元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダーティハリー4」

2009-08-16 07:12:04 | 映画の感想(た行)

 (原題:SUDDEN IMPACT )83年作品。近作「チェンジリング」や「グラン・トリノ」の居心地の悪さを感じている間にふと思い出したのが本作だ。もちろん、ワルに対しては問答無用のオトシマエを付けるサンフランシスコ市警のはみ出し刑事ダーティハリーことハリー・キャラハンの活躍を描くシリーズ第四弾である。

 この映画が本シリーズの別の作品と違うところは、主演のクリント・イーストウッド自身がメガホンを取っていることだ。そのおかげで、ドラマ構築力に難があるイーストウッドの欠点がもろに出ている失敗作になっている。この映画の主人公は何とキャラハン刑事ではなく、ソンドラ・ロック扮する謎の女である。彼女のプロフィールと事件に関わる経緯を必要以上に紹介してしまったおかげで、前半部分なんてハリーはまるで狂言回しだ。

 だが、それも最後にハリーの大活躍を見せてくれればとりあえずの満足感は得られるのだが、この映画はまるで不発である。ソンドラの役どころは、実は数年前のレイプ事件で植物人間にされた妹の仇を討つために、レイプ犯どもを片っ端から血祭りに上げてゆく殺人犯だったのだ。当然、ラストは彼女とハリーとの大々的な対決になると誰しも思うのだが、しかし何と本作のクライマックスはハリーとレイプ犯どもとの対決だったのだ(呆)。

 彼らから返り討ちになりそうになったソンドラを、そこに颯爽と現れたハリーが助けると共にチンピラ達に引導を渡す。そして連続殺人事件の犯人をチンピラどもに押しつけ、彼女に対しては笑って許してしまうのである。つまりは“正義のためには法も秩序もクソ食らえ”と言いたいのだろう。こんなことを信じて疑わない作者の脳天気ぶりには脱力するしかない。

 おそらくイーストウッドの頭の中には、かような唯我独尊的なピント外れの倫理観が漲っていると思われる。こんなのに堂々と監督をさせるとロクなことにはならないはずだが、彼の第一線の演出家としての評価は確定しているようだ。世の中、間違っていると思う。
コメント
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