元・副会長のCinema Days

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人間は「小さな目的」のために生きている。

2012-01-08 07:13:27 | 時事ネタ
 最近読んだ小説の中に「人間は大きな目的のために生きているんじゃない。もっと小さな目的のために生きている」という一文があった。正直、かなり印象に残ったフレーズだが、よく考えてみれば当たり前の話なのだ。我々のほとんどが目の前にあることが気になり、それらを何とか片付けながら日々を送っている。そして最終的な目的は何かというと、家族の安寧であったり、自己の健康であったり、ちょっとした所得の確保であったり、そういうささやかなものだったりする。常に天下国家のことばかり考えて生きている人間なんていない。

 とはいっても、世の中には少数だが「大きな目的も考慮しながら生きなくてはならない人間」も存在する。それは、社会を動かす役目を負った者であり、言うまでもなく政治家とか官僚とか財界のトップとか、そういう肩書きを持つ人間だ。彼らが卑近な「小さな目的」にばかり拘泥してもらっては困る。大多数の「小さな目的のために生きている人間」のために、粉骨砕身してもらわなくてはならない。

 しかし、憂慮すべきことに「大きな目的も考慮しながら生きなくてはならない人間」が、人一倍「小さな目的のために生きる」ことに邁進しているのが実状だ。対して、多くの「小さな目的のために生きている人間」には分不相応な「大きな目的」を押しつけようとしている。まさに「あべこべの構図」が罷り通っている。

 最近の時事ネタで言えば、政府・与党社会保障改革本部が取りまとめている「税と社会保障の一体改革」とかいう案件など、その最たるものだ。要するにこれは、少子高齢化などを理由にドンドン増税しようという施策なのだが、将来の人口減少を見据えた税制のグランドデザイン構築それ自体は「大きな目的」以外の何物でもなく、一般庶民のあずかり知るところではない。ただし我々の視点からすれば、増税は確実に手持ちの「使える金」を低減させて「小さな目的」の達成を阻害することになるのは確実なのだ。

 それでもこの「税と社会保障の一体改革」が国家財政の状況を好転させて、個々の国民が目指す「小さな目的」に手っ取り早く貢献するのならば文句はない。しかし、不況時あるいは景気が安定していない時期における増税は、税収増には結びつかない。それは以前の橋本政権下で行われた3%から5%への消費税率アップの結果を見ても明らかだ。消費税1%は2兆5千億円に相当するので、単純計算すると税収は5兆円増えるはずだったが、実際には景気状況が急降下して税収減に陥り、今日に至るまで増税前の税収を上回ったことは一度もないのだ。もちろん、社会保障体制の充実も絵空事になってしまった

 今回の政府案の通り消費税率が10%に引き上げられれば、上昇率としては橋本政権時を上回ることになる。景気に対するダメージは前回の比ではなく、消費減退による税収減で国家財政がますます逼迫することは目に見えている。

 このような結末になることは、少し経済を分かっていれば誰だって予想できる。ましてや頭の良い官僚どもにとっては「自明の理」であることは言うまでもない。ならばどうして、わざわざ財政赤字が増えるようなことをするのか。それはつまり、権限増強による省益に他ならない。そして突き詰めて言えば、消費税適用の軽減措置を活用した自分たちの天下り先の確保である。

 私が接したことのある官僚の数など取るに足りないが、それでも彼らの頭の中にあるのは「天下り」のことばかりだというのは見て取れる。そして特に財務官僚などは、インフレを蛇蝎のごとく嫌っている。彼らが好きなのは(大多数の国民にとっては有害な)デフレだ。そもそも天下りだけで毎年12兆円以上が浪費されている。官僚は国民のことなど何も考えていない。自分たちの利権や省益しか頭にはない。つまりは自己の利益の追求という「小さな目的」のためだけに生きている。

 政治家にしても、現政権を担う者たちは確固たるヴイジョンなどは持ち合わせておらず、官僚の言い分に反論できない。挙げ句の果ては「どうやって政権の座に長くいるられか」という「小さな目的」だけに執心する始末。財界の連中も、法人税減税という「小さな目的」にしか興味がないようだ。

 一方、国民には「財政の健全化」と「社会保障の機能強化(の可能性)」という、日常生活レベルからすればさほど関係のない、曖昧なスローガンじみたものを押しつけて増税を正当化しようとしている。いうまでもなくこれらは、国の方向性を示そうとする「大きな目的」であり、日々「小さな目的」のために生きている一般ピープルにとって縁遠いシロモノである。

 我々が国家財政の帳簿を付けているわけではない。大事なのは、国家の財政ではなく「我が家の財政」だ。いくら御大層な謳い文句を示されても、とどのつまりは「増税」であり「家計圧迫」でしかなく、国民が重視する「小さな目的」の実現を妨害するものでしかない。どこぞの後進国ならともかく、大きな経済規模を持つ我が国の構成員に対して、それぞれが人生の最大目標である「小さな目的」の達成を邪魔する施策など、存在価値はない。

 歴史を紐解いてみても、国民が自分たちの「小さな目的」を捨象して御立派なスローガンが先行する「大きな目的」を重要視するようになると、ロクなことは起こらない。先の戦争だってそうだったじゃないか。

 とにかく、国民にとって大事なのは「小さな目的」の成就だ。まずはそれを実現しやすいようなマクロ的な環境を形成させることが為政者や官僚の役目であり、それこそが国民が政府に要求すべきことなのだ。大上段に振りかぶるように天下国家を論じる「大きな目的」なんてのは、二の次・三の次で良い。国民は「小さな目的」を阻害する施策に対しては、徹底して拒絶すべきである。

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