goo blog サービス終了のお知らせ 

元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ウォーターボーイズ」

2012-06-18 06:36:05 | 映画の感想(あ行)
 2001年作品。矢口史靖監督の出世作だが、それまで私は彼を全然信用していなかった。デビュー作「裸足のピクニック」(93年)は愚作と言うしかなく、続く「ひみつの花園」(97年)も寒々としたギャグが並んでいるだけのカスだったし、第三作「アドレナリンドライブ」(99年)は観る気も起こらなかった。

 ところが、巷での評判で騙されたつもりになって観たこの新作には心底驚いたものだ。なんと、目のさめるような青春映画の快作ではないか。この監督、知らない間に大きな成長を遂げていたのだ。埼玉県の男子高校を舞台に、シンクロをやるハメになった野郎ども(妻夫木聡、近藤公園ほか)の奮闘を描くこの映画は、明朗青春スポ根ドラマのルーティン(王道)を一歩も踏み外さない。



 思えば矢口監督のスタンスってのは、本作より以前は“いじけたオタク”そのものだった。自分の頭の中だけで考えた“きっと面白いであろうネタ”をそのまま図々しく垂れ流し、それでいて“ウケないかもしれないな。まあいいけど”という自嘲と自己逃避と被害妄想を中途半端に散りばめただけの、実に観客をバカにしたものであった。

 この作品にも、シンクロを提案しながら早々に産休に入ってしまう真鍋かをり扮する女教師や、主人公たちを全然指導する気のない竹中直人演じるコーチの扱い方に、その“いじけぶり”が見て取れて不快な気分になりかかるが、“明るい青春映画”という娯楽路線に邁進する作品の方向性はそれらを破綻寸前で阻止する。

 過度にオタクなテイストを受け付けないメジャーな企画だからこそ、そしてそれに向き合った作者の開き直りこそが作品の成功に繋がったのだと思う。

 ラスト10分間のシンクロ演技は素晴らしい。あまりの見事さに涙が出そうになった。日本映画でもこんなに天晴れなスポーツ場面が作れるのである。主演5人の面構えも良いし、クラシックや歌謡曲等の選曲もセンスいい。まさに必見の映画だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする