元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マカロニ」

2019-08-25 06:31:35 | 映画の感想(ま行)
 (原題:Maccheroni)85年作品。観た後に、とても温かい気分に浸れるヒューマンコメディだ。設定は面白いし、キャストも名人芸。そして、人生の後半戦に突入してどのように身の振り方を考えるか、その点でも大いに参考になる。

 仕事でナポリに滞在することになったアメリカの航空機メーカーの副社長ロバートは、実はイタリアに対してあまり良い印象を抱いておらず、しかもヨメさんとは離婚寸前で、鬱屈した日々を送っていた。ある日、アントニオという男が彼を訪ねてくる。アントニオはロバートが40年前に従軍してナポリに赴任していた際、恋仲にあったマリアという娘の兄であった。



 後日、ロバートがアントニオが住む地域に足を運ぶと、何と誰もがロバートのことを知っている。戦後アントニオは妹を慰めるため、ロバートになりすまして彼女に手紙を書き続け、その内容というのが世界を股に掛けて活躍する冒険家としてのロバート像だったのだ。それは近所でも評判になり、ロバートはちょっとした英雄に祭り上げられていた。驚き憤慨するロバートだったが、アントニオの温かい人柄に触れるうちに、この“虚構の話”に乗っかることを決める。

 口八丁手八丁のアントニオに閉口しながらも、一芝居打つことに楽しみを見出してゆくロバートの、内面の変化が過不足無く描かれている。若い頃は一本気で純情だった彼も、初老に差し掛かると世間のしがらみに神経をすり減らし、偏屈なオヤジになり果ててしまった。

 だが、年を重ねても心の中に若さを持ち続けているアントニオと出会うことにより、自分も夢のような“物語の世界”に生きてみたい、と考えるようになる。そして終盤には、ナポリの犯罪組織と対峙して活躍するという、思わぬヒーロー的なはたらきをする場面まである。やはり人間、いくつになっても自身の物語を演じる気概さえあれば、前向きになれるものだ。

 エットーレ・スコラの演出は名人芸で、各エピソードは展開が読めるものばかりながら、語り口の上手さで見せきっている。主演のジャック・レモンとマルチェロ・マストロヤンニのコンビネーションも抜群で、笑いとペーソスを盛り上げることには抜かりがない。ナポリの空に鐘の音が高らかに鳴り響く感動のラストまで、観る者を存分に楽しませてくれる。

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