なんだか一瞬、ネットで話題になったようですが、あっという間に消えてしまいました。三角関数の加法定理を覚えるよりも、他にすることがあるだろう、の論調でした。
三角関数の加法定理、
sin(A + B) = sin A cos B + cos A sin B
cos(A + B) = cos A cos B - sin A sin B
は他の公式よりも基礎的で、普通はこれは覚えるもので、他の倍角の公式などは加法定理から導出するもの、の感じです。ちなみに試験の際に暗記していて役立つのは和と積の式、
sin A + sin B = 2 sin((A + B)/2) cos((A - B)/2)
などなど、と思います。
加法定理自体の証明は、webにありますが、なぜかcosを使っていて、循環論法ぎりぎりの感じがします。私の直感では、幾何学的に説明する方法と、無限級数で説明する方法があると思います。ただし、私の数学力では数学者を納得させる証明ができるかどうか。
現代の公理主義の観点からは、「三角関数の加法定理という公式」を満たす関数が三角関数である、の感じがします。そのままでは反例続出のような気がするので、適当な修飾語を加えないといけないと思いますが…。
ちなみに、指数関数の一種である双曲線関数の加法定理は、
sinh(x + y) = sinh x cosh y + cosh x sinh y
cosh(x + y) = cosh x cosh y + sinh x sinh y
と、ほんのわずかの差しかありません。グラフは全然違います。似ているのは当然で、複素数を持ち出すと、三角関数と双曲線関数は統合されてしまいます。ということは、無限級数も似た感じ、ということ。
何を言いたいかというと、幾何学と無限級数は昔の数学者が真剣に取り組んだだけあって、数学の根幹に近い部分に触れている、と思います。
無限級数は、本来は三角関数などの近似式として必要とされたと思います。グラフで言うと、0次なら定数、1次なら直線、2次なら放物線、3次なら…、と、次数を上げると、どんどん目標の関数に近づいて行きます。ですから、近似が高度になるにつれて、誤差はどんどん小さくならないといけません。これが摂動法、と呼ばれるはずです。はずです、って、私は学校でそう習った覚えが無くて、何十年も天文学などで使う摂動法って何だ、と思っていたから。
つまり、三角関数の加法定理は三角関数の定義そのものだ、くらいの位置づけのものです。ここを議論すると上記のように大事となるので、高校数学などではこれは覚えるものだ、としていて、良く出来る生徒ほど納得できない事態になっていると思います。