鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1058~昆虫放談

2015-05-20 12:23:14 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「昆虫放談」です。

今回取り上げるのは漫画家の小山内龍が昭和16年に書いた「昆虫放談」(1978年版)です。

本書は愛読書である小西正泰著「昆虫の本棚」で、とても面白い昆虫エッセイとして紹介していました。

・小西は電車通学中に「昆虫放談」を読み、吹き出すのをこらえるのが大変だった
・「昆虫放談」は戦中戦後何度も復刻され、NHKラジオで3度も朗読された
・先日読んだばかりの「ニッカ日出造バー」の著者、近藤日出造は小山内龍を天才漫画家と評した
・小山内龍は北海道に生まれ、空襲で東京を焼け出され、疎開先の北海道で42才の若さで亡くなった

「昆虫エッセイ」「近藤日出造」「北海道」と気になるキーワードが重なりました。
さらに北杜夫や手塚治虫のかつての愛読書だったということも知って、いよいよ読むことにしました。

本書の帯は北杜夫の書評。
面白いので引用します。
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もし文学に「懐かしのメロディ」といったものがあったら、「昆虫放談」は私にとってまさしくそういう本である。
下手な小説やエッセイよりよほどおもしろい。
子どもから大人まで、本書を読んで思わず笑わぬ人はおらぬはずだし、しかも何物かを与えてくれる本といえる。
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ついでにアマゾンの内容紹介も引用します。
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スズメ蜂に刺されて、ピョンピョンうさぎのようにはねたり、カブトムシを採集したり…。
虫好きの人にはたまらない話や、そうでない人にとってもなんともなつかしい景色が浮かんでくる、独特の語り口の昆虫文学の古典。
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昭和12年に昆虫採集をはじめたこと、蝶や蛾を幼虫から飼育し羽化させたことが、面白おかしく描かれています。
昆虫学者・石井悌博士の指導を受けながら昆虫の世界に入門していくという贅沢な体験記です。
大切に育てている幼虫を食べたクモを跡形もなく踏み潰したなど、子供じみた所業も正直に書いていて、今ならどうかな?と思いますが、本音が書かれていることで心情移入はスムーズにできます。
少年時代の北杜夫や手塚治虫が夢中になったことは本当でしょう。
これこそエッセイの王道ということでしょうか?

本書は戦前に書かれたため句読点がありません。
句点も読点も空白で表現しており、読み始めは違和感がありました。
それでも口語体で書かれているおかげで、すぐに慣れ、スラスラ読めるようになりました。

戦争直前のひっ迫した空気を感じさせない、のんびりしたエッセイに、筆者の心の強さを感じました。

ちなみに本職である漫画については、デッサン力不足でこれがプロ?という出来に見えました。
個性・味わいといえばそれまでですが、私には魅力がわかりませんでした。


コメント
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