Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

FIFA Club World Cup 2009 Auckland City 有終の逆転勝利

2009-12-23 | Aussie & Kiwi

Wednesday 16 December 2009
Zayed Sports City Abu Dhabi
Auckland City FC 3 TP Mazembe 2

時計の針はロスタイム3分を過ぎていた。このままPK戦と思われた。しかし Grant Young と Daniel Morgan のパス交換から左サイドを突破し中に入れたボールを受けた Rici van Steeden のショットが Mazembe ゴールに突き刺さり劇的な逆転ゴールが決まった。Van Steeden はかつてニュージーランド代表 All Whites のメンバーでワールドカップフランス大会予選に出場している。32 歳のベテラン DF 。
3年前日本で開催された FIFA Club World Cup にも岩元輝雄と共に出場した経験を持つが今大会は3試合目にして初登場だった。
これまでニュージーランドのチームがこの大会で勝利を収めた事が無かったが今大会は帰国する前に Auckland City が2つも勝利を挙げた。28年振りワールドカップ出場を決めた All Whites に続く快挙だ。
“2-1とリードを奪ったMazembe は少しペースダウンをした。そして我々にはまだチャンスがあると思った。 正直PK戦に入ることも考えたが。 Atlante 戦では上手くいかなかったが、我々はただそれよりいいプレーをしたかった。たとえどんな結果になろうとも。我々は自信を持ってプレーできた。それは我々が説き続けた事だ。 同点に追いついた事には驚いていない。 それはチームがこの12ヶ月間でやって来た事と何らかわりない。だが結果はセンセーショナルなもので Auckland City Football Club の歴史にとって偉大な夜であった。“ 

試合後 Auckland City の Paul Sosa 監督はこう語った。そして ”2006年に日本で開催されたこの大会に出場した経験が大きかった。“

とも付け加えた。 12月16日に行われたFIFA Club World Cup 5位決定戦は開始から全くの Mazembe ペースだった。前半20分ごろまでボール支配率は Mazenbe 75 に対して Auckland は 25 だった。話題の GK Kidiba, DF の要、主将の Mputu の二人はコンゴ代表でワールドカップ予選に出場。
Auckland もDF Ivan Vicelich が現役 All Whites そしてワールドカップフランス大会予選では日本とも戦った元韓国代表の 李基珩と云ったワールドクラスの選手はいるのだが…. 試合の分岐点となったのは24分、カウンターに転じた Auckland は中盤から李基の素晴らしいスルーパスが 完全にフリーのDaniel Koprovcic に通りそのままドリブルシュートの態勢に入るところを GK Kidiba がPA の外に飛び出し Koprovcic に向かってスライディングに入る。この出会いがしらに放った Loprovcic のシュートが Kidiba の上腕に当ったの事でメキシコ人の Archunda 主審はハンドを取ったばかりか Kidiba にレッドカードを示す。この判定は Kidiba に気の毒であった。ボールが当たったのはハンドとも取れないところ、ハンドだとしても故意に手ではたいたとは思えないプレーだったが….. 失意の Kidiba が第二GK Bakula とタッチをして控室に下がる時の表情は…
1人少なくなったというよりも守りの重鎮 GK Mputu を失った Mazenbe は目に見えて劣勢となる。そして5分後の29分 Coombers が右サイドから前線にフィードするとJason Hayne がまだ試合に入り切れていないGK Bakula との競り合いからこぼれ球をMazenbe ゴールに流し込み先制ゴールを挙げる。
これで Auckland がこの試合の主導権を握るものと思われた。しかし後半に入り地力に勝る Mazenbe が盛り返し 60分に Kasongo のミドルシュート、67 分にはMputu の素晴らしいヒールパスを受けたKasusula が Auckland ゴールに捻じ込み Mazenbe が逆転をする。7日間で3試合目となる Auckland の運動量が徐々に落ちて来ていた。それは Abu Dhabi の暑さだけでなくアマチュアの体力の限界に近いものがあったのだろう。
だが Paul Sosa 監督が試合後述べた通りここから今度は Mazenbe の動きが落ちてくる。そして逆転されてから5分後の 72分、交代出場の Grant Young のショットを一旦は Bakula にセーブされるがこぼれたところをエリア外から Hayne が Mazenbe ゴールに蹴り込みこの試合2ゴール目を挙げて試合を振り出しに戻し最後の劇的な逆転勝利に結びつけた。 

“我々は素晴らしいプレーをした、そして前の Atlante 戦よりも自信を持ってゲームに臨めた。  3年前のこの大会に参加した時はこの最高の大会を生かせなかったが今回は充分に準備を進めて来た。それはこの大会に参加した事で学べた事であって、また今回より多くの事を学べた。 我々はただ自分達のスタンダードを高めたい。 FIFA Club World Cup は我々の地域では自分達のスタンダードを上げるのに素晴らしい大会だ。Auckland は今この経験から多くの事を学び更によいチームとなり再びこの大会に戻って来るだろう。“

そしてこの勝利で大会賞金 US$150万 を得た Auckland FC は地元国内リーグNZFC 7チームと分け合うとの事。
“この報償は多くの人達のハードワークによって得られたものだ。New Zealand の他のチームは我々を押し上げ、また我々は彼らを押し上げ、そういう切磋琢磨したチームがあってこその事だ。” この Sosa 監督のコメントを聞いて恐らく多くの地元関係者が胸を打たれただろう。

  

Auckland City FC: 3 (Jason HAYNE 29’, 72’, Riki VAN STEEDAN 90’+4)
TP Mazembe (Congo DR): 2 (Ngandu KASONGO 60', Kilitcho KASUSULA 67')

Auckland City FC
18. Paul GOTHARD (GK), 3. Ian HOGG (21. Riki VAN STEEDEN 75’), 4. Sam CAMPBELL, 7. James PRITCHETT, 5. Matt WILLIAMS, 6. Ki-Hyung LEE, 8. Chad COOMBES, 11. Daniel KOPRIVCIC (10. Grant YOUNG 46’), 15. Ivan VICELICH, 16. Jason HAYNE, 22. Adam DICKINSON (26. Daniel MORGAN 46’)
Substitutes not used: 1. Jacob SPOONLEY (GK), 9. Paul URLOVIC, 12. Simon EADDY (GK), 13. Alex FENERIDIS, 14. Keryn JORDAN, 17. Adam McGEORGE, 20. Greg UHLMANN, 25. Milos NIKOLIC
Coach: Paul POSA
Yellow cards: Daniel KOPRIVCIC 10’

TP Mazembe:
1. Muteba KIDIABA (GK) 3. Kilitcho KASUSULA, 8. Mabi MPUTU, 11. Mulota KABANGU (15. Dioko KALUYITUKA), 12. Bawaka MABELE, 13. Mbenza BEDI, 18. Luyeye MVETE (21. Aime BAKULA (GK) 26’), 20. Kazembe MIHAYO, 23. Sita MILANDU, 24. Amia EKANGA, 27. Ngandu KASONGO
Substitutes not used: 4. Miala NKULUKUTA, 5. Mukinay TSHANI, 6. A Mukok KANDA, 7. Mianga NDONGA, 16. Mbomboko NGOYI, 17. Lufuluabo KAYEMBE, 22. Mpinu IKAMBA (GK), 28. Kanyimbo TSHIZEU, 30. Basisila LUSADISU
Coach: Diego GARZITTO (FRA)
Yellow cards: Sita MILANDU 57’ Red cards: Muteba KIDIABA 24’

Wednesday 9 December 2009
Mohammed Bin Zayed Stadium Abu Dhabi 
Auckland City FC 2 Al Ahli FC 0

  

今年からついに日本を離れた “クラブ世界一決定戦“。オセアニアからは2006年以来3年振り出場となる Auckland City FC 。この前は Guest Player として岩本輝雄が参加した。今大会はJ League のチームが出場権を得られなかったので私は Auckland City FC の戦いぶりを最も楽しみにしていた。そして3年前と異なり経験も積みかなりやるのではないかと楽しみにしていた。
初戦の相手は開催国枠によって出場権を得た地元 Al Ahli 。結構なタレントを揃えたチームだった。 DF Saad Surour が今年地元で開催された FIFA U-20 のUAE 代表メンバー。Mohammad Qassim は28歳ながら2001年からUAE 代表メンバー。Onaid Khaleifa はUAE代表でこのワールドカップ予選には4試合出場した。18歳の Ahmed Khalil と Yousif Jaber , Mohamed Fawzi は今年の FIFA U-20 のメンバーで代表メンバー。 ワールドカップ予選にはKhalil は6試合出場 Jaber は韓国戦1試合のみの出場だった。Abbas はUAE 代表メンバーで2大会ワールドカップ予選に出場したがそれぞれ最終予選には出場歴は無かった。Salem Khamis も代表歴がある。 Mohamed Rashid は2003年地元開催の FIFA U-20 のメンバー。そして外国人助っ人を見るとHosny Abd Rabo が エジプト代表レギュラーで今年のワールドカップ予選では12試合に出場した実績を持つ。そして は日本ではお馴染み、甲府、ガンバ大阪でプレーしたブラジル人選手 Bare。入れ替え戦で柏レイソル相手に6ゴールを決めてJ1昇格を決めた後の泣きじゃくる姿は忘れられない。しかしこれだけの選手を揃えながら Al Ahli は今年の ACL では Group League を1分5敗の最下位で終わり決勝トーナメントには進めず、国内リーグでも今シーズンは8節を終了して3勝2分3敗。首位 Al Jazira から11勝点差の7位と苦戦している。ただこの“ホームゲーム”となる Auckland 戦はかなり楽観していたのではないかな…. テレビや日本の専門誌の解説を見ても Bare がいる事もあるが Al Ahli の事は書かれていても Auckland City FC に就いては誰も的確に解説しておらず、“フィジカルを前面に出した….” と同じことばかり書いている。
Auckland は前回は経験不足が露呈。 Al Ahly Sporting Club ( エジプト ) に 0-2, 全北現代に 0-3 と2連敗無得点で帰国したが。 今回はメンバーの経験値が違った。 GK Jacob Spoonley , DF Ian Hogg は北京五輪メンバーで3試合全てに出場した実績を持つ。DF 李基珩は1996年アトランタ五輪メンバー。翌年のワールドカップ予選にも日本戦を含めた10試合に出場。しかし翌年のワールドカップメンバーには残念ながら選ばれなかった。1995年香港でのダイナスティカップでは日本相手に2ゴールを決めた選手。 Chad Coombes, Jayson Hayne, Greg Uhlmann, James Pritchett, Paul Urlovic , Riki van Steeden , 南アフリカ人選手 Grant Young そして Keryn Jordan , Daniel Kopivic は3年前のこの大会経験者。Hayne は2007年にも Waitakere のメンバーとしてこの大会に出場。Pritchett は1999年地元開催の FIFA U-17 にも出場、今年のワールドカップ予選にも出場している。Kopivic は2007年から Waitakere FC に移籍し、何と3年連続この大会に出場することとなった。CB の Ivan Viclich は 現役 All Whites 。バーレーンとのプレーオフは2試合とも出場し連続完封、そしてワールドカップ出場権獲得の立役者の一人に。2003年の FIFA Confederations Cup の日本戦にも出場をしている。控え GK の Simon Eaddy も2007年 Waitakere のメンバーとして出場経験がある。 3年前とは国際経験が全く違う。(当たり前か?)

試合開始から14,856 人の観衆が集まった大会開幕戦は地元 Al Ahli がやや優勢に見えたが 1 トップの Bare, そしてAli Abas 、Hosny Abd Rabo 達の個人能力に頼る戦術はすぐにわかった。相対する Auckland の CB Viclich, Uhlmamm らが1対1でもしっかりとケアー。また李基珩が攻守に実によく効いていた。 それでも26分にはゴールやや正面から Hassan Ali が Hayne, Koprivcic らのマークを掻い潜って放ったミドルが Auckland ゴールを襲うが、わずかにポストの左に外れる。このまま前半は 0-0 かと思われた 45分右サイドを Hayne がドリブルで上がり中に入れると Al Ahli DF Surour の前を過ぎ更に戻った Mohammed の左から走り込んだ Dickinson がダイレクトで押し込み3年前に挙げられなかったゴールを挙げ、 Auckland が先制した。 その直後のキックオフから Al Ahli は Bare が Dickinson を背負いながらも放ったシュートは GK Spoonley に防がれるがそのこぼれたダマを撃った Salem Khamis のショットはクロスバーを越えてくれた。 完全に1失点もののシーンだった。後半に入ってもほぼ“完全アウェー”の Auckland は堂々とした戦い。1対1でも決して引けを取らない。得意の空中戦は完全に自信を持っている。66分にはPAの少し外から右サイドドバックの Coombes が強烈なミドルシュートをゴール右上隅に突き刺しリードを広げた。 その後も懸命の挽回をはかる Al Ahli だったが左サイドバックの Matt Williams そして中盤の  Adam McGorge と李基珩の二人が中盤をケアー。シュート数 Al Ahli の24に対してボール支配率 41, シュート数 16 の Auckland が歴史的な勝利を収めた。

Paul Rosa Auckland City FC 監督のインタビューから
選手達は大変ハッピーで恍惚としている。 我々は勝つとは思われていなかったが今夜は我々のものだった、我々は Al Ahli のスタイルを解っていた。ただカウンターを狙っていてその通りになった。 ゲームの入り方を解っていてチャンスも造る事が出来た。それはただ我々に果たされた問いで、幸運にも今日はそれが出来た。  Atalante は素晴らしい相手である、 Barcelona と Estudiantes を除けば彼らこそ最上流のチームだ。だから本当にタフな試合になるだろう。出来れは彼らのリズムを崩したい。

Al Ahli Mahdi Redha 監督のインタビューから
我々は大変失望している。 選手達のコンディションをベストにしようと準備してきたが今夜は力が発揮でき無かった。 我々はパスを上手くつないだり、ポゼッションをキープしたりできなかった。もし前半最後の Salem Khamis が失敗したチャンスをきめら得ていたら結果は違っていただろう。 我々は自分達のミスから学び前を向かねばならない。

Al Ahli FC 0 Auckland City 2 (Adam Dickinson 45, Chad Coombes 67) 

Al Ahli:
1-Yosif ABDALLA (GK), 3-Saad SUROUR, 6-Kahled MOHAMMED (31-Waleed AHMED 84), 8-Ali ABBAS, 9-BARE, 12-Hosny ABD RABO, 14-Bader YAQOOT, 16-Hassan ALI (23-Mehrzad MADANCHI 53), 20-Yousif JABER, 26-Salem KHAMIS, 29-Ali HUSSAIN (30-Mohamed RASHID 46).
Substitutes not used: 5-Mohammad QASSIM, 7-Onaid KHALEIFA, 10-Ahmed KHALIL, 15-Ismail AL HAMMADI, 21-Mohammed FAWZI, 25-Abdulla AHMAD, 33-Saif YOUSUF (RGK), 35-Abdulla ABDULRAHMAN, 50-ALSUWADI (RGK)
Coach: Mahdi ALI

Auckland City
1-Jacob SPOONLEY (GK), 3-Ian HOGG, 5-Matt WILLIAMS, 6-Ki-Hyung LEE, 8-Chad COOMBES, 11-Daniel KOPRIVCIC (14-Keryn JORDAN 71), 15-Ivan VICELICH, 16-Jason HAYNE (13-Alex FENERIDIS 85), 17-Adam McGEORGE, 20-Greg UHLMANN (4-Sam CAMPBELL 90+1), 22-Adam DICKINSON
Substitutes not used: 18-Paul GOTHARD (RGK), 7-James PRITCHETT, 9-Paul URLOVIC, 10-Grant YOUNG, 12-Simon EADDY (RGK), 21-Riki VAN STEEDEN, 25-Milos NIKOLIC, 26-Daniel MORGAN.
Coach: Paul POSA

    

                           
 続く