
(原題:IL CONFORMISTA)1970年イタリア=フランス=西ドイツ合作。ハッキリ言って、ワケの分からない映画である。鑑賞後に本作に関する評やコメントなどをチェックしてみても、まるでピンと来ない。そもそも、ストーリーさえ満足に追えないのだ。とはいえ、主要キャストの存在感はかなりのものだし、何より映像が素晴らしい。中身の考察は抜きにして“外観”だけを楽しむ分には、とても良いシャシンだと言える。
1938年のイタリア。大学で哲学を教えていたマルチェロ・クレリチは、友人で視覚障害者のイタロの仲介でファシスト党員になる。13歳の頃に殺人を犯していたマルチェロは、そのトラウマを克服すべく一般的なブルジョワ家庭の娘ジュリアと結婚して堅気の生活を送ろうとしたり、同時に党の活動にも積極的に参加するようになる。あるとき彼は組織から反ファシズム運動の幹部であるルカ・クアドリ教授をマークするように命じられ、クアドリが住むパリにジュリアを伴って赴く。ところがマルチェッロはクアドリの若い妻アンナに魅了されてしまい、ファシスト党員としての信念が揺らいでいく。
以上、関係サイト等を参考に物語のアウトラインを書いてみたが、実際映画を観てみると、この程度の粗筋でさえ上手く把握できない。それだけ描き方が散漫でメリハリに欠け、冗長に過ぎるのだ。脈絡の無いモチーフが次々と現われ、いったい何の冗談かと思う間もなく、別のシークエンスに移行してゆく。製作当時はこういう建て付けが“芸術的で先鋭的な作劇だ”と思われていたのかもしれないが、今観ると薄ら寒い限り。そもそも、主人公の内面さえシッカリと捉えられていない。
監督と脚本はベルナルド・ベルトルッチだが、世評の高さとは裏腹に、私は彼の作品を「1900年」(76年)以外良いと思ったことは無く、本作も同様だ。とはいえ、ヴィットリオ・ストラーロのカメラによる画面の造形はすこぶる美しい。そしてジョルジュ・ドルリューの音楽も絶品だ。
主演のジャン=ルイ・トランティニャンのパフォーマンスも悪くないが、注目すべきはジュリア役のステファニア・サンドレッリとアンナに扮するドミニク・サンダである。上質なヴィジュアルもさることながら、この2人によるダンスシーンは絶品と言える。その場面をチェックするだけでも、観る価値はあるのかもしれない。