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新年度を迎え、各楽団ともスケジュールが発表されて、この1年どんな楽曲で我々に演奏を楽しませて頂けるのか、最も期待が高まるタイミングなのが、まさにこの時期だと言える。
アントンKはというと、2年前からのコロナ感染の影響で激減した演奏会の中から、まずは必ず聴きたいと思う物だけに限って聴いてきた。しかし現状は、更新される数字に一喜一憂するのではなく、コロナの日常化が浸透して、生活の送り方、演奏会での新たな常識が確立したと言えるのではないか。2年前では、どこか緊張と心配や窮屈感すらあった行為が、今では自然体で行えている。気を許すのではなく、新たな鑑賞行為として定着していくのだろう。しかし、個人的には、いまだに続く終演直後の「ブラボー」禁止はいささか寂しく思う。演奏会をプレーヤー入場から終演退場までをひとくくりに考えた場合、聴衆の反応は演奏会の印象に大きく影響してきたと思えるからだ。
新シーズンのスタートを切る今回の演奏会は、指揮者に久石譲を迎え、フランス音楽を中心に演奏された。どの楽曲も演奏する歓びに満ち溢れ、それを待ち望んでいた我々聴衆も、集中して音楽へ身を置くことが出来たと思う。とりわけ、コンチェルトで独奏したリーウェイ・キンの音色は有機的で表情がずば抜けており、なかなか生演奏では聴けないこの楽曲を興味深いものにしていた。そしてメインに置かれた「展覧会の絵」では、オケの能力が試され、終曲に向かって音楽が大きく膨れ上がる時、圧倒的なオーケストラのサウンドを堪能できたのだった。奇手を狙った演奏ではなく、終始安心して身を置くことができたが、バーバ・ヤガからキエフの大門を移行する場面でのテンポ設定は最良であり、あんなに濃密で豊満な音色をここで聴いたことはなかった。アントンKも、今までこの「展覧会の絵」は星の数ほど聴いてきたが、今回は久しぶりとなり、大いに楽しめ楽曲の奥深さを再認識したのである。
新日本フィル交響楽団定期演奏会 すみだクラシックへの扉
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
サン・サーンス チェロ協奏曲第1番 イ短調 OP33
ムソルグスキー/ラヴェル編曲 組曲「展覧会の絵」
ソロ・アンコール
ジョバンニ・ソッリマ アローン
バッハ 無伴奏チェロソナタ第4番~サラバンド
アンコール
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
指揮 久石 譲
チェロ リーウェイ・キン
コンマス 崔 文洙 / 伝田 正秀
2022年4月15日 すみだトリフォニーホール
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