全国的に感染者が増えつつある中、かなり自己防衛して新日本フィル定演へ向かう。とは言っても、ホールのエントランスから中、そしてホール内は可能な限りの対策が取られ安心できる。どこもそうだが、終演後の退場の順番の指示はもう当たり前になりつつある。トリフォニーは、ホールを出てすぐに外へと扉が大きく開いているのがとても良いと思った。
今年はコロナ感染症の拡大で、プログラムや出演者にも大きく影響が出た。そんなことがあってか、アントンKには、普段なかなか聴くことがない楽曲や指揮者と巡り合い、ある意味とても新鮮に感じることが多い。昔はかなり偏った聴き方でホールへと通い、語たくを並べては演奏を楽しんだものだが、最近ではコンマスの崔氏の影響もあり、色々な種類の楽曲を鑑賞し新しい発見を多々思い描くことが出来ている。今回のメインプロであるメンデルスゾーンの第3交響曲もそうで、おそらく生演奏では初めてではないだろうか。もう数十年前にまで遡ってしまうが、クレンペラーやバーンスタインなどのLPは一通り聴いていて、楽曲そのものは知っていたが、当時のアントンKのメンデルスゾーンのイメージが災いして、鑑賞の機会を怠っていた。どうも歌謡調で明るい曲調が合わず、ずっと長い間そんな印象だったのだ。楽曲に求めるものが、もっと暗く重く陰湿だったからなのかもしれない。いやー根暗のアントンK、困ったものだ・・
しかし今回の演奏は、そんな印象を吹き飛ばしてしまい、実に楽しく心に響いてきた。やはり録音では解らない、その場で構築される音色の風に吹かれたのだろう。とにかくドラマティックに場面が変わり、音楽が七変化する。心のこもり切った木管群のソロは素晴らしく、またティンパニの決めは鋭く、適切で気持ちが良い。そして何と言っても今回も弦楽器の統一感と熱演は、相変わらずアントンKの心を熱くする。Vcも良かったが、崔氏率いるVn群は、主張が凄まじく、リズム、切れが最高だった。特に音楽が大きく膨れ上がる時の刻みの厚さは、これがメンデルスゾーンか、と思わせたほどゴージャスであり、ブル7の第1楽章のコーダ前を彷彿とさせたのだった。当日、気分が凹んでいたアントンKだったが、コンマスの崔氏の演奏姿と音色に励まされ、感激し勇気を今回も頂いて、帰路に就くことが出来た。そしてこれを機会に、もう一度メンデルスゾーンを聴き直してみたくなった。演奏会前半の若手ソリストのよるモーツァルトも、実演では珍しく、アンコールをも含めて良い演奏に思った。
新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会トパーズ
メンデルスゾーン 序曲「鈴かな海と楽しい航海」OP27
モーツァルト 協奏交響曲 変ホ長調K364
メンデルスゾーン 交響曲第3番 イ短調』OP56「スコットランド」
アンコール
フックス VnとVlaのための作品 OP60-12 ワルツ
モーツァルト ディヴェルティメント 変ロ長調 K137~2mov.
指揮 尾高 忠明
Vn 成田 達輝
Vla 東条 慧
コンマス 崔 文洙
2020年11月20日 すみだトリフォニーホール
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