![Dazailupin_1 Dazailupin_1](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/de/5f15ebe096c1d3e0cce3bd643a600cfd.jpg)
さて、現在は「文士」の滅亡した時代だそうで、いわゆる「文壇バー」というのも死滅したのかも知れない。以前、「文壇バー」らしきところへ足を踏み入れたことはあるし、いまでも時たまジャズを聞きに行く「ナルシス」は、先代のママの頃は有名な文壇バーだった。ゴールデン街のいくつかの店は、映画人や、演劇人があつまる「文壇バー」に近い様相を呈していたが最近は知らない。
ボクは自虐的に酒を飲むということに、怒りを感じるタイプで、客よりも偉そうにしている亭主やママのいるところでは酒がマズイのだ。要するに、自虐的に酒が飲めない。というより、どうしてそのようにして飲めるのか理解できない。
話が、とんでもなく脱線してきた。林忠彦の著書も1冊ほど持っていたはずだが、見つからず材料もない。これくらいにしておこう。
そうそう、これだけは言っておく。ボクは、「文士」としてでなくひとりの小説家として太宰が好きだ。そのだらしなさ、おんなの心を盗むあざとさもふくめて好きだ。
林の撮った写真で、太宰はめずらしく洋服姿でベストを着込み、ネクタイもしている。足を椅子にまでもちあげて行儀悪く座っているその視線の先には、織田作之助がいる。
ボクは、この写真でいつも気をとられるのは太宰がはいた靴である。その靴はお世辞にもきれいな靴ではない。革靴ではないし、むしろ良くてバックスキンか、布靴であろう。
ボクには、どうもボクが愛用しているキャラバンシューズのように見える。銀座の出版社か、新聞社への所用の帰りなのだろうか、いつになくめかした割りには太宰の靴のみすぼらしさが、ボクの胸を打つ。ああ、ボクと同じキャラバンシューズをはいている、と……(笑)。