元・副会長のCinema Days

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「刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン」

2024-01-12 06:07:35 | 映画の感想(か行)
 (原題:LUTHER: THE FALLEN SUN)2023年3月からNetflixより配信。イギリスの人気テレビドラマ「刑事ジョン・ルーサー」シリーズの映画化だということだが、私は元ネタを全然知らないのでキャラクター設定がよく掴めない。ただし、そこまで“一見さん”を突き放すような内容ではなく、サスペンス・スリラーとして最後まで観る者を飽きさせない程度のクォリティには達していると思う。題材は月並みとは言えるが、ダークな雰囲気は捨てがたい。

 ロンドン警視庁の刑事ジョン・ルーサーは犯罪者のプロファイリングには定評があり、過去に数々の実績をあげてきた。今回彼が担当するのは、頻発する誘拐殺人事件である。だが、捜査中にジョンは罠にはまって殺人容疑で逮捕されてしまう。早々に有罪が確定して刑務所に収監されたジョンだが、仲間の協力を得て脱獄し犯人を追う。もちろん警察も黙っておらず、ジョンは当局側の追跡をかわしながら凶悪犯と対峙する。



 この手の映画の常道である“犯人探し”をあえて外し、事件を起こしているのは大富豪のデイヴィッド・ロービーであることが序盤で明かされる。ところがこの犯人、金の力にモノを言わせて大々的な犯行組織を作り上げ、しかも本人直々に凶行に手を染めるという積極性(?)を見せる。つまりは犯罪シンジケートは主にターゲットを選出するために使い、実際に手を下すのは自分および数人の側近だけなのだ。そのあたりが実にサイコパスらしくて納得してしまう。

 ただし、犠牲者を見つけるのはネット上の闇サイトを利用し、閲覧者の悪意によって凶行が成就するという建て付けは意外性が少ない。誰でも考え付きそうだし、過去に「ブラックサイト」(2008年)などの好例もある。そもそも、これだけ犯人が狡猾ならばどうして最初からジョンや重要な証人を始末しておかなかったのか、疑問が残る。犯人のアジトが“ああいう場所”にあるのも無理筋だ。主人公は劇中で相当な深手を何度か負うのだが、大したダメージも見せずに数シークエンス後には全快してしまうのには苦笑してしまった。

 とはいえジェイミー・ペインの演出はスピーディーで、突っ込むヒマを与えずにドラマを進めている。ラリー・スミスのカメラによる殺伐とした映像も効果的。主演のイドリス・エルバは本国では人気俳優で、本作でもさすがの俺様ぶりを見せる。ただ、あまりタフガイではないのが不満だ(笑)。シンシア・エリヴォにアンディ・サーキス、ダーモット・クロウリー、トーマス・クームズといった脇の面子も悪くない。

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