アナイス、アナイスとアナイス・ニンのことに夢中になっていたボクは(ヘンリー・ミラーへの関心からアナイス・ニンへ関心がいつしかシフトしてしまったのだ)書店でまた驚くような大部な書物を見つけてしまった。
『ヘンリー&ジューン』からつづくアナイスの無削除版『日記』の第2部とでも言うべきものがつい最近、翻訳出版されていたからである。
『インセスト/アナイス・ニンの愛の日記【無削除版】1932~34』(彩流社/2008.02。以下『日記(B)』)がその書物だ。訳者は『ヘンリー&ジューン』の杉崎和子。杉崎はアナイス・ニン財団の理事にも名を連ねており、矢川澄子亡き後、これほどの翻訳者としての適任者は現在他に見つけることはできないだろう(矢川澄子については後日書くつもり)。
ところで、なぜ『インセスト』なのだろうか? インセスト(INCEST)とは「近親相姦」という意味である。そう、アナイスはまるで神話時代か、古代のおおらかな時代のような真の「ファザー・ファッカー」を生きたらしいのである。
アナイスは同日に三人の男と性交渉を持つといった奔放な側面(それは、とりもなおさずヘンリー・ミラーによって目覚めさせられたアナイスのおんなの官能だった)と同時に、幼い頃に自分たち家族を捨てた父??彼は高名なピアニストだった??とも、実父からの誘惑のままに寝た。
その頃の赤裸々な告白が、今回の無削除版の『日記(B)』のテーマであるのだが(もちろん、ヘンリー・ミラーやアントナン・アルトーへの言及は多数ある)、そうであってなぜアナイスに『近親相姦の家』のような一見抽象的で難解な小説が存在したのかの理由が解けてくる。
アナイスは自分の心の中にトラウマとして残る父の残像に長い間悩まされていたらしい。『日記』そのものも、そもそもは自分たち家族を捨てた父への関心を引き止め、関心を向けさせるために11歳のアナイスが書き始め、以来、アナイスはその「日記帳」を小さなバスケットに入れて情事の際にも、如何なる時にも持ち歩き、70歳を過ぎるまで書き続けたらしいのである。
アナイスはそのだれよりも心を許した「日記」を、時には愛人たちの間を渡り歩く時にも、欠かさず持ち歩き「日記」を「小さなダイナマイト」とも呼んでいたらしい。
そう、男たちの間を渡り歩きながら決して娼婦ではなく、むしろその思いやり、気配りにおいて大男たちや、自分の精神分析医の母のような存在になってしまったらしいアナイスは、きっと「拒否」できなかったおんなだったのだろう。
(つづく)
『ヘンリー&ジューン』からつづくアナイスの無削除版『日記』の第2部とでも言うべきものがつい最近、翻訳出版されていたからである。
『インセスト/アナイス・ニンの愛の日記【無削除版】1932~34』(彩流社/2008.02。以下『日記(B)』)がその書物だ。訳者は『ヘンリー&ジューン』の杉崎和子。杉崎はアナイス・ニン財団の理事にも名を連ねており、矢川澄子亡き後、これほどの翻訳者としての適任者は現在他に見つけることはできないだろう(矢川澄子については後日書くつもり)。
ところで、なぜ『インセスト』なのだろうか? インセスト(INCEST)とは「近親相姦」という意味である。そう、アナイスはまるで神話時代か、古代のおおらかな時代のような真の「ファザー・ファッカー」を生きたらしいのである。
アナイスは同日に三人の男と性交渉を持つといった奔放な側面(それは、とりもなおさずヘンリー・ミラーによって目覚めさせられたアナイスのおんなの官能だった)と同時に、幼い頃に自分たち家族を捨てた父??彼は高名なピアニストだった??とも、実父からの誘惑のままに寝た。
その頃の赤裸々な告白が、今回の無削除版の『日記(B)』のテーマであるのだが(もちろん、ヘンリー・ミラーやアントナン・アルトーへの言及は多数ある)、そうであってなぜアナイスに『近親相姦の家』のような一見抽象的で難解な小説が存在したのかの理由が解けてくる。
アナイスは自分の心の中にトラウマとして残る父の残像に長い間悩まされていたらしい。『日記』そのものも、そもそもは自分たち家族を捨てた父への関心を引き止め、関心を向けさせるために11歳のアナイスが書き始め、以来、アナイスはその「日記帳」を小さなバスケットに入れて情事の際にも、如何なる時にも持ち歩き、70歳を過ぎるまで書き続けたらしいのである。
アナイスはそのだれよりも心を許した「日記」を、時には愛人たちの間を渡り歩く時にも、欠かさず持ち歩き「日記」を「小さなダイナマイト」とも呼んでいたらしい。
そう、男たちの間を渡り歩きながら決して娼婦ではなく、むしろその思いやり、気配りにおいて大男たちや、自分の精神分析医の母のような存在になってしまったらしいアナイスは、きっと「拒否」できなかったおんなだったのだろう。
(つづく)
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