元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ゼブラーマン」

2009-01-18 07:19:06 | 映画の感想(さ行)
 2003年作品。偶然にも憧れのテレビ番組のヒーローになってしまったダメ教師が、宇宙人との戦いを通し本物のヒーローとなるまでを描いたSFコメディ。監督は三池崇史だが、これはどう見ても脚本担当の宮藤官九郎の映画だろう。「ドラッグストア・ガール」や「アイデン&ティティ」などを観てもわかるのだが、宮藤官九郎という脚本家は「面白いキャラクターの創造」に関して卓越したものを見せる反面、肝心の「物語の辻褄を合わせること」についてはまるでダメである。この作品も同様だ。



 確かに哀川翔扮するダメ小学校教師の造型は面白い。うだつの上がらぬ日常から逃避するかのように「ゼブラーマン」のコスプレに没頭するあたりは涙を誘う(笑)。渡部篤郎のウサン臭い自衛隊員や大杉蓮の怪しげな教頭先生なんかも存在感たっぷりだし、鈴木京香に至っては「ゼブラナース」に変身するという大サービスぶり(爆)。

 しかし、作劇面が全然なっていない。そもそも「一般人が衣装を着ただけ」であったゼブラーマンが、どうしていつの間にかスーパーパワーを身につけ、果ては空まで飛んでしまう「本物のヒーロー」になるのか、その理由が完全にスッポ抜けている。エイリアンのデザインはいいとして、その行動規範も弱点もまるで不明。ギャグも数多く挿入されているが、物語自体に緊張感あふれる部分がないため、全然笑いが弾けない。ラストのバトルシーンも弛緩しきっている。主人公が本当に「変身」する必要はなく、コスプレのまんまで事件を解決すべきだった。

 ついでに言えば宇宙人も不要。柄本明演じる「変態カニ男」との追っかけっこを全編にわたってやってもらった方が数段楽しい映画になったはずだ。オフビートさが身上の三池の演出は、テンポとコンパクトさが要求されるこの手の映画には不向き。ダラダラしているところを切ればあと20分は短くできたはず。「冴えない中年男がコスプレして大活躍する映画」なら、小松隆志監督の「ご存知!ふんどし頭巾」の方がずっと面白いと思う。

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