OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

今日と明日のマッコイ・タイナー

2008-11-17 12:48:58 | Jazz

Today And Tomorrow / McCoy Tyner (impulis!)

いくら言い訳をしたって、やはり自分のような者はジョン・コルトレーンがやっていたジャズを否定出来ません。ですから、マッコイ・タイナーやエルビン・ジョーンズの演奏も、たまらなく愛おしいわけで、このアルバムもそうした1枚です。

内容は3管編成のセクステットとトリオだけによる演奏という2種類のセッションが楽しめます。

まずトリオでのセッションはマッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、アルバート・ヒース(ds) という、なかなか魅力的なメンバー♪ 録音は1963年6月4日とされています。

一方、セクステットはサド・ジョーンズ(tp)、フランク・ストロジャー(as)、ジョン・ギルモア(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、これまた妥協の無い面々が集結! こちらの録音は1964年2月4日とされています――

A-1 Contemporary Focus (1964年2月4日録音:セクステット)
 マッコイ・タイナーのオリジナルで、アフリカの大自然が目に浮かんでくるような十八番のメロディとビートが実にジャズ喫茶の雰囲気です。強靭なエルビン・ジョーンズのドラミングなんて、もう、完全にモロですよねっ♪
 アドリブパートに入っても、それはますます沸騰して、グイノリの4ビートに煽られて熱演するサド・ジョーンズの奥深さ! この人は例えばカウント・ベイシー楽団での活躍があったりしますから、モダンスイング派と思われがちですが、そのどこにも属さない進化中の汎用スタイルは流石だと思います。
 もちろん当時の進歩派だったジョン・ギルモアやフランク・ストロジャーも期待どおりのアドリブを聞かせてくれますが、こういう演奏パターンだと、どうしても神様コルトレーンが登場しそうな雰囲気を打ち消せないわけですから、やや苦しいところも……。
 その意味で、マッコイ・タイナーのアドリブパートには大いなる安心感がありますねぇ~。それが良いのか、悪いのかは判断出来かねますが、私は素直にノッてしまうのでした。
 クライマックスでのエルビン・ジョーンズの大爆発は、やっぱり最高♪

A-2 A Night In Tunaisia / チュニジアの夜 (1963年6月4日録音:トリオ)
 一転してトリオによるリラックスした演奏です。曲がお馴染み、モダンジャズの聖典というのも嬉しいですね♪ もちろんマッコイ・タイナーは重量級の解釈を心がけ、アルバート・ヒースがエルビン・ジョーンズに劣らないハッスルぶりで、ビシッと重たいブラシには好感が持てます。
 う~ん、それにしても指が動いて止まらないマッコイ・タイナー! これって、モードなんですかねぇ~。とにかく私のような者は、完全なるパブロフの犬ですよ。

A-3 T'na Blues (1964年2月4日録音:セクステット)
 サド・ジョーンズが書いたグルーヴィなブルースのモード的な展開! 重量感あふれるテーマの合奏には、思わず体が揺れてきます。
 しかしジョン・ギルモアは、狙いすぎて逆にハズシたようなアドリブが賛否両論でしょう。素直にコルトレーンを演じてくれたほうが、私の好みなんですが……。それを補うはずのマッコイ・タイナーにしても、イマイチ調子が出てない雰囲気で、実に勿体ないです。

B-1 Autumn Leaves / 枯葉 (1963年6月4日録音:トリオ)
 こういう曲が入っていると、丸っきり日本制作みたいな感じですが、これをリアルタイムでマジにやってしまうことろが、マッコイ・タイナーの資質というか、実に憎めませんねっ♪
 もちろん演奏はモード系のイントロから、あのお馴染みのメロディがアップテンポで素直に弾かれるのですから、たまりません♪ 饒舌な「マッコイ節」が実に心地良く、同時に歌心も大切にしたアドリブはジャズ者が最も好む展開じゃないでしょうか。
 基本に忠実なジミー・ギャリソンのベースと重くてシャープなブラシで健闘するアルバート・ヒースという共演者も、リーダーの意図をしっかりと把握した好演ですから、これも数多のある同曲の名演バージョンのひとつだと思います。

B-2 Three Flowers (1964年2月4日録音:セクステット)
 マッコイ・タイナーが書いた魅惑的なメロディのワルツ曲ですが、当然ながら時代の要請というか、ヘヴィなエルビン・ジョーンズのポリリズムを得て、なかなか重厚な演奏になっています。
 しかしマッコイ・タイナーのピアノとアドリブには絶妙の軽さがあり、もちろんジョン・コルトレーンのバンドでは定番曲の「My Favorite Things」を彷彿とさせる思惑は言わずもがなです。いゃ~、実際、モロですよねっ♪
 共演者では温故知新のサド・ジョーンズ、ジコチュウなフランク・ストロジャー、些か迷い道のジョン・ギルモアと、明らかにジョン・コルトレーンの暴風にような情熱には敵わないわけですが、そこは全篇で大暴れのエルビン・ジョーンズが背後から猛烈に煽りまくっていますから、カチッと纏まった演奏になっています。
 極限すれば、個人的にはエルビン・ジョーンズを聴くトラックなのでした。

B-3 When Sunny Gets Blue (1963年6月4日録音:トリオ)
 お馴染みのシンミリと胸キュンのメロディが素晴らしいスタンダード曲♪ 重たく混濁した前曲が終了した直後に、すうぅ~、とこれを弾き始めるマッコイ・タイナーのセンスの良さには脱帽ですが、これはアルバム構成の魔法というか、プロデューサーのボブ・シールが上手いところでしょうねぇ~♪
 あぁ、それにしてもマッコイ・タイナーの繊細なフィーリングは、暗くて饒舌なイメージからは対極にある印象ですが、実はこの両刀使いが本質かもしれません。そのあたりはジョン・コルトレーンがスローな歌物バラードと激情怒涛の演奏を使い分けていたライブステージと同様の趣向ですから、さもありなん♪
 とにかく前曲からの連続聴きが、実に快感というお楽しみです。

ということで、マッコイ・タイナーのリーダー作中では忘れられているアルバムかもしれませんが、これもサイケおやじの愛聴盤のひとつです。特にエルビン・ジョーンズの大暴れとアルバート・ヒースの予想外の好演は、リズムとビートがジャズの魅力という本質を再認識させるものでしょう。

それと既に述べたように、異なるセッションを巧みに1枚のアルバムに構成したボブ・シールのプロデュースは流石だと思います。おそらくはCD化もされているでしょうから、トリオ演奏だけを抜き出して聴くこともやぶさかではありませんが、個人的には曲の流れが抜群のアナログ盤B面を偏愛しています。

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