元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

櫻田淳「奔流の中の国家」

2008-08-27 06:35:10 | 読書感想文

 9.11テロ以降の世界情勢は、それまで我が国で「保守論壇」という名で十把一絡げに捉えられてきた勢力の中に実は「保守ではない連中」が多数入り込んでいる事実をもあぶり出した。本書は「君」「臣」「民」の三つのキーワードから「立憲君主国家」としての日本の在り方を説いており、中で最も強調されているのが「臣(政治家)」の役割である。

 「政治とは、現実の拘束の下で“より小さな害悪”を選択する営みである」という結論は実に説得力がある。しかるに前述の「保守のようで保守ではない連中」とは「憂国」を気取りながら現実を無視し、(一方的な)反米という手垢にまみれたイデオロギー(観念の遊戯)にしがみついている者達であると喝破。9.11テロ直後に、いわゆる「反米保守」が左派と接近していた現状を見ても著者の指摘は鋭いと思う。「保守論客による保守批判」として本書の存在価値は低くはない。

 なお、作者の櫻田淳は1965年生まれ。東大大学院卒で国会議員の政策担当公設秘書などを歴任し、現在は大学講師であるが、脳性麻痺による重度の身体障害者である。他の著書で「真正の福祉政策を進める場合、人間の善意や温情をあてにするな!」とも説いており、なかなか骨のある論者であるのは確かだ。

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