OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ずぅ~と、します、1956

2008-09-13 16:27:11 | Jazz

世間は三連休! しかし私は例によって休めない……。

ということで、和みを聴いたのは――

Zoot! / Zoot Sims (Riverside)

ジャズ者にとってズート・シムズの1956年物といえば名演の代名詞になっていますが、実際、この年のセッションから作られたアルバムは快演盤ぞろい♪ 本日の1枚もそのひとつです。

録音は1956年12月13&18日、メンバーはズート・シムズ(ts,as)、ニック・トラビス(tp)、ジョージ・ハンディ(p,arr)、ウィルバー・ウェア(b)、オシー・ジョンソン(ds) という、ちょいと馴染みのない組み合せながら、そこがまたジャズ者の琴線に触れるのです――

A-1 Why Cry ?
 このセッションではアレンジも担当しているピアニストのジョージ・ハンディが提供した楽しいオリジナル曲で、快適なテンポのウキウキするテーマメロディからは古き良き時代のジャズの香りがたまらないところ♪ もちろんズート・シムズは絶好調で歌いまくりのフレーズを連ねていきます。録音の所為でしょうか、テナーサックスの音色が同時期に比べて幾分柔らかめなのも高得点♪
 トランペットのニック・トラビスはスタジオやビックバンドの仕事がメインの職人系ですが、やはり名手に違いなく、ここでも安定したアドリブを披露しています。
 またベースのウィルバー・ウェアは翌年、ソニー・ロリンズのライブ傑作盤「A Night At Village Vanguard (Blue Note)」に参加し、裏街道的な存在感を示したマニア性の高いプレイヤーですが、ここでも異端の緊張感を醸し出す役割というか、セッションに独特の味わいを持たせる起用は大正解でしょうねぇ。

A-2 Echoes Of You
 これもジョージ・ハンディのオリジナルながら、スタンダードのような素敵な味わいのスローな名曲で、メンバー全員が遺憾無く実力を発揮した演奏は本当に心に沁み入ります。
 特にズート・シムズは素晴らしい歌心、味わい深い感情表現がひとつになった大名演だと思います。仄かに甘いサブトーンの魅力も絶大ですねぇ~~~♪ 何度聴いてもシビレます。
 またニック・トラビスのトランペットが愁いの滲む音色と枯れたフレーズでジンワリとした歌心を披露して、ズート・シムズに負けない好演です。
 このあたりは、あまりに地味すぎて、ジャズ喫茶あたりではウケない演奏でしょう。しかし自宅で聴けば、これが今の時期、初秋にはジャストミートの名演だと思います。

A-3 Swim, Jim
 これがまた快適なテンポでモダンスイングの真髄に迫った心地よい演奏です。決してハードバップではない小粋な味わいがたまらないところですが、ズート・シムズのアルトサックスが意外なほどに鋭いツッコミを聞かせてくれますし、オシー・ジョンソンのシンバルワークも目立たないながら流石♪ ちなみにこの人も我が国では全く評価されていませんが、スイング期からビバップ創成期、さらにモダンジャズ全般で歌伴奏も上手い名手として、敲いたセッションでは駄演が無い、と私は思っているのですが……。

B-1 Here And Now
 そのオシー・ジョンソンのスイングしまくった最高のシンバルワークに導かれ、快適に始まるアップテンポの演奏です。些か荒っぽいテーマアンサンブルが逆に熱気を感じさせ、アドリブ先発のニック・トラビスが浮かれたような調子なら、ズート・シムズは完璧な歌心で応戦しています。
 しかしやっぱり、ここでの主役はドラマーのオシー・ジョンソンというのが、天の邪鬼なサイケおやじの気持ちです。メリハリの効いた伴奏からクライマックスのソロチェンジまで、ハッとするほど良い感じ♪ 裏街道っぽいペースワークを聞かせるウィルバー・ウェアとのコンビネーションもバッチリです。
 
B-2 Fools Rush In
 哀愁系のスタンダード曲ですから当然、ズート・シムズはスローな解釈で誠心誠意の歌心を聞かせます。録音の状態かもしませんが、何時もよりも幾分柔らかめに感じるテナーサックスの響き、サブトーンの鳴りそのものが既にして快感ですねぇ~♪ ちなみに録音技師は Jack Higgins とクレジットされています。
 ニック・トラビスも落ち着いたアドリブソロを聞かせてくれますし、このアルバムでは全く地味なプレイのジョージ・ハンディのピアノが、ここでは意外に素敵なアクセントになっています。

B-3 Osmosis
 一転して強烈にテンションの高いハードバップ! 刺激的なイントロからグイノリに展開される演奏では、またまたオシー・ジョンソンのシンバルが冴え、ウィルバー・ウェアの重量級ベースが変態ウォーキングで存在感をアピールしています。
 ただしそれゆえでしょうか、ズート・シムズが何時もの安定感を乱している感じで……。まあドラムスとベース中心に聴けば良いのかもしれませんが。

B-4 Takin A Chance On Love / 恋のチャンスを
 オーラスは和みの歌物スタンダード♪ スタートはちょっと曖昧な雰囲気ですが、演奏が進につれてバンドのグルーヴが安定していくところが如何にもジャズっぽい感じです。
 そしてキモとなるアドリブパートでは、ズート・シムズが得意の「節」を出し惜しみせず、ニック・トラビスにも安心感がいっぱいですが、う~ん、何かが足りないというか……。
 このあたりは贅沢というもんでしょう、きっと。

ということで、些か竜頭蛇尾という感じがしないでもないアルバムです。おそらく名盤名演が多いズート・シムズの作品中では、それほどの高評価ではないかもしれませんが、しかしやっぱり「1956年物」の味わいは絶品! これほどのモダンジャズが現代で作れるかと問われれば、答えに窮するでしょう。

気になるジョージ・ハンディの参加は、それほどの効果があるとは断言出来ませんが、原盤裏ジャケット解説によればアレンジャーとしてポイド・レイバーン楽団で働いていたとか……。きっとリアルタイムでは注目されていたのでしょう。このセッションではアルバムA面全部とB面1曲目にオリジナルを提供していますし、さりげないバンドアレンジも担当しているようですが、個人的には「Echoes Of You」が名曲名演として忘れ難いところ♪

ゆえに個人的にはA面を深く愛聴しています。

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