元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「イヴォンヌの香り」

2006-07-24 12:56:49 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Le Parfum d'Yvonne)94年作品。「仕立て屋の恋」や「髪結いの亭主」などでいつも魅力的な美女を画面の中心に置くパトリス・ルコントの映画だが、その実物語の要素はヒロインを取り巻く男たち、特に中年男であることは周知の事実である。この映画もそう。1958年、レマン湖の避暑地で恋に落ちた男女。男はロシア貴族の血を引き、親の遺産で食いつないでいる無職の青年。女は自称・女優の奔放な若い美女。二人の濃厚なアバンチュールを、目のさめるように美しい風景と、時代感覚あふれる上品な衣装や小道具、ナイーヴな会話で綴る。

 当然、映画の主眼は若い二人ではなく、彼らと行動を共にする初老のゲイの紳士(ジャン=ピエール・マリエル)に置かれる。誰も相手にしてくれないホモの悲哀と老醜。それに耐えられず、若い恋人たちを見守ることによって必死に孤独をごまかしている、その惨めさと純情が泣かせる。ひと夏のラブ・ストーリーはやがて終わり、誰も居ない冬の避暑地で若いヒロインの面影のかけらを求める男二人の寂しい旅が、映画の序盤から時おり挿入され、ラストにはその悲しい後日談も語られる。ルコントの面目躍如だ。

 しかし、なぜか今回観終わって印象に残るのは、おっさん達のメランコリックな身の上話ではなく、ヒロインを演じるサンドラ・マジャーニのしなやかな肢体だけだったりするのだから、観客とは勝手なものだ。

 モデル出身で、グレース・ケリーの若い頃にチョイ似のマジャーニは、顔やパーソナリティは女優としてあまり好きじゃないのだが、とにかく完璧なプロポーションと脱ぎっぷりの良さで画面をさらってしまう。また彼女を捉えるカメラワークが実に下心丸出しで、男のスケベ心を満たしてくれる。ホテルの一室で主人公に背中を愛撫されるシーンも相当エッチだが、船のデッキでスカートはいたままパンティを脱ぎ、スカートが風でめくれて下半身がモロ見えになる場面はこの映画のハイライト。こういうシーンが満載されていながら、ラストでは“男の純情”に涙しろと言われてもそうはいかない。出来のいいソフト・コア・ポルノとしての印象が、肝心の主題を食ってしまった。ま、観ているこちらはそれでもいいんだけど(^_^;)。

 フランスのベストセラー作家パトリック・モディアノの同名小説の映画化。1時間半の上映時間は不必要に長い映画が目立つ昨今、実に貴重だと思った。

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