鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1322~原田マハ

2017-02-06 12:08:00 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、原田マハです。

原田マハの「デトロイト美術館の奇跡」を読みました。
相変わらず、美術モノ、感動モノを書かせたら上手ですね。

いつもならここでAMAZONの内容紹介を引用するところですが、今回は自分なりの内容紹介です。
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巨額の負債を抱えて財政破たんしたデトロイト市は、資産を売却することで、年金生活者の暮らしを守ろうとします。
財政破たんした市の土地や建物は、二束三文の価値しかありません。
市の資産として、最大の目玉となったのは、デトロイト美術館に収蔵されている多くの美術品でした。
美術品よりも市民を守るべき!と考える市民は多かったことでしょう。
そこに、ある年金生活者の老人が登場します。
彼は、美術館で展示されている「マダム・セザンヌ」に、亡き妻の面影を見ていました。
彼はこの絵を救いたい一心から、美術館の学芸員に500ドルの小切手を手渡します。
学芸員は、美術品の売却がほぼ決定的なことに絶望感を感じていましたが、老人の行動により、再び前を向くことになります。
老人から学芸員に手渡された祈りのバトンは、やがて美術ファンの裁判官の手に渡り、ついには国内の多くの財団を動かしました。
年金生活者の年金は守られ、デトロイト美術館の美術品も売却を免れたのです。
この出来事は、後に「デトロイト美術館の奇跡」と呼ばれたそうです。
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「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」に続く、原田マハらしい美術界を舞台にした感動ストーリーでした。
この物語で一番光ったのは、老人の妻です。
彼女は、パートの仕事を何度解雇されても、次の仕事を見つけ、常にやりがいを持って働きました。
そして夫が溶接工の職を解雇されて絶望したときには「私がパートで稼ぐから大丈夫」と元気づけました。
さらに「あなたにようやく時間ができたので、デトロイト美術館に一緒に行きましょう」と恥ずかしそうに誘います。
このように彼女は、前向きで明るい上、恥じらいを忘れない可愛いらしい女性でした。
そんな彼女が大きな病を得てどんどん痩せ衰え、亡くなります。
読むのがとても辛かったです。
老人が亡き妻の面影を見たという「マダム・セザンヌ」を守りたかった気持ち、よーく伝わってきました。

もう一人、美術ファンの裁判官も魅力的な人物でした。
あの追い込まれた状況で、彼が「年金生活者と美術館のどちらか一方ではなく両方を救う」という発想の転換をして、行動を起こしたことが奇跡をもたらしました。
美術品に対する愛情、柔軟な思考、行動力。
それらすべてを兼ね備えた人物が、その時、その場所にいたことに運命を感じます。
この人物はこの物語のキーマンでありながら、登場場面が少なかったことは少々不満です。

それにしても著者の作品は、相変わらず良い人ばかりが登場しますね。
そのため薄っぺらと批判する人もいますが、私はほっこりした読後感が大好きです。
またその内に読みたくなるだろうと思い、もうすでに次を用意してあります。
「総理の夫」
どうやら政治モノらしいので、さすがに悪い人が登場するのではないかと想像しています。
楽しみにしています。


コメント
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