今回のお気に入りは、地球と生命の46億年史です。
本書はNHKカルチャーラジオ、科学と人間シリーズのテキストです。
書店で偶然見かけ、読むことにしました。
内容紹介を引用します。
=====
地球とその上に暮らす人類を含めた全生命が地球・太陽系の物質からできていますが、これまでの地球史は天文学や物理学、化学、生物学の分野で別々に研究されてきました。
宇宙創成以降の研究ですが、光合成や生命の起源、生命活動の仕組みを解明しようにも、生物学や化学だけでは謎がとけません。
専門領域を超え、全体を俯瞰した研究をまたなければ、全体像がつかめないのです。
東京工業大学の地球生命研究所の丸山茂徳教授は、俯瞰科学を提唱し、国際的な頭脳を結集し、137億年前から太陽系をはじめとした惑星系のなりたちと、生命誕生の謎を解き明かそうとしています。
これからの地球の姿まで見通してわかりやすく解説していただきます。
=====
テキストは、残念ながら「わかりやすく解説して」くれてはいません。
わずか数枚の図を参照しながら文章を読んでも、専門用語のオンパレードで理解が難しいので、ラジオを聴いている人がどれだけ理解できるかはおおいに疑問です。
と、低い評価をしましたが、内容は実に興味深く面白いです!
これはぜひテレビでやってほしい。
丸山教授による俯瞰科学の研究はまだ道半ば。
今後研究が進み、数々の推論が補強されることを願っています。
本書は読み進むと、えっ、そうだったの?ということが多かったです。
理科系おっさんが驚いた点をいくつか書きます。
・恐竜が滅びた原因
確かに巨大隕石の落下は最後のとどめになったが、滅びの傾向はその前から始まっていた。
当時はどうやら太陽系が暗黒星雲と遭遇していたそう。
それを通り過ぎるまでの1000万年間は太陽光が地表に届きづらい時代が続いた。
寒冷化や植物の活動低下により、恐竜の数はどんどん減少してしていった。
・全球凍結
23億年前と7~6億年前に地球は全球凍結している。
それはスターバースト(近傍超新星爆発)によるもの。
強力な銀河風により大量の宇宙線にさらされ、雲核形成・促進により日射量が減少し凍結した。
・生命の誕生場
自然原子炉間欠泉モデルを提唱している。
最初の生命は自然原子炉に付随してできた間欠泉内部で誕生したという説。
放射線量の高いマグマに熱せられてできた間欠泉源が地下にある。
そこに溜まったガスには、熱水と放射線の影響で有機化合物が生成される。
地表に噴出した有機化合物は陸と海の干満により脱水・加水が繰り返される。
やがてアミノ酸、タンパク質ができあがった。(生命の干潟起源説)
・生物進化の原因
いろいろな原因があるそうだが、とくにHiR(ハイアール)マグマの影響を提唱しています。
これは現在、地球上の3か所(※)でみられる。
そこでは高い放射線が放出されており、生物が通常の100倍のスピードで進化していることが確認されている。
ちなみに人類もアフリカの大地溝帯で誕生しており、脳容積が短期間に大きく進化している。
※アメリカのデスバレー、ガラパゴス諸島、アフリカの大地溝帯の3か所
・カンブリア紀以前の生物の状況
45億年前 地球誕生
35億年前 生命誕生
(激しい環境変化によりほとんどが死滅?)
6.4億年前 海綿動物の出現
5.8億年前 エディアカラ生物の出現
5.5億年前 硬骨格生物の出現
5.4億年前 カンブリア紀型動物の出現
5.2~5.0億年前 カンブリア紀の爆発的進化
・地球形成モデル
ABEL(エイベル)モデルを提唱している。
大気と海洋成分は隕石によってもたらされた、という説。
・地球生物の祖先
多種類誕生した原始生命の内、生き延びた2種類のコモノートが地球生物の祖先
古細菌は動物の祖先になった。
真正細菌は植物の祖先になった。
以上。(本当はまだまだいろいろ書いていました)
ちなみに先生いわく、現代は学会が1000もあって先端科学の融合が困難な時代だそう。
そのために俯瞰科学が必要とのこと。
なるほど。
ただし1000もの学会にある膨大な先端理論をすべて理解することが、はたして人間にできるのでしょうか?
そしてそれらを組み合わせ、新たな理論を生み出すとなると、何億何兆という組み合わせを検討することになります。
この膨大な作業は、コンピューターに頼る他ないのではないでしょうか?
コンピューターに頼りすぎると、映画「ターミネーター」「マトリックス」のようにコンピューターが人類を超える存在になることが心配になります。
絵空事のようですが、チェス、囲碁などの複雑なゲームで人間が勝てなくなり、最近ではコンピューターが小説を書くようになりました。
機械が感情を持つのはずっと先!といいますが、感情が無くても機械が自己防衛本能を持つだけで、世界がオセロのようにひっくり返る危険を感じます。
俯瞰科学は興味深い学問ですが、間違えても主導権を機械に渡さないように注意してほしい、と願いたくなるおそろしい学問です。
この科学をおそろしく感じる気持ちって他でも感じます。
例えば生命科学の分野。
DNA操作により新しい生命を創造する実験が、いつしか人知を超える生命を生むのでは?と危惧しています。
また原水爆や原発の分野。
とくに放射性物質を安全に廃棄処分する技術がないのに、使い続けることに危惧を感じています。
科学は人々の幸せのためにあるもの。
そして地球環境を保全し、自然と共生するためにあるものであってほしい。
そんなことを考えさせてくれたテキストでした。
本書はNHKカルチャーラジオ、科学と人間シリーズのテキストです。
書店で偶然見かけ、読むことにしました。
内容紹介を引用します。
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地球とその上に暮らす人類を含めた全生命が地球・太陽系の物質からできていますが、これまでの地球史は天文学や物理学、化学、生物学の分野で別々に研究されてきました。
宇宙創成以降の研究ですが、光合成や生命の起源、生命活動の仕組みを解明しようにも、生物学や化学だけでは謎がとけません。
専門領域を超え、全体を俯瞰した研究をまたなければ、全体像がつかめないのです。
東京工業大学の地球生命研究所の丸山茂徳教授は、俯瞰科学を提唱し、国際的な頭脳を結集し、137億年前から太陽系をはじめとした惑星系のなりたちと、生命誕生の謎を解き明かそうとしています。
これからの地球の姿まで見通してわかりやすく解説していただきます。
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テキストは、残念ながら「わかりやすく解説して」くれてはいません。
わずか数枚の図を参照しながら文章を読んでも、専門用語のオンパレードで理解が難しいので、ラジオを聴いている人がどれだけ理解できるかはおおいに疑問です。
と、低い評価をしましたが、内容は実に興味深く面白いです!
これはぜひテレビでやってほしい。
丸山教授による俯瞰科学の研究はまだ道半ば。
今後研究が進み、数々の推論が補強されることを願っています。
本書は読み進むと、えっ、そうだったの?ということが多かったです。
理科系おっさんが驚いた点をいくつか書きます。
・恐竜が滅びた原因
確かに巨大隕石の落下は最後のとどめになったが、滅びの傾向はその前から始まっていた。
当時はどうやら太陽系が暗黒星雲と遭遇していたそう。
それを通り過ぎるまでの1000万年間は太陽光が地表に届きづらい時代が続いた。
寒冷化や植物の活動低下により、恐竜の数はどんどん減少してしていった。
・全球凍結
23億年前と7~6億年前に地球は全球凍結している。
それはスターバースト(近傍超新星爆発)によるもの。
強力な銀河風により大量の宇宙線にさらされ、雲核形成・促進により日射量が減少し凍結した。
・生命の誕生場
自然原子炉間欠泉モデルを提唱している。
最初の生命は自然原子炉に付随してできた間欠泉内部で誕生したという説。
放射線量の高いマグマに熱せられてできた間欠泉源が地下にある。
そこに溜まったガスには、熱水と放射線の影響で有機化合物が生成される。
地表に噴出した有機化合物は陸と海の干満により脱水・加水が繰り返される。
やがてアミノ酸、タンパク質ができあがった。(生命の干潟起源説)
・生物進化の原因
いろいろな原因があるそうだが、とくにHiR(ハイアール)マグマの影響を提唱しています。
これは現在、地球上の3か所(※)でみられる。
そこでは高い放射線が放出されており、生物が通常の100倍のスピードで進化していることが確認されている。
ちなみに人類もアフリカの大地溝帯で誕生しており、脳容積が短期間に大きく進化している。
※アメリカのデスバレー、ガラパゴス諸島、アフリカの大地溝帯の3か所
・カンブリア紀以前の生物の状況
45億年前 地球誕生
35億年前 生命誕生
(激しい環境変化によりほとんどが死滅?)
6.4億年前 海綿動物の出現
5.8億年前 エディアカラ生物の出現
5.5億年前 硬骨格生物の出現
5.4億年前 カンブリア紀型動物の出現
5.2~5.0億年前 カンブリア紀の爆発的進化
・地球形成モデル
ABEL(エイベル)モデルを提唱している。
大気と海洋成分は隕石によってもたらされた、という説。
・地球生物の祖先
多種類誕生した原始生命の内、生き延びた2種類のコモノートが地球生物の祖先
古細菌は動物の祖先になった。
真正細菌は植物の祖先になった。
以上。(本当はまだまだいろいろ書いていました)
ちなみに先生いわく、現代は学会が1000もあって先端科学の融合が困難な時代だそう。
そのために俯瞰科学が必要とのこと。
なるほど。
ただし1000もの学会にある膨大な先端理論をすべて理解することが、はたして人間にできるのでしょうか?
そしてそれらを組み合わせ、新たな理論を生み出すとなると、何億何兆という組み合わせを検討することになります。
この膨大な作業は、コンピューターに頼る他ないのではないでしょうか?
コンピューターに頼りすぎると、映画「ターミネーター」「マトリックス」のようにコンピューターが人類を超える存在になることが心配になります。
絵空事のようですが、チェス、囲碁などの複雑なゲームで人間が勝てなくなり、最近ではコンピューターが小説を書くようになりました。
機械が感情を持つのはずっと先!といいますが、感情が無くても機械が自己防衛本能を持つだけで、世界がオセロのようにひっくり返る危険を感じます。
俯瞰科学は興味深い学問ですが、間違えても主導権を機械に渡さないように注意してほしい、と願いたくなるおそろしい学問です。
この科学をおそろしく感じる気持ちって他でも感じます。
例えば生命科学の分野。
DNA操作により新しい生命を創造する実験が、いつしか人知を超える生命を生むのでは?と危惧しています。
また原水爆や原発の分野。
とくに放射性物質を安全に廃棄処分する技術がないのに、使い続けることに危惧を感じています。
科学は人々の幸せのためにあるもの。
そして地球環境を保全し、自然と共生するためにあるものであってほしい。
そんなことを考えさせてくれたテキストでした。