アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

若きブルックナー指揮者~冨平恭平氏

2019-01-14 19:00:00 | 音楽/芸術

ブルックナー演奏について、この拙いブログでも過去に何度となく触れているが、今回も誠に的を得た素晴らしい演奏を鑑賞してきたので、書き留めておきたい。

アントンKよりも随分お若い冨平恭平氏のブルックナーだ。彼の演奏についてこれまで何回か書き留めているが、今回は第7交響曲。オケは港北区民交響楽団というアマチュアオーケストラだから、当然その分は差し引かなければならないが、今回も前回の第5を凌ぐほどの内容でアントンKに迫ってきたのだ。響きの良いみなとみらいホールでの演奏は、まさにブルックナー演奏には相応しく、たっぷりとした残響を意識しながら、楽曲を堪能できたことをまずは記しておきたい。

指揮者冨平氏のブルックナーにおける演奏解釈は、ここまで全く違うオケで第3、第4、第5と聴いてきたが、今回の第7でも基本は同じスタイルで楽曲に挑んでいた。アマオケによる技術的な部分の差は、プロの個性より顕著だから致し方ない部分はあるものの、ブルックナーの響きの世界を熟知している冨平氏の目指す響きは、まさにアントンKが知る限り明らかにブルックナートーンの連続だった。第1楽章の出の部分のVnのppの音色からして、しっかりとした響きが聴き取れ、その上に第1主題がとうとうと現れたのだった。もうここだけ聴いただけで、全てがわかると言っても過言ではないくらいの安心感を伴っており、楽曲が進むにつれてそれが確信へと変わっていった。ハース版とはっきり唄っているところもいい。この第7でハース版使用とは、アントンKにはどうしても朝比奈隆の演奏が蘇ってきてしまう。第1楽章コーダは、アッチェランドすることなく、堂々と進む音楽の大きさは比類なく、まさにかつての朝比奈の第7を思い出させた。また第4楽章のフィナーレをこの第7の頂点に持ってきた冨平氏の解釈にも賛成だ。かつてブルックナー指揮者だったオイゲン・ヨッフムが第7は第2楽章アダージョが楽曲の頂点だと語っており、実演でもそのように演奏していたが、アントンKは、やはりこの第7交響曲でもフィナーレに頂点を置くべきだと思うし、今回の演奏を鑑賞してみて、改めて再考できた気持ちである。その第4楽章も、最初のテンポ設定が適切かつ最良で、符点のリズムがきっちりと演奏されていて気持ちいい。ユニゾンで開始される個所で、極端なHrnの強調には度肝を抜かれたが、実にダイナミックな解釈で新鮮に感じた。基本全てインテンポで演奏され、じっくりと響きを感じさせる演奏だったため、非力なオケを持ってもブルックナーの音色を感じることができたのだと思っている。また指揮者冨平氏は、楽章ごとの間をいつもより多めにとり、心の高揚が収まるまで指揮棒を上げなかったことも大いにうなずけたのだ。

終演後、楽屋口まで出向き写真を撮らせて頂いた。その写真を掲載しておく。冨平氏自らブルオタを自称しておられるが、アントンKのような脂臭い過熱気味の爺をとてもフランクにお相手して下さり、素晴らしいお人柄にも接することができて、大満足で帰路に就いたのである。普段は新国立劇場での活躍で多忙を極めているようだが、きっと近い将来ブルックナー演奏の第一人者としての冨平氏が世界の音楽界に認知され、大きく羽ばたく時が来ることを信じて待ちたい。

港北区民交響楽団 第63回定期演奏会

シューベルト 「ロザムンデ」序曲 D.644

ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調(ハース版)

2019-01-13  横浜みなとみらいホール 大ホール