今回ネットで有料配信された演奏会を初めて聴いてみた。川崎にあるミューザで毎年開催されている「サマーフェスタ」の一連の演奏会で、いつも聴いている新日本フィルも参加しているからだ。
この有料配信というサービスは、事前にネット上でチケットを購入し、当日の演奏会をライブで配信するというもの。アントンKは、全く初めての経験で、最初は言わば面白半分で参加した訳だ。しかし今聴き終わってみると、実演至上主義だったアントンKだが、自宅でPCを立ち上げ、ライブ演奏を客観的に鑑賞することも、この時代には有効なことを思い知った気がしている。確かに、同じ空間でしか感じとれない音楽の音にはならないニュアンスはないが、画像から雰囲気は十分伝わり、またバックステージビューでは、舞台の裏側の演奏家たちの雰囲気も普段では見ることが出来ない訳で、とても新鮮だった。こうした配信サービスは、コロナの時代だからこそ生まれたサービスで、今後新しい鑑賞法にもなるのかもしれないと思った次第。機会があれば、再度何回かチャレンジしてみたいと思う。
しかし逆に配信を鑑賞してみて、あぁ~やはり行けば良かったと思えるシーンに出くわすと、ちょっと悔しい想いも湧き上がる。プログラムのプレコンサートではあるが、コンマスの崔氏率いる4名の室内楽団によるショスタコーヴィッチは凄かった!全身全霊をこめた弦の音色は、ぼろいスピーカーをも震わせ、こちらも画面に釘付けになった。崔氏お得意のショスタコは、哀悼の念を伴い鎮魂歌としてアントンKの心に響いたのである。
そしてこの日のメインプロは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と第7交響曲が並んでいるが、指揮者が久石譲氏ということで、内容はとても一筋縄ではいかない演奏だろうと察しはついた。久石氏と言えば、今や映画音楽の大家であり、ジブリの音楽はアニメを通じて人気がある。新日本フィルとの友好的な関係は存じていたが、今回のようなクラシック音楽の指揮は、アントンKの中では珍しかったのだ。案の定、演奏されたベートーヴェンは、どちらも新鮮な音楽で、特にコンチェルトの方は、久石改訂版と言えるだろう。カデンツァのみならず、ソロフレーズの至る所に改訂があり、聴いたことのない景色が広がってくる。やはり作曲家久石譲の天才的能力は、いかんなく発揮されていたと思える。しかし、こうなると演奏が聴こえてくることだけが全てに成りがちで、ベートーヴェンから深く伝わる想いや憧れのような感情は吹き飛んでしまった。とはいえ、令和の時代に聴くベートーヴェンとしては、とても印象的であり良い演奏だったと言えるのではないか。画像は、ハツラツと指揮する久石譲氏、それに魂を音色に乗せるコンマスの崔文洙氏、そして新日本フィルの二大巨頭崔氏と豊嶋氏との熱演ぶり。ライブ画像より抜粋しておく。
サマーフェスタ ミューザ川崎
2020年8月4日 新日本フィルハーモニー交響楽団演奏会
久石 譲 Encounter for String Orchestra
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
ベートーヴェン 交響曲第7番 イ長調
プレコンサート
ショスタコーヴィッチ 弦楽四重奏曲第8番
Vn 崔 文洙・ビルマン聡平
Va 篠崎 友美
Vc 植木 昭雄
指揮 久石 譲
ソロ 豊嶋 泰嗣
コンマス 崔 文洙
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