元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アマルフィ 女神の報酬」

2009-08-07 06:28:02 | 映画の感想(あ行)

 主演の二人がダメだ。織田裕二はどう逆立ちしたってエリート外交官なんかに見えない。ああいう非・スマートな面相と一本調子な演技パターンは湾岸署の刑事ぐらいがお似合いであり、断じて知性が身上の職業人を演じてはならないと思う(少なくとも、共演の佐藤浩市には完全に位負けしていた)。

 相手役の天海祐希は、ルックスが派手でスクリーン映えはするものの実は相当な大根だ。無手勝流の役柄ならば何とかこなせるが、子供を誘拐されて苦悩する母親という今回の役柄は、まるで合っていない。内面的演技が不得手な女優をメインに持ってくる本作のプロデュースには大いに疑問がある。

 さて、主役二人を別にすれば出来自体は“思ったほどヒドくない”というのが正直な感想だ。本作のために原作を書き下ろしたのは真保裕一だが、彼の作風は大味で深みがない。しかし、物語面で破綻するようなことはなくプロットは愚直に組み立てられているという強みがある。この映画も同様で、感動したり衝撃を受けたりする場面は皆無だが、ストーリーラインに目立った矛盾点が見当たらないのでスムーズにラストまで引っ張ってくれるし、後味の悪さを感じることもない。もちろん、私のような手練れの映画ファンにとっては物足りないシャシンであるが、会場を埋めた平均年齢が高めの観客にとっては丁度良い“ミステリー加減”だと思う。

 加えて、全編イタリア・ロケによる風光明媚な観光名所の釣瓶打ちはお得感が高い。ローマの風景こそ“何を今さら”と思わせるが、箱庭のように美しい海辺の街アマルフィが出てくると、興趣はイッキに上昇する。一度は足を運びたいという気分にさせられ、観光映画の役割もちゃんと果たしてくれる。

 子供の誘拐劇がやがて日本政府が過去に隠蔽したスキャンダルに繋がっていく・・・・という筋書きは可もなく不可も無しだが、映画をあまり観ない層には“テレビの2時間サスペンスより少しはマシな印象”を抱かせ、マーケティング面では悪くない方策だ(劇中描かれるサラ・ブライトマンの独唱も効果的)。西谷弘の演出には特筆するべきものはないが、大きな減点に繋がる部分も少なく、作品の性格上これでOKだろう。

 欲を言えば、もっと大使館の実状に迫ってもらったら興味深い佳作になったかもしれない。戸田恵梨香扮する“見習い生”にスポットを当て、お役所仕事の習わしの数々に閉口しつつも奮闘する姿を追うと、地味ながらけっこう面白くなったとも思う。だが、一応“フジテレビ開局50周年記念作品”の表看板があるだけに、それは無理な注文かもしれない(笑)。
コメント
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