風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

螢の里で深く眠る(1)

2008-06-08 23:59:02 | コラムなこむら返し
 土日と大原へ行った。さそわれて「ホタルまつり」を見に行ったのだ。「まつり」とは言ってもなにかがある訳ではない。国道沿いには3軒ばかりの屋台が出ていたが、それ以外には何もない。むしろ外灯もない闇の中をそぞろ歩いていくばかりだ。国道から10メートルばかり入った森の方に近づくにつれ、ほのかに輝いて飛ぶものが見えてくる。
 ホタルだ。森の脇にある水田はまだ若い稲穂で水を満々とたたえている。そこに、三日月が写っている。目をこらすと森の方で、光るものが見えた。どうやら、水田の奥の方にある木にたくさんのホタルがとまって発光をシンクロさせているらしい。淡いネオンのように光ったかと思うと暗くなるサイクルを繰り返している。ホタルはその夜に見た限りでは、例年より少ないようである。

 おそらく数十万匹といるホタルが、一本の木に鈴なりになってその光の同調リズムを多様に変えてシンクロしている神秘的な光景を見たことがある。もう、ずいぶんと前の話だが、スリランカへ行った折り、スリランカ中部の村で見た神秘的な光景だった。
 おそらく、日本で見られる源氏ボタルとは、種類も違うのかも知れないが、その光りかたはほのかなものとはいえ、数の威力で木全体がイルミネーションのように浮かび上がって見えたほどだった。
 その光りは、同調と異調を繰り返し、ウエーブを表現するように不思議な波状リズムを刻んでいた。
 ボクは、異国で心細い思いでそのホタルの群れの光のリズムに身を任せていて、それでいて催眠術にかかったようにボーッとしていたことを覚えている。

 一匹が偶然、手の平に飛び込んで来た。そっと両手でおおうと、手の平の中で淡い提灯のように点滅していた。
 ホタルは樹木葬の寺から車で5分あまりの近くにあり、そのためかよく言われるように誰かのタマシイが浮遊しているようにも思われてくるのだった。
 水田はおそらくホタルの育成、保護のために減農薬か何かを実践しているのではないかと思われた。初夏の風物詩であったホタルの群舞も、おそらく全国的には減っているはずだ。それとも、再び徐々に増え続けているのだろうか?

(つづく)


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4 コメント

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大原、は京都の大原ですか? (鮪)
2008-06-10 15:44:00
大原、は京都の大原ですか?

大阪・豊中にいた子供の頃は、水田に入り、螢と戯れていました。ある日「蛍の光」を試したくて、瓶一杯に詰め、実際に本が読めることも分かったのですが、翌日には皆死んでしまいました。悲しくて、罪悪感で一杯で、もう二度と戯れに生き物を殺すようなことはしまいと誓ったものです。
体長が小さかったから、その螢の名前は知りませんが、ゲンジボタルではなかったようです。

国分寺の「お鷹の道」沿いでは、数は少ないけれど、螢を見ることが出来ます。しかし、感嘆の声を上げる子供や大人たちが押し寄せ、附近の住民には迷惑なようです。町中では、静かに「鑑賞」しなければいけないようです。
蛭にかまれ血まみれになりながら、キャーキャー言っていた頃が懐かしい。

ホタルに出会うと、心が洗われるようです。
鮪さん! 大原は千葉県の方です。数年前からこの... (フーゲツのJUN)
2008-06-11 23:57:51
鮪さん! 大原は千葉県の方です。数年前からこの地でもホタルの保護の話が持ち上がり、農薬を減じたり、保護の手段が嵩じられ観光の手段にしようと画策されたようです。
農業保証のような方法がとられたのかどうか調べていませんが、ともかく全農家の協力は得られなかったようです。
「螢の光」は可能だったのですね。ということは、電気料金が払えなくなったら螢を光源にできると言うことでしょうか?
武蔵野公園では復活プロジェクトが進行中ですし、武蔵美のそばの玉川上水にもホタルの生育室があったと思いました。
国分寺でも見れたのですね。やはり野川沿いなのでしょうか?
千葉、でしたか。 (鮪)
2008-06-12 07:26:33
千葉、でしたか。

ホタルは、少しずつ増えている気がします。
環境問題としてのようですが、要するに、昔は「良かったよ」という光景が戻ればいいわけですよねえ。
「進歩」を求めるあまり、あまりにも犠牲にしてきたものが多すぎます。

お鷹の道沿いに流れる疎水は、野川源流の一つ・国分寺湧水(真姿の池の隣り)から引かれ、野川へと合流します。

光源には出来ますが、短命で季節限定、かな。
野に放て、源氏平家の、成れの果て

福生では、ホタル泥棒が出没する、と話題?となっているようです。そちらの螢は見たことありませんが、
売買の対象、は頂けない。
カナリアは空気環境の清浄度や毒ガスを感知するセ... (フーゲツのJUN)
2008-06-12 23:20:14
カナリアは空気環境の清浄度や毒ガスを感知するセンサーでもあり、かって炭鉱夫が持って坑道を降りていったそうです。最近ではオウム真理教事件の時、サティアンの捜索時に機動隊が鳥かごを持っていたのが記憶に残っています。サリンを感知してくれるという意味だったのでしょう。
その意味で、ホタルは水の環境、水の清浄度や農薬等による水質汚染のバロメーターにはなりえないのでしょうか?
もっとも、そのバロメーターといったらメダカ、ヤゴ、タニシといった水棲動物や昆虫、鳥類が入るでしょうが……。とはいえ、ホタルは絶滅危惧種(レッドデータブック)の「準」に当たるのらしいのですが、やはりそれでも充分バロメータと言える生き物だと思います。

手の平に ホタルを丸く 囲いみて ほのかに光る 吾が手の雪洞(ぼんぼり)

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