果たした事に。 その直後ゴール正面をドリブルで上がった加部君が右サイドの平塚君に送り再び中の伊東君に送られるが惜しくも合わない。 73分柴崎君のCKをGK松田君が弾くがこぼれ球を野間君が撃つがその強烈なショットは再び松田君がブロック。惜しい決定機だった。
73分青森山田ベンチは最初の交替選手星君を遠藤君に替えて投入する。これを機に青森山田が右サイドからの攻撃が活性化され攻勢に出る時間が続くが、ゴールが遠い。刻一刻と時間が過ぎる中、89分13秒、山梨学院は3年生の羽東を鈴木君に替えて投入する。羽東君は今大会2試合目の起用だが最後に3年生が入って私は“あぁ良かった。”と思った。 
45分を過ぎてロスタイムが4分と記される。この4分、両チーム感じ方は違うだろうなぁ…. 45分48秒後方から送られたボールが跳ねて長身の加部君が赤坂君と中山君の間を上手く長身の身体を使ってコントロールし最後は至近距離からシュートに持ち込むがここは櫛引君がファインセーブでストップ。同点ゴールの夢を繋ぐ。 
青森山田はボランチを椎名君の一枚にし柴崎君を前線に上げるが2人、3人と囲まれ中々ボールを出せない….. そして49分11秒、試合終了を告げるホイッスルが鳴り山梨学院が初出場初優勝を果たした。



青森山田は優勝へのプレッシャーが少しあったか….しかし上記した通りレギュラー選手5人が2年生。来年もチャンスは大いにあると思う。 

サッカーを続ける3年生もいれば辞める卒業生もいるだろうと思う。しかしベンチ入りできなかった選手こそ続けて欲しいと思う。 
柴崎君は鹿島アントラーズ入りが発表されたが高校はどうなるのだろう? 

多くの青森山田の選手達はロッカールームで悔し涙を流すだろう。そしてこのメンバーで戦える機会が終わった事を思うともっと涙が出るだろう。他校の選手達と同様に。
しかし全国優勝を果たした山梨学院の選手達も卒業時はそう思うのだ。

だが彼らに言いたい。 そう思える機会があったことが素晴らしいことだ。

これからの人生の方がずっと長い。だからこの日が君たちの支えになるのだ。