アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

大阪フィル東京公演を聴く

2019-01-23 15:00:00 | 音楽/芸術

数年ぶりで大阪フィル東京公演を聴いてきた。

この東京公演はアントンKには久しぶり。近年の公演は思い出せず、一気に朝比奈時代まで遡りそうだ。一昨年の2017年には、井上道義の大ブルックナー展があり、兵庫まで駆け付けたことが思い出深い。以後大フィルは、監督が尾高忠明氏に変わり、昨年は早速ベートーヴェンチクルスでお披露目をしていたようだが、なかなか時間も取れず未聴のままに終わっている。

さて今回の東京定期は、すでに彼等は同プログラムを地元で2回演奏し、サントリーホールに乗り込んでくる。よってオーケストラのコンディションも、また指揮者との疎通もかなり同曲ではこなれて、ベストな演奏になるとの予想ができたのだ。実際こうして鑑賞してみて、まず第一に感じるのは、大阪フィルの音色の良さとこのオケ独特の雰囲気の良さだった。分厚い低音は相変わらずだし、管楽器も実によく鳴っていたと思う。朝比奈時代からのプレーヤーなどごく限られてしまうだろうが、一切力づくなところなど無く、弦楽器群の統一感をも相まって、素晴らしいハーモニーを聴かせてくれた。おそらくここまで粒が揃った音色の統一感を感じることができたのは、指揮者尾高忠明の指導なのだろうが、響きの奥深さとでもいうべき、堀の深い音楽がそこに出現したのである。

尾高忠明と言えば、エルガーらしいのだが、アントンKは不勉強でエルガーを昔からしっかり聴いたことがない。今回のメインプロがエルガーの第1番という事で、即興でそれこそ録音を10数回耳して会場に向かったが、音楽のツボが頭に溜まるまでには至らなかった。こんな状況でも、実演奏の醍醐味は見事なまで身体で聴く事ができ、オケと指揮者との熱量を肌で感じた想いがしている。指揮者尾高氏の指揮ぶりは、指揮棒を持たずじっくり音楽に身を置き、オケを引っ張るタイプだが、昔から奇手を狙わず真面目な音楽が鳴り、アントンKにはあまり面白みを感じない指揮者だった。昔N響を振ったブルックナーの第8番を聴いてがっかりさせられたことを思い出してしまうのだ。しかし今回の演奏を聴く限り、大フィルをここまでまとめ上げ、あそこまでの熱演を享受できるのだから、すでに円熟の境地に達しているのかもしれない。今後、過去のイメージは忘れ去り、今度はアントンKも良く慣れ親しんだ楽曲で鑑賞したいと思っている。

最後に、協奏曲を演奏したソリストの神尾真由子。確かに演奏技術は舌を巻くくらい凄いものだった。おそらく才能という輝きがあるのだろう。しかしアントンKには、どうも奏でられる音からは外面的なものしか感じられなかったのだ。ブルッフという楽曲だからなのかもしれない。だが、メインのエルガーで大活躍したコンマスの崔文洙氏の音色をその後から聴いてしまうと、彼女の音の印象は軽薄なものと感じてしまったのだ。崔氏の抒情的とも言える深い音色の艶は、アントンKの心に今回も響き渡ったのである。とても同じ楽器だとは思えぬくらい、五感に迫る情を感じた次第だ。どうしてこんなにも違うのか?それは生涯にわたるアントンKのテーマなのだ。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第51回東京定期演奏会

武満 徹 トゥイル・バイ・トライライト

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調OP26

エルガー 交響曲第1番 変イ長調 OP55

指揮  尾高 忠明

Vn   神尾 真由子

コンマス 崔 文洙

2019年1月22日 東京サントリーホール