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980XTRについての一考察① ブレーキシステム

2011-08-26 22:56:00 | 自転車
レース×トレイル=∞(無限大)! 

ライダー・チューンド・コンセプト考察 
ブレーキシステム前編












やるやる詐欺にならなくて良かった……(苦笑)。

さて、ディスクブレーキから行きましょうか。春先には骨子ができていたのですが、かなり長い間放置していました(汗)。もう次世代型のXTやSLXも上梓しているというのに……。でもこの解説は基本的にすべての新型ブレーキに通じているので、勘弁してください。



今までの集大成とも言える970からがらりと変わった980。このブレーキはマスターもスレーブもホースもほかのどのシマノ製品とも互換性がありません。唯一可能なのはハブ、ローターだけです。DH選手はセイントのスレーブと組み合わせていますが、一般人は止めておきましょう。接続部分(インサートコネクター、オリーブなど)も独自のアルミ製を使っているので注意が必要です。似ていても長さやねじ切り部分が違うことがありますので、素直にシマノの指示に従いましょう。

初代の4ポットXTの時代から今のXTR以外の全てのディスクブレーキで互換性を保ってきたシマノとしては、結構な冒険です。一部レジン専用ローターもありますが、そこは除きます。しかしハブはともかく、ローターも新型のクラッドローターも他のブレーキに流用はしても、他のローターを980XTRに取り付けるのは止めた方が良いでしょう。ローターとパッドのフィンを合わせてアイステクノロジーですから。



今回のブレーキは、一目見たときから気に入っていました。それはトレイルの方です。XTRディスクブレーキで始めて搭載されたサーボウエーブ機能、ブレーキパワーをコントロールするモジュレーター。レースより1ミリ太い14ミリのブレーキレバー。

サーボウエーブはレバーを引き始めてからと、接触してからのレバーストロークを変えることでショートストローク且つ、制動力のアップ(+25%)を目指しています。これが意味があると言う人と無い人がいますが、私はある派です(笑)。ただタッチが結構柔らかくなってしまうため、状況により使い分けたいですね。

そしてレバー。これ実物を触ると全然違うことが分かります。結構驚きです。トレイルの方が従来からのシマノディスクブレーキのイメージに近いです。そしてレバーのしなりも少なく、トレイルどころかDHにも十分使える感がありました。

という感じで最初はトレイルばかり見ていたのですが、レースを触るとちょっと意識の変更が行われました。レバーの握りがレースの方が好みだったのです。握ると分かりますが、レバーがマスターシリンダーを押し始めのフリクションが全くないのです(トレイルはちょっとありました)。13ミリというトレイルに比べて細くなったレバーのデメリットは全く感じません。

ワイヤ式でも、たとえテフロンコートがされていたとしても、インナーワイヤ表面のゴリゴリ感は消せないモノです。グリスを塗ってもです。ディスクブレーキでもマスターシリンダはアルミ(ボディ部分)と樹脂(ピストン部分)という異素材をこすり合わせているのですから、やはり抵抗があります。ところがこのレバーにはパッドがローターに触れるにつれて大きくなる抵抗はあっても、ピストンのシールによる抵抗は感じませんでした。いやすごい。本当にスゴイです。

好みもあるでしょうが、私が980を使うなら迷うことなくレースのマスターを選びます。効きはローターやパッドでコントロールしたいですね。

マスターのリザーバータンクは形状が変更になりました。それと共にシリンダーも同じ方向を向くことになりました。これはハンドル周りに非常に多くの装備が必要とされてきたため、その空間を確保するためということもあるらしいのですが、それ以上に理想の過渡特性を得るためのようです。

私は横置きが好きですが、今回のシマノの選択は横置きでもなく縦置きでもなく、斜め置きです。どこか忘れてしまいましたが、モーターサイクルのカスタムブレーキでもこういうメーカーがありました。ラジアル(横置き)以上のダイレクト性を求めての事。980XTRもそうでしょう。ただこちらは加えて過渡特性をより積極的にコントロールしたかったようです。位置としてはエイヴィッドと似ています。ですがレバーの支点、作用点が異なります。ここは個性ですね。



マスターピストンもエンジニアリングプラスチック、スレーブピストンはセラミックというのですから、ある意味モーターサイクルも越えた最先端ブレーキとも言えます。

本体も冷間鍛造でしょうね。仕上がり表面をみてもそうだと思います。ここもいままでは鋳造でしか作れなかったはず。リザーバータンクを横置きにするという発想と、鍛造後に施される高い機械加工が可能にしたのでしょう。ダイヤフラムやリッドキャップがはまることを考えると鋳造で当たり前だったのですが……。ちなみにダイヤフラムは『おくら』のような形をしているそうです(笑)。エイヴィッドのエリクサーシリーズを見ても感心しましたが、こちらもうならされます。今回やっと理想のセッティングが出来る技術力が身についたということらしいです。

レバー比を変えたのは英断となるか、独りよがりとなるか……。



スレーブ側のセラミックピストンはオーバーサイズ化して、軽さと効きを上げています。断熱性の高いセラミックを使っているようなので、厳密な意味ではこれもアイステクノロジーの一環として考えて良いでしょう。でもちょっと注意点を。ディスクブレーキの設定や調整の時には今までマイナスドライバーとかメガネレンチで押しましょうということでしたね? 今回からNGです。理由はセラミックが欠けてしまうため。強度は十分確保されているのでしょうが、それほどデリケートなのです。使わないパッドを介するか、樹脂のタイヤレバーなどを使いましょう。

外観的に最大のアイコンとなっている放熱フィンはパッドのバックメタルと一体なので、キャリパーそのものはレースとトレイル共通です。本来はこのフィンこそがアイステクノロジーそのものだったらしいのですが、軽量化のためにアルミ、ステンレスのサンドイッチ構造を採用したローターも、従来のモデルより放熱性が高いということで、両方をそう呼ぶことになったそうです。これに気づいたのはスカンクチームのトーマスバーグ。そういう感覚を持っている人がいるんですね……。人間の感覚とは驚愕に値します。そして実際計測したところ、温度が100度も下がるというとんでもない製品ができていたというわけです。

ホースを横付けにし、バンジョーを復活させたたのもより多くのフレームに対応するため。これもシートステー側やチェーンステー側に分かれつつあるリヤディスクマウントから考えれば、適切な選択です。

ここまでやるか! とうならされたのはドレーンボルトです。これはパーツ単体でも購入の場合、オイルが通るものが付いていますが、その他に7ミリスパナが要らないハンドルが付いたものと、ただのネジが付属しています。計三つですね。設定し終わったら軽量なただのネジに置き換えるのです。ここまでくるとシマノの執念と感じますよ(笑)。


中編に続く



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