元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「メキシコ万歳」

2017-10-20 06:31:18 | 映画の感想(ま行)
 (原題:QUE VIVA MEXICO!)ソ連の巨匠、セルゲイ・エイゼンシュテインが1928年にメキシコに渡ってから撮った作品だが、1931年に未完のまま製作が終了。フィルムがアメリカに残されて長らく埋もれたままであったが、72年にフィルムがソ連に返還され、撮影スタッフの生存者の尽力で当時の資料を基に79年に完成されたものだ。

 当初は4つのパートから成るオムニバスものだったが、第4話は未撮影である。第1話は当地の古い民謡をバックに結婚式が映し出され、植民地となる前のメキシコの平和な生活を表現している。第2話はスペインのコルテスに占領された植民地時代のメキシコが舞台で、神秘的な聖処女祭が描かれる。ただし、この2つのパートは風俗的な興趣はあるものの、映画としては面白くはない。しかし、第3話はそれまでの凡庸な展開を帳消しにするほど、ヴォルテージが高い。ここだけで観る価値は十分ある。



 20世紀初頭、ポルフィリオ・ディアスによる独裁制の時代。プルケ(火酒)を醸造する竜舌蘭の農場で働く農奴セバスチャンは、許嫁のマリアが地主に乱暴されことに激怒。仲間と共に地主に対して蜂起する。しかし、あえなく鎮圧され反乱分子は処刑されてしまう。マリアはセバスチャンの遺体を前に泣き崩れる。

 ユーリー・ヤクシェフの叙情的な音楽に乗って展開されるこの物語は、まるで神話のような格調高さと重量感に溢れている。展開も実にドラマティックだ。もちろん、作者はこのエピソードを通じて資本主義の矛盾と労働者革命の重要性というプロパガンダを提示したかったのであろうが、そんなイデオロギーの範疇を超えて、映画的面白さに満ちている。

 なお、エピローグとして伝統的な“死の日”のカーニバルを描き、死を笑い飛ばすようなメキシコ民衆の姿が紹介されているが、第3話のインパクトがあるから効果的に見える。とにかく、映画史上にその名を残すこの作家の功績を確認する意味でも、存在意義のある作品だ。

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