元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

岩波ホールが閉館に。

2022-01-14 06:29:16 | 映画周辺のネタ
 東京都千代田区神田神保町にあるミニシアター、岩波ホールが2022年7月に閉館することが発表された。同劇場は1968年に多目的ホールとしてオープンしたが、やがて東宝東和の川喜多かしこと、ホール総支配人の高野悦子が良質な映画を上映する運動“エキプ・ド・シネマ”を発足させた。74年のサタジット・レイ監督のインド映画「大樹のうた」の公開を手始めに、これまで上映された作品は271本にものぼる。

 しかしながら、昨今のコロナ禍で劇場の運営が困難になったらしく、とうとう閉館を決定したという。

 ただ、よく考えてみるとコロナ禍で業績が落ちたのはミニシアターだけではないはずだ。それでもシネコンは立派に営業しており、新規の開館も相次いでいる。これはやはり、ミニシアターの立ち位置というのが揺らいでいるからだろう。本来は単館系である作品も、シネコンで公開される例もある。つまりはシネコンとミニシアターの棲み分けが崩れつつあるのだ。

 また、若年層のミニシアター離れも巷間で言われている。そういえば福岡市のミニシアターも、観客で目立つのは中高年層ばかり。まあ、それで経営が成り立っているのだから問題は無いのだろうが、若者が気軽に入れるような雰囲気は希薄だ。ロビーが加齢臭で充満しているようでは(苦笑)、見通しが明るいとはとても言えない。

 そもそも、日本の映画館の入場料金は高い。約2時間も椅子に座っているだけで1,900円も取られるのだから、コストパフォーマンス(及びタイムパフォーマンス)は低い。それでもシネコンには大きなスクリーンと良好な音響システムが揃い、映画関連グッズの販売も実施されている。映画鑑賞に関してプラスアルファの付加価値があるのだが、ミニシアターはそのあたりが覚束ない。

 それに、若年層はあまり小難しいシャシンを好まない。もちろん、中高年も難渋な映画は避けたい向きが多いだろうが、良質な作品を求める層は存在する。対して何かと実生活で苦労している若者たちは、映画を観るときぐらいリラックスしたいのだろう。岩波ホールで上映されるような“考えさせるような映画”を敬遠するのは当たり前だ。

 だからといって、このままで良いとは思わない。シネコンで単館系作品を取り扱うのならば、逆にミニシアターでメジャーな作品を公開してもおかしくないわけで、立地さえ良ければ若年層をミニシアターに呼び寄せることも可能だろう。その映画館で上映している単館系作品に興味を持ってくれる若い観客も、皆無ではないと思う。

 さて、私は数回しか岩波ホールに足を運んだことが無いが、いずれも上映していた作品は満足できるものだった。特に、一時は東京国際映画祭の関連企画の会場になったことは印象深い。閉館は残念だが、54年間の長きにわたるスタッフの努力に敬意を払いたい。

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