『きょうはぼくらがゆうびんやさん』 2011年
『ぼくらがみつけたたからもの』 2012年
しいなつねこ 文 いとうかな 絵 国立大学法人 千葉大学医学部付属病院
2016年の幕開けです。毎年新しい年を迎えると、今年こそはゆったりと読書を楽しみたいということを細やかに願うのですが、なぜかそれを阻む何かが毎年押し寄せてきます。それでも、あえて今年も「ゆっくりと読書をする」というのが、唯一の目標(目標になっている時点でアウトですが)。その中の一部の本を今年も皆様と共有できたら幸いです。どうぞ、本年もよろしくお願いします。
私自身、趣味の一つに国内の大学のキャンパスを巡り、キャンパス内の書店で本を購入するというものがあります。その理由の一つに、いわゆる一般市場に出回らない本、大学内で出版し、そこのみで売られているものがあるので、そのような本を見つけるのが楽しみだからです(購入するかどうかは別)。今回取り上げた2冊はまさにそれ。
この絵本は「みなみまち」というパラレルワールド。ここは、人間も動物たちも植物も全て対等の立場で生活しています、見返しにはそれぞれの登場人物の詳細が説明されており、これがまたユーモアあふれるもの。主人公は人間のじみおくん。お友達としてピーナツ三兄弟。呉服屋の京子さんも人間ですが、帽子屋はぶたのぶたこさん。花屋さんは文鳥さん。その他たくさんの登場人物がいます。
最初の作品は郵便屋さんの八木さん(動物のやぎです)が風邪をひいたために、みなみまちのなかまが手分けして、郵便を配るというお話。2作目は、願い事が叶うという石を発見したというお話。どちらもみなみまちのなかまが作品の中で自由に動き回っている様子が、何とも微笑ましく感じる作品となっています。
この本を出版することになった理由というのが、あとがきに書かれています。大学の附属病院の小児科病棟「みなみ棟」の壁一面を絵でいっぱいにして、子ども達を元気にしたいという想いがあり、まずその壁に「みなみまち」のキャラクターが多数描かれたそうです。そして、そこから更に舞台を絵本に移して、子ども達に届けたいということになったようです。
この作品の素敵なところは、このような想いがあるとつい「病気に負けるな」とか「きっと治る」というメッセージ性のある作品になりがちなのですが、「みなみまち」シリーズでは、絵本からのメッセージはそことずれているというところ。前者の場合、「お手紙は心を届ける」というのがあえて言うならメッセージでしょうか。後者ですと、「笑顔がいちばん」というのがそうなるのでしょうか。病気から視点をそらせて、ただただこの作品に出てくるキャラクターの動きを子ども達が楽しむ。そして、描かれていない部分でもキャラクターがどのような生活をしているのか想像できる、想像したいと自然に思ってくるようになっています。私はお医者さんのみちかけせんせいが推しキャラ。お月さまが素になっているようですが、困った時には顔が満月から三日月になります。顔の形が変形するこのみちかけ先生、困っている時とそうでない時が周囲の人にもバレバレでお医者さんが務まるのかなんて、思わず心配してしまいます。
ほのぼのとした何とも言えない絵本らしい絵本。個人的には大学や病院内だけでなく、もっと多くの人に「みなみまちのなかま」を手にしてもらいたいと思うのですが、あえて病院のキャラクターとしてとどめているようです。そこにこれを出版した関係者の想いがあるのだろうと、そっと受け止めています。しかし、このような本はその大学に行きさえすれば一般の人も購入可能ですので、是非お近くの大学に足を向けて、この作品でなくとも、その大学のオリジナルの本を探してみてください。 (文責 木村綾子)
『ぼくらがみつけたたからもの』 2012年
しいなつねこ 文 いとうかな 絵 国立大学法人 千葉大学医学部付属病院
2016年の幕開けです。毎年新しい年を迎えると、今年こそはゆったりと読書を楽しみたいということを細やかに願うのですが、なぜかそれを阻む何かが毎年押し寄せてきます。それでも、あえて今年も「ゆっくりと読書をする」というのが、唯一の目標(目標になっている時点でアウトですが)。その中の一部の本を今年も皆様と共有できたら幸いです。どうぞ、本年もよろしくお願いします。
私自身、趣味の一つに国内の大学のキャンパスを巡り、キャンパス内の書店で本を購入するというものがあります。その理由の一つに、いわゆる一般市場に出回らない本、大学内で出版し、そこのみで売られているものがあるので、そのような本を見つけるのが楽しみだからです(購入するかどうかは別)。今回取り上げた2冊はまさにそれ。
この絵本は「みなみまち」というパラレルワールド。ここは、人間も動物たちも植物も全て対等の立場で生活しています、見返しにはそれぞれの登場人物の詳細が説明されており、これがまたユーモアあふれるもの。主人公は人間のじみおくん。お友達としてピーナツ三兄弟。呉服屋の京子さんも人間ですが、帽子屋はぶたのぶたこさん。花屋さんは文鳥さん。その他たくさんの登場人物がいます。
最初の作品は郵便屋さんの八木さん(動物のやぎです)が風邪をひいたために、みなみまちのなかまが手分けして、郵便を配るというお話。2作目は、願い事が叶うという石を発見したというお話。どちらもみなみまちのなかまが作品の中で自由に動き回っている様子が、何とも微笑ましく感じる作品となっています。
この本を出版することになった理由というのが、あとがきに書かれています。大学の附属病院の小児科病棟「みなみ棟」の壁一面を絵でいっぱいにして、子ども達を元気にしたいという想いがあり、まずその壁に「みなみまち」のキャラクターが多数描かれたそうです。そして、そこから更に舞台を絵本に移して、子ども達に届けたいということになったようです。
この作品の素敵なところは、このような想いがあるとつい「病気に負けるな」とか「きっと治る」というメッセージ性のある作品になりがちなのですが、「みなみまち」シリーズでは、絵本からのメッセージはそことずれているというところ。前者の場合、「お手紙は心を届ける」というのがあえて言うならメッセージでしょうか。後者ですと、「笑顔がいちばん」というのがそうなるのでしょうか。病気から視点をそらせて、ただただこの作品に出てくるキャラクターの動きを子ども達が楽しむ。そして、描かれていない部分でもキャラクターがどのような生活をしているのか想像できる、想像したいと自然に思ってくるようになっています。私はお医者さんのみちかけせんせいが推しキャラ。お月さまが素になっているようですが、困った時には顔が満月から三日月になります。顔の形が変形するこのみちかけ先生、困っている時とそうでない時が周囲の人にもバレバレでお医者さんが務まるのかなんて、思わず心配してしまいます。
ほのぼのとした何とも言えない絵本らしい絵本。個人的には大学や病院内だけでなく、もっと多くの人に「みなみまちのなかま」を手にしてもらいたいと思うのですが、あえて病院のキャラクターとしてとどめているようです。そこにこれを出版した関係者の想いがあるのだろうと、そっと受け止めています。しかし、このような本はその大学に行きさえすれば一般の人も購入可能ですので、是非お近くの大学に足を向けて、この作品でなくとも、その大学のオリジナルの本を探してみてください。 (文責 木村綾子)