節分の呪符を見つけて自分が住んでいる場所に、こんな古い習俗が残っていたのかと驚いたのが、昨年の3月だった(→http://blog.goo.ne.jp/angura_1967/d/20060308)。
同じ場所に今年も行ってみた。いわば、定点観測だ。
すると、バリエーションが多少変わっていたのである。昨年は枝付き大豆とともにヒイラギの葉があったのだが、今年はあまり目立たない。イワシも昨年は小振りだったが、今年は大きめのイワシ一匹丸々が、大豆とともにたばねた形のいたってシンプルな呪符になっていたのである。一番の変化は、大豆の葉が逆さまになっていることだった(もっとも、その向きは関係ないのかも知れないが……)。
昨年、腐敗防止の心配りかラップしてあったイワシはむきだしで、さらに首(エラ)のところで括られている。干し魚とはいえ、このまま放置しておけばウジでもわくのではあるまいか? と、心配になった。
このイワシは、その臭気をオニが嫌うそうで、つまりウジがわくほど腐敗臭のあるほうが、オニ払い(追儺)には効果的かも知れない。地方によっては、ヒイラギにイワシのアタマを突き刺して玄関脇におくという風習もあるそうだ。
「宇治拾遺物語」は鎌倉時代の初期に編纂された説話集だが、そこにはオニの物語が散見する。「今昔物語」と共通するハナシもある。たとえば「コブトリ」である。あの誰もが幼年時代に読んだだろう「こぶ取り爺さん」の物語だ。
「コブトリ」
ヲドリノ ジョウズ ナ ヂイサン ハ、
オニ ニ タイ ソウ ホメラレ テ、
ジャマ ナ タンコブ トラレタ ガ、
ヨクバリ ヂイサン マネヲ シテ、
ヨケイナ コブ マデ ツケラレタ。
(「幼年画報」大正3年によるシンプルな要約)
恨みをのこして死んだために鬼となった者は、何代にもわたって執り憑き殺してきたわが身の無量億劫の苦を嘆き、修行中に吉野山で出会った日蔵上人によよと泣き崩れて去っていくと言う悲しき業(ごう)の鬼も記述されている(巻11ノ10)。この説話は浜田廣介の民話風名作童話「泣いた赤鬼」(昭和8年作)の元ネタかもしれないと思う。
むきだしのイワシが蛆のわくほど腐敗する前に、物語を拾い集める(拾遺物語)。げに、これをして『蛆拾遺物語(ウジしゅういものがたり)』と名づく。
来る春や 蛆(ウジ)わき 鬼の目に泪 (フーゲツ亭JUN)
蛆拾遺物語(ウジしゅういものがたり)<1>
<ワレ路上デ発見セリ!(17)/鰯(イワシ)の腐敗臭>
同じ場所に今年も行ってみた。いわば、定点観測だ。
すると、バリエーションが多少変わっていたのである。昨年は枝付き大豆とともにヒイラギの葉があったのだが、今年はあまり目立たない。イワシも昨年は小振りだったが、今年は大きめのイワシ一匹丸々が、大豆とともにたばねた形のいたってシンプルな呪符になっていたのである。一番の変化は、大豆の葉が逆さまになっていることだった(もっとも、その向きは関係ないのかも知れないが……)。
昨年、腐敗防止の心配りかラップしてあったイワシはむきだしで、さらに首(エラ)のところで括られている。干し魚とはいえ、このまま放置しておけばウジでもわくのではあるまいか? と、心配になった。
このイワシは、その臭気をオニが嫌うそうで、つまりウジがわくほど腐敗臭のあるほうが、オニ払い(追儺)には効果的かも知れない。地方によっては、ヒイラギにイワシのアタマを突き刺して玄関脇におくという風習もあるそうだ。
「宇治拾遺物語」は鎌倉時代の初期に編纂された説話集だが、そこにはオニの物語が散見する。「今昔物語」と共通するハナシもある。たとえば「コブトリ」である。あの誰もが幼年時代に読んだだろう「こぶ取り爺さん」の物語だ。
「コブトリ」
ヲドリノ ジョウズ ナ ヂイサン ハ、
オニ ニ タイ ソウ ホメラレ テ、
ジャマ ナ タンコブ トラレタ ガ、
ヨクバリ ヂイサン マネヲ シテ、
ヨケイナ コブ マデ ツケラレタ。
(「幼年画報」大正3年によるシンプルな要約)
恨みをのこして死んだために鬼となった者は、何代にもわたって執り憑き殺してきたわが身の無量億劫の苦を嘆き、修行中に吉野山で出会った日蔵上人によよと泣き崩れて去っていくと言う悲しき業(ごう)の鬼も記述されている(巻11ノ10)。この説話は浜田廣介の民話風名作童話「泣いた赤鬼」(昭和8年作)の元ネタかもしれないと思う。
むきだしのイワシが蛆のわくほど腐敗する前に、物語を拾い集める(拾遺物語)。げに、これをして『蛆拾遺物語(ウジしゅういものがたり)』と名づく。
来る春や 蛆(ウジ)わき 鬼の目に泪 (フーゲツ亭JUN)
蛆拾遺物語(ウジしゅういものがたり)<1>
<ワレ路上デ発見セリ!(17)/鰯(イワシ)の腐敗臭>
オレは、何度か生干しのイワシを干したりしてる。
最近のメザシは生干しばかり、カリッと乾燥した物が少ないし、あっても高い。
イワシの生臭さを鬼が嫌うというのだろう。
腐敗臭は誰でも嫌う。^o^
とても興味があります。
あやしくも、日本の心を感じてしまいます。
小松和彦さんの本を読みたくなってきました。
腐敗してくれないと「蛆拾遺物語」じゃなくなっちゃう! というボクの心配をナンのこっちゃ? と受け流して、加齢臭を漂わせて行ってしまいました(笑)。
妖怪、オニ、河童といったたぐいの伝承ですよね。
そんなことを言っているキミの、ホラ! うしろに!
「なんかヨーカイ?」
何かようかいが…。いたんでないかい? そうでないかい?