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鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1302~中上健次

2016-12-21 12:31:17 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、中上健次です。

先日久しぶりに友人たちと読書談義をしました。
そのときに芥川賞作家をほとんど読んでいるという友人から紹介されたのが中上建次です。
名前だけは知っていましたが、芥川賞作家の作品は敷居が高くて、これまでほとんど読んでいません。
ただ、これまでも読書談義の中で紹介されて、読むようになった作家がいます。
今回も食わず嫌いをせず、とりあえず読んでみることにしました。
いろいろある作品の内、AMAZONで星が多かった「千年の愉楽」を選びました。
挿絵が横尾忠則、というのも選んだ理由です。
届いたのは1982年初版、吉本隆明の「中上健二世界論」という付録が付いていました。

さて読んでみると・・・。

芥川賞を受賞する作家らしく案の定、芸術性の高い文章。
文学的な表現という霞の向こうに、登場人物の人生が描かれています。
しかもひとつひとつの文章がとても長い。
あらら苦手なタイプ・・・。

唯一救いなのは短編集であること。
なかなか文章が頭に入ってこない、どうしよう?と困っている内に第1篇「半蔵の鳥」を読み終えました。
もし長編だったら、きっと途中で投げ出していたでしょう。

遅くなりましたがAMAZONの内容紹介を引用します。
=====
熊野の山々の迫る紀州南端の地を舞台に、高貴で不吉な血の宿命を分つ若者たち―色事師、荒くれ、夜盗、ヤクザら―の生と死を、神話的世界を通して過去・現在・未来に自在にうつし出し、新しい物語文学の誕生と謳われる名作。
=====

紀州熊野のとある被差別を著者は「路地」と名づけ、数々の作品を書いているそうです。
本書では、路地の「中本の一統」という一族の男たちの生き様を産婆「オリュウノオバ」の目を通して描いています。

色事師は恨みから命を奪われ、ヤクザは人生に絶望し自ら命を絶ちます。
南米に渡り行方不明になった者、アイヌの若者と無二の親友となるも炭鉱労働者たちとのトラブルで命を失う者など。
それぞれの短編の主人公たちが若くして命を失うのは「中本の一統」だからだ、と「オリュウノオバ」は考えています。
先祖の因果か?
無謀な人生を選ぶ性分(DNA)なのか?

いろいろ考えながら読み進める内、鴉天狗に身を裂かれて命を落とす者まで出てきます。
ああナルホド。
ここで内容紹介の「神話的世界」という単語と直接的につながりました。
本書は読み始めから「文学的な表現という霞」に包まれていて読み辛い、と感じていましたが、これは「神話的世界」を表現していたからなのですね。
だから、なかなか頭に入ってこなかったんだ、と考えることにしました。
(決して、単なる想像力不足の石頭だから理解が及ばない、とは考えないようにしました。)

読みながら、物語の空気感や世界観が誰かの作品に似ている、と感じていて、ついに思い至りました。
梨木香歩の「家守綺譚」を読んだときに、異界と現世が混在する世界観を受け入れるまでに時間がかかった、あの時と似ているのでした。
どちらも半ばを過ぎてから読みやすくなったような気がしたのは、著者独特の世界観にはようやく馴染んだからかもしれません。

とはいえもう一冊読む気はしません。
当初考えていたように私には高尚すぎました。
やっぱりもっと気楽に読める作品がいいな。


コメント
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