アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

新たな時代を感じた大阪フィル東京公演

2022-02-15 19:00:00 | 音楽/芸術

大阪フィル東京公演を聴いてきた。

昨年の東京公演は、感染症の影響を受け中止となり2年ぶりの東京公演となった。一昨年はエルガーの協奏曲とブルックナーの第3番が演奏され、第3が好きなアントンKとしても印象に残った演奏会だった。第3を実演奏で聴けること自体に幸せを感じるアントンKであるからそう思うのかもしれないが、実に的を得た立派な演奏だった。指揮者が尾高忠明に代わって、どんな内容なのか興味を持っていたが、やはりそれまでと同じような生真面目で奇てを狙わない演奏内容だった印象が残っている。言ってみれば昔鑑賞したN響とのブルックナー第8番の延長線上にある演奏とでも言えるかもしれない。ある意味教科書的であり、何百何千と聴いてきたアントンKにはオーソドックスに映る。目隠ししたら誰の演奏なのか解る自信がない演奏。尾高氏の演奏はそんな印象だった。

しかし今回鑑賞したブルックナーは、今までのそうした印象を払拭してしまい、新たな境地へ進んだように感じたのである。これは、現在音楽監督の大阪フィルだからこそ可能になった演奏なのかもしれないが、今までに経験したことのない演奏だったことは明らか。誰とも異なる独自性の高い尾高氏のブルックナー第5がアントンKに迫ってきたのである。

朝比奈時代に体験した大阪フィルの重厚な音はいまだ健在で、ましてや第一楽章冒頭の全奏が鳴ると昔が蘇るように感じたのだが、演奏内容はまるで異なりアントンKには度肝を抜かれた想いになったのだ。インテンポ演奏が基本であると感じていたブルックナーは、かなりの緩急を伴った激情的な表現であり、管楽器群の明瞭な響きや打楽器の強打は最高。指揮者尾高氏が意図して求めている響きであることが、面白いように分かった。全体的にも手際のよい演奏で、次々と場面を変えていくのだが、第1楽章のコーダで急にテンポを落ち着かせ、弦楽器の旋律を強調しながら突っ込んでいく、あの解釈は素晴らしく、アントンKに強く響いてしまったポイントだった。そして第5では問題となるフィナーレの演奏だが、金管群を補強することなく、かなり早いテンポで終結を迎えたのである。

今回のブルックナーは、アントンKにとっては問題演奏となった。それは今までの定説を覆し、全く新しい演奏スタイルで、この巨大な第5に挑み、今まで経験のない新たな感動を与えてくれた演奏だったからだ。その感動要因は、弦楽器群の力量にあったことを記しておかなければならない。とかくブルックナーは、金管楽器に注目されがちだが、実は楽曲を支える弦楽器にこそ命綱があると思っている。第1楽章の二主題に出るピッチカートの瑞々しさ、副次主題のビオラの雄弁な響き、そして何と言っても楽曲全体を占める弦の刻みの分厚さは比類なく、コンマス崔文洙氏をトップに繰り広げられた弦楽器群のパフォーマンスは、アントンKの心に熱く響いたのである。尾高忠明氏のブルックナー、今までとは同列に扱えなくなった。さらに期待して次を待ちたいと思う。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第54回東京定期演奏会

ブルックナー 交響曲第5番 変ロ長調(ノヴァーク版)

指揮    尾高 忠明

コンマス  崔 文洙

2022年2月14日 東京サントリーホール

 



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