京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KiMURAの読書ノート『日本の小さな本屋さん』

2019年01月02日 | KIMURAの読書ノート

『日本の小さな本屋さん』
和氣正幸 著 エクスナレッジ 2018年7月

明けましておめでとうございます。平成最後のお正月。皆様いかがお過ごしでしょうか。この5月には元号も変わり、心機一転という方も多いのかと思われますが、私の読書に関しては、何も変わらずいつもように気の赴くままに乱読していくことになると思います。この「読書ノート」を読んでくださる方の嗜好とは全く異なる方向になるかもしれませんが、宜しければ本年もお付き合いくだされば幸いです。


さて、新年の第一弾として取り上げた本書。本好きとしてはどうしても数か月に1度は目にしたくなる「本」絡みのもの。写真集ともガイドブックともどちらとも捉えることのできる本書。全国23の本屋さんの内部の写真とそこで著者が感じたことが文章としてしたためられています。著者によると、「本屋にあるのは本だけではない。店主が本を通してきてくれる人に伝えたいもので溢れている。それは音楽かもしれないし、空間そのものかもしれない。漂う匂いもそうだろう。それらすべてが合わさって、その本屋を構成している。本屋はただ行くだけ、五感全てを楽しませてくれるのだ」。


最初に紹介されている本屋さんからまさにそう。見開き1ページに大きく撮影されている店舗は、「店舗」ではありません。本好きの家のリビングか、本好きでなければ、学者さんの書斎としか見えない空間。壁一面びっしり誂えられた木の本棚。その手前にはソファとその高さに合わせられたテーブル。光は極力抑えられ、間接照明だけで空間を浮かび上がらせています。都内の別の本屋さんは猫本専門の本屋さん。もちろん、4匹の猫がスタッフとして加わっています。しかし、特徴的なのは、本棚の最上段はその猫スタッフのためのキャットウォークになっており、本棚の間には彼らがくつろぐスペースが作られています。ここの優先順位はまずスタッフであることが一目瞭然です。かと思えば、中国地方のとある本屋さんは、その店舗をみる限り、「ギャラリー」。生活を彩る器や布製品が丁寧に並べられ、別の一角には絵画が展示されています。本に関してはそのまたほんの一角といったところでしょうか。店主によると「ひとえにそれらが好きだから」という理由。それと同時に当時市内にあった文化的な要素を含む本屋が閉店してしまったため、悲しみよりも憤りを感じ、それならばと奮起して自分で本屋さんを開くことにしたようです。


近年、(諸外国はどうかは定かではありませんが)、国内では小さな書店は店を畳み、大型書店が台頭しています。その理由の一つに出版物が売れなくなっているため、小さな書店では店主の食い扶持を稼ぐことすら難しくなったということがあります。それでも、あえて「小さな本屋さん」にこだわる店主の思いが本書では余すところなく詰まっています。そして私個人的な話にはなりますが、本好きと言っても、頻繫に各地の本屋さんや図書館を巡ることはなかなかできません。そのような意味においても、このような本は私にとってはとても重要な位置づけになります。旅に出た時は、このような店主のこだわりの詰まった本屋を一つでも訪れ、そして本について少しでも語ることができたらと、妄想してしまうのです。新年の幕開けには少なからず本好きにはたまらない1冊ではないかと思います。

======. 文責 木村綾子

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